第2話「傑物」

男(え、お、お兄さん……? 妹ちゃんの……?)


俺「くくっ。まさか急に降り出すとはな。天気予報もアテにならん。まだまだ自然には勝てんようだ」


ハスの葉「」クタクタ


俺「かような豪雨は久方ぶりよ。対抗して道中使ってきたハスの葉がくたびれてしもうた。面白い」ポイッ


俺「そこで必要なのは傘だ。人類の叡智たる、な。俺とお前の分で2本持ってきた。受け取るがいい」スッ


妹「ありがとうお兄ちゃん」


男(なんか変な人……? 下駄履いてるし……)


俺「さて、では俺はこれで……と言いたいところだが」


ザーザー


俺「見たところそなたらも傘を持っておらんのであろう? 俺の傘でよければ貸してやるが」


妹友「えっ、いいんですか!?」


妹「私はお兄ちゃんと1本で大丈夫だから」


妹友「ありがとうございます!」



ザーザー


俺「さて、帰るとしようか。腹が減っている。妹がいなければ飯にもありつけぬ、自分の生活力の無さを嗤うよ」カチッ


傘「」ボンッ


妹友「わっ! おっきぃ傘! 2人が入ってなお余裕!」


俺「アメリカで設えたモノだ。かの地には腕のいいアンブレラクリエイターが多い。さあ、妹、入れ」


妹「うん」スタッ


リア充「これならこの豪雨の中でも一切濡れずに帰られそうだぜ!」


俺「妹、家に帰ったら飛び切りのディナーを期待してもいいのかな」


妹「何か食べたいものあるの?」


俺「焼きそばかな」


男「……」


折りたたみ傘「」ギュッ


俺「む、妹。あの少年は?」


妹「同じクラスの男の子。お兄ちゃんが来てくれる前に、あの傘で家まで送ってあげるよって言ってくれたんだけど」


俺「ふむ? ……ふっ、いや! お前っ、それは無理であろうがっ! 2人で使えば肩がはみ出るわ! 待て、前後に並べば或いは……ふっ、ともかく、面白いぞお前……」プルプル


妹「お兄ちゃん早く」



カツーンカツーン


妹友「……行っちゃった。素敵なお兄さん! 妹もあんなお兄さんがいるなら教えてくれたっていいのに!」


リア充「ははは。なんか人間的に大きかったよな。カリスマっていうの?」


リア充「それに見たか? 去り際の妹ちゃんの顔。あの子のあんな自然な笑顔初めて見たぜ。ありゃあもしかすると彼女、ブラコンの気があるかもしんねぇな」


妹友「え~? やばー。でも、ま、仕方ないか」


男「……」


リア充「さて、俺らも帰ろうぜ。お兄さんから借りたこの傘で」バサッ


リア充「ほら、2人共入れよ。余裕だぞ」


妹友「すごい!」ピョンッ


男「……僕はいい」


リア充「え? いや、しかし、お前のその傘じゃあ肩がはみ出て……」


男「僕はいいって!!!」


リア充「お、おう……。それじゃあ、気をつけてな」


カツーンカツーン


ザーザー


男「……」


怨嗟「」メラメラ

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