第2話「傑物」
男(え、お、お兄さん……? 妹ちゃんの……?)
俺「くくっ。まさか急に降り出すとはな。天気予報もアテにならん。まだまだ自然には勝てんようだ」
ハスの葉「」クタクタ
俺「かような豪雨は久方ぶりよ。対抗して道中使ってきたハスの葉がくたびれてしもうた。面白い」ポイッ
俺「そこで必要なのは傘だ。人類の叡智たる、な。俺とお前の分で2本持ってきた。受け取るがいい」スッ
妹「ありがとうお兄ちゃん」
男(なんか変な人……? 下駄履いてるし……)
俺「さて、では俺はこれで……と言いたいところだが」
ザーザー
俺「見たところそなたらも傘を持っておらんのであろう? 俺の傘でよければ貸してやるが」
妹友「えっ、いいんですか!?」
妹「私はお兄ちゃんと1本で大丈夫だから」
妹友「ありがとうございます!」
★
ザーザー
俺「さて、帰るとしようか。腹が減っている。妹がいなければ飯にもありつけぬ、自分の生活力の無さを嗤うよ」カチッ
傘「」ボンッ
妹友「わっ! おっきぃ傘! 2人が入ってなお余裕!」
俺「アメリカで設えたモノだ。かの地には腕のいいアンブレラクリエイターが多い。さあ、妹、入れ」
妹「うん」スタッ
リア充「これならこの豪雨の中でも一切濡れずに帰られそうだぜ!」
俺「妹、家に帰ったら飛び切りのディナーを期待してもいいのかな」
妹「何か食べたいものあるの?」
俺「焼きそばかな」
男「……」
折りたたみ傘「」ギュッ
俺「む、妹。あの少年は?」
妹「同じクラスの男の子。お兄ちゃんが来てくれる前に、あの傘で家まで送ってあげるよって言ってくれたんだけど」
俺「ふむ? ……ふっ、いや! お前っ、それは無理であろうがっ! 2人で使えば肩がはみ出るわ! 待て、前後に並べば或いは……ふっ、ともかく、面白いぞお前……」プルプル
妹「お兄ちゃん早く」
★
カツーンカツーン
妹友「……行っちゃった。素敵なお兄さん! 妹もあんなお兄さんがいるなら教えてくれたっていいのに!」
リア充「ははは。なんか人間的に大きかったよな。カリスマっていうの?」
リア充「それに見たか? 去り際の妹ちゃんの顔。あの子のあんな自然な笑顔初めて見たぜ。ありゃあもしかすると彼女、ブラコンの気があるかもしんねぇな」
妹友「え~? やばー。でも、ま、仕方ないか」
男「……」
リア充「さて、俺らも帰ろうぜ。お兄さんから借りたこの傘で」バサッ
リア充「ほら、2人共入れよ。余裕だぞ」
妹友「すごい!」ピョンッ
男「……僕はいい」
リア充「え? いや、しかし、お前のその傘じゃあ肩がはみ出て……」
男「僕はいいって!!!」
リア充「お、おう……。それじゃあ、気をつけてな」
カツーンカツーン
ザーザー
男「……」
怨嗟「」メラメラ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます