第8話 出会った同級生


 優希はケーキ屋の手前で止まり、中の様子をうかがっている。


「純君、何食べる?」


「俺はいらん」


「食べないの?」


「さっきあれだけ食べただろ? ケーキ屋じゃなくて喫茶店に行かないか?」


 俺の腹は限界だ。

少し休みたいし、飲み物位だったら入りそうだ。


「美味しいケーキの出る喫茶店ですか?」


「チーズケーキがおすすめの喫茶店なら知っている」


「いいですよっ! では、さっそく行きましょう」


 腕に絡んでくる優希は無邪気だ。

何を考えているのかよくわからないけど、からまれて悪い気はしない。

喫茶店に向かう途中、何となく見た事のある顔が向こうから歩いてくる。


「お、おー! もしかして純平か! 久しぶりだなー」


 やっぱり。どこかで見た事のある顔だと思ったら高校の同級生じゃないか。

卒業式以来だから大体一年とちょっとか。


「久しぶり。こんな所で何してんだ?」


 俺の地元はここから電車で二時間。簡単に来れる所ではない。


「ナンパ」


 ヘラっとした顔で言ってきた。

そう言えば、こいつは高校の時からこんな感じだったな。

相変わらず変わってない。


「そっか、ほどほどにな」


 と、俺から隣にいる優希に視線を移し、再び俺の方を見てくる。


「彼女か?」


 いえ、タダの後輩です。


「そう見えるのか?」


「どこからどう見てもそうだろ? デート中にしか見えない」


 ま、普通に見たらそうかもしれないな。


「正解は――」


「はいっ! いまデート中なんですよっ」


 笑顔で答える優希。

いやいや、ちがうでしょ?


「ちょっとまて、なぜそうなる?」


「男女二人でお買い物行ったら、デートですよ。ね、純君」


「かぁー、純君だって! お前もすっかり男になったなぁー。しかも、こんな可愛い女子高生捕まえて!」


 いえ、こいつは大学生ですよ。


「そう見えます? 私これでも大学生なんですよ」


「おっとそれは失礼。あまりにも可愛かったからさっ。さて、邪魔したな。そのうちまたどっかでなー」


 突然合った同級生。

俺の言葉も聞かず、早々に立ち去っていく。


 あ、歩いている女性に声をかけた。

お目当ての子でも見つけたのか?


「純君のお友達って面白いですね」


「面白くない。まったく、なんで否定しないんだよ」


「だって、別に付き合っていなくてもデートですよ。それとも、私とデートは嫌ですか?」


 嫌ではない。だが、俺とお前の関係は先輩と後輩だろ?


「好きにしろ」


「好きにします!」


 付き合ってもいない男女で出かけたらなんというんだ?

俺は優希とデートしているのか?

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