第四話

そんな気はしていた。ずっと働き詰めだったのだから身体を壊してもおかしくないと思っていた。しかし、いざそれが現実になると受け入れがたい。

「緊急連絡先が貴女になっていたので、ご連絡差し上げました」

修には、頼れる親族が居ない。大学を出てから何気ない口論がきっかけで、両親とは離別したらしい。緊急連絡先が私になっているのは、何も不自然ではない。

「幸い、病状が軽く面会可能だそうです。病院の名前をお伝えします」

一気に情報が流れ込んできて、頭の回転が追い付かない。一つずつそれを整理しつつ、

「お伝えくださり、ありがとうございます。今から病院に向かいます。失礼します」

と電話を切る。そのまま店内に入り、恵莉が座っている席に戻った。


「何だったの?凄い顔してるけど」

私に気づいた恵莉はそう言い、また紅茶を飲んだ。

「修が倒れたみたいなの。そういうことだからごめん、今日はもう行くね」

財布から、自分の飲食代を取り出しテーブルに置く。「了解、気を付けて」という声をうけつつ、私は店を出た。

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