第3話「凶弾」
ザーザー
男「殺す殺す殺す殺す今から追いかけて殺す」ズンズンッ
男「この折りたたみ傘は仕込み銃にもなっている」スチャッ
男「僕と妹ちゃんの仲を切り裂くあのゴミを抹殺してやる。兄が死んだら妹ちゃんが悲しむ? いいや、悲しまない」
男「あの巨傘なら視界は狭い。気付いた時にはもう遅い」ズンズンッ
男「まだ遠くには行っていないはず。どこに……」
巨傘「」チラッ
男「!」
妹「今日も家でゴロゴロしてたの?」
俺「ああ。しかし、妹。このショーウィンドウに飾られた下駄を見ろ。値は張るが、これはいい下駄だ。買ってもいいか?」
妹「ダメ」
男「い・た……♡」ニタァ
★
コソコソ
男(まずは様子を窺う。隙があればすかさずズドンだ)スッ
俺「何故いかんのだ。いいではないかたまの贅沢くらい」
妹「私が止めないとお兄ちゃん下駄ばっかり買ってくるでしょ。今月はもう今履いてるの買ったんだから終わり」
俺「いや、しかし……」
妹「ダメ」
男(見苦しい。妹ちゃんを困らせて……)ギリッ
俺「……では、こうしよう。この下駄はお前へのプレゼントとして買うことにしよう。常日頃から世話になっておる礼よ」
妹「それなら、いい」
男(いいんかい)
俺「くくっ。決まりだ。会計を済ませてくるよ。少し待っていてくれ」スッ
カランコロンカラーン
★
妹「……」ザーザー
男「妹ちゃんが1人になった……。ここで彼女を連れ去ることは簡単だ。でも、僕の狙いはあいつの命。店から出てきたところで……」
俺「何が簡単なのだ?」
男「……ッッッ!?!?!?!?!?」ビクッ
俺「くくっ」
男「ど、どうして、いつの間に!?」
俺「何やら怨嗟を感じ取ってな。不審に思い店の裏口からまわらせてもらったよ。そしたら、なんと先程の少年とはな」
男「馬鹿なッ! 下駄の音がしなかったのにここまで接近されるとは! あの音で気付かないはずが……!」
俺「俺くらい履き慣れておれば静音重視で歩くことなど余裕よ」
男「離れろォッ!!!」バッ
折りたたみ傘「」プルプル
俺「……俺に、折りたたみ傘の切っ先を向けるとは。売っているのか、喧嘩を?」
男「そ、そうだ!」
俺「その折りたたみ傘はどこ産だ? ユニクロか? イオンか? はたまたコンビニエンス?」
男「う、うるさいッ!」ハァハァ
俺「図星か」
★
俺「あれを見ろ」
男「?」チラッ
妹「遅いな、お兄ちゃん」ザーザー
俺「あそこで妹に持たせているあの傘は先程も言ったがアメリカ産よ」
俺「端から勝負にならぬ。退くというのであれば追わぬが、どうする?」
男「い、妹ちゃん……妹ちゃぁん……」ハァハァ
俺「む。妹の名を出した途端、何やら動揺が見られるな」
俺「……なるほど。相合傘の件といい、お前、妹に惚れておるのか」
俺「ならば兄として見定めねばなるまい。あいつに相応しいかどうか。さあ、来るがいい!」
男(僕のことを上から見下してっ……! 思い知らせてやる!)スッ
折りたたみ傘「」スススッ
俺「むっ」
男(はぁっ、はぁっ! 引く! 引くっ! ここで撃てばこいつが死んで妹ちゃんは僕のモノ……! 怖じ気づくな!)ブルブル
男「うらあああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」クイッ
ズドンッ
★
シーンッ
俺「……」シュウウゥゥッ
男「そ、そんな……馬鹿な……」ガハッ
折りたたみ傘「」シュウウゥゥッ
男「何故、奴の内ポケットから……折りたたみ傘が……」ガクッ
ドッサァッ……カランカラーン
俺「奥の手は隠しておくものだ」フッ
男「それも、僕と同じ……仕込み、銃……」カヒューッカヒューッ
俺「アメリカは軍事大国ぞ。当然である。さて、妹を待たせているのでね。そろそろ失礼させてもらうよ。早くこの下駄を渡してやらねば。くくっ。喜ぶ顔が目に浮かぶわ」
男「」
俺「尤も、心臓に鉛玉を喰らっては既にこと切れておろうな。聞こえておらんようだ。では、御免ッ!」ザッ
カツーンカツーン
妹「あ、お兄ちゃん。遅かったね」
俺「うむ。狂犬に噛みつかれてな。ほら、お前の下駄だ。ラッピングにアジサイ。お前に似合うと思ってな」
妹「うん、ありがとう。じゃあ、帰ろ?」
男「」
ザーザー
カツーンカツーン
★
ザーザー
男「」
パチッ
男「……」ムクリ
ゴソゴソ
消しゴム「」コナゴナ
男「……胸ポケットにこれを入れていなければ、死んでいた。ごめん、君から貰った消しゴムを。でも、ありがとう妹ちゃん」
男「それにしても、あの男……ああも容易く命を奪おうとするなんて。一体どれほどの場数を踏んでいるというんだ……」
男「今の僕では、あの男には勝てない────」
ガサゴソ
男「……ッ! 誰!?」バッ
ヌッ
リア充「男〜、見せてもらったぜ。お前のファイティングスピリッツ!」
妹友「いいもの見せてもらったわ」
男「2人共、見ていたの……?」
★
リア充「なんかお前様子がおかしかったからよぉ。心配になって跡をつけてたんだよ。そしたらこれだ」
男「……ごめん。僕、勝てなかった」
リア充「いや、すげぇよお前は! あのお兄さんにあれだけ食らいついたんだぜ!? 普通できねぇって!」
妹友「うん! 見直しちゃったわ!」
リア充「で、どうすんの? 妹ちゃん諦めるの?」
男「……」
リア充「ま、仕方ねぇと思うぜ。なんたって、あのお兄さんがいるんだもんよ。諦めも肝心だ」
妹友「うんうん。恋愛なんて女の子の数だけあるって」
男「……めない」
リア充「何? 聞こえなかったわ。聞こえた?」
妹友「ううん。何にも。もっとはっきり喋って」
男「僕は、諦めない! 妹ちゃんを僕のお嫁さんにする! 絶対にだッ!!!」
リア充&妹友「合・格……♡」ニカッ
リア充「よぅし! 特訓だ! 俺達皆で強くなるんだよ!」
男「え、でも……」
妹友「遠慮しなさんな! 協力させなさいよ!」
男「う、うん。ありがとう2人共……」ウルウル
晴天「」ピカーッ
リア充「見ろよ! 雨が上がったぜぇ!!!」ワッ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます