第五話
そこから病院までの間は、何を話そうか考えていた。お見舞いなのだから、最初から別れ話はやっぱり駄目だろうか。いや、でも……。
考え事をしていたらすぐ病院に着いたので、受付を済ませ病室へと急ぐ。ドアをノックすると、「入ってください」と部屋の内側から声がしたのでそっと開いた。
「あ、春香。来てくれたんだ」
修は私の顔を見るなり、表情を緩ませた。しばらく姿を見ないうちに、彼の様子は変貌していた。元から細かった腕は更に細さを増し、顔も痩せた。ベッドの横の点滴が、追い打ちで彼を病的に見せている。
「だって、凄く心配したのよ。とりあえず無事で良かったわ。これはお見舞いのゼリーね」
道中で買った梨のゼリーを彼に渡す。彼は「ありがとう」と受け取り、それを自分の横に置いた。すぐに食べないということは、食欲が無いのだろう。無事ではあるが、体調は優れないようだ。
「何でこんなことになったのよ、働きすぎなんじゃないかしら」
そう問いかけると、彼は力無げに「そうかもね」と頷いた。そこから少し間があき、話し始める。
「最近、凄く仕事が忙しかったんだ」
知っている。それでも遮らずに、先を促す。
「何か一つ終えても、すぐ新しいものが追加されてってさ。仕事辞めたら、春香も大変だし。そう考えると、増やされたものをまた片づけるしかなくて。昼やsy水戸かも、食べる時間減らして仕事して……最終的には春香の手料理とか、食べられなくなって。一段落したら病院に行こうと思ってたら、こんなことになっちゃった」
申し訳なさそうにそう語る彼の姿を見ていると、心が痛むと同時に少しだけ怒りが湧いた。私も仕事をしているのに、彼が信用してくれなかったことを残念に思う。人並みの稼ぎは、私にもあるのに。
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