【SS】俺「お前、結構モテるのだな」 妹「?」

文月 景冬

第1話「初恋」

先生「それでは、この場面での作者の気持ちを皆で考えてみましょうか。5分時間をとりますので各自まとめてみてください」


男「……」カキカキ


消しゴム「」コツンッ


ポテッコロコロッ


男「あっ」ガタッ


色白の綺麗な手「」ヒョイッ


妹「はい。消しゴム落としたよ」スッ


男「あっ、ありがとう妹ちゃん」ビクッ


男(うわぁ、妹ちゃんに消しゴム拾ってもらっちゃった。今日はなんていい日なんだろう)


妹「……」カキカキ


男(はぁ、可愛いなぁ。折角隣の席になれたんだからもっと仲良くなりたいけど、たまに会話を交わすくらいでまだ何にも爪痕残せてない)ジー


妹「……? どうしたの? そんなに見つめて」


男「ご、ごめん! なんでもないよ! 消しゴムありがとう!」バッ


妹「うん」


男(……この消しゴム、もう使えないな。使いたくない)ギュッ



キーンコーンカーンコーン


妹友「あーやっと終わった。妹、帰ろっか。どこか寄ってく?」


妹「ごめんね。私、家の用事があるから」


妹友「はいはーい。わかってますよー。訊いてみただけー」


スタスタ


男「……」キュンッキュンッ


リア充「おい、何してんの。熱心に消しゴム見つめて。顔火照っちゃってんじゃん」


男「あ、ううん。これ、さっきの授業中、妹ちゃんに拾ってもらったんだけどさ」


リア充「で、その消しゴムを大事そうに眺めてるってのはまさかお前、消しゴム拾われたくらいで好きになっちゃったとかじゃねぇだろうな」


男「あ、いや、そういうわけじゃないよ。だって」


男「ずっと前から、好きだったし……。僕の初恋だから……」カアアッ


リア充「ヒューッ!」


リア充「そういうことならもっと早く言えよ馬鹿野郎! よし、作戦会議だ! 近くのファミレスに行こうぜ!」


男「え、いや、でも……僕なんかがあの子となんて……」



ザーザー


妹友「嘘ー。さっきまであんなに晴れてたのに……」


妹「どしゃ降りだね。天気予報では今日は降らないって言ってたと思うけど」


妹友「やだー。私、傘持ってきてないよ」


妹「私も」


リア充「……おい! これチャンスなんじゃねぇの?」ヒソヒソ


男「え、何が?」


リア充「何がじゃねーよ! お前妹ちゃんのこと気になってるんだろ? 好感度あげる絶好の機会じゃねぇか! いつも鞄に持ってたじゃんアレ!」


男「ああ、そういう……。確かに折りたたみ傘は持ってるけど、これ貸しちゃったら僕はどうすれば……」


リア充「ニッブいなぁお前。相合傘に決まってんだろ!」


男「あ、相合い……!? む、無理無理! 絶対嫌がられるし!」


リア充「そんな臆病で恋ができるか! アタックしろよ! 彼女の事が好きってカミングアウトした途端こんなチャンスが巡ってきたんだぜ!? これ、偶然じゃねぇよ!」


男「うっ……」


リア充「それに、あの優しい妹ちゃんだぜ? 大丈夫だって、絶対変なことにはならないから」



妹「はぁ、早く帰って晩ごはんの支度したいのに……」


妹友「家事までやってるなんて大変ねー。絶対真似できないわ」


男「あ、あのー、妹ちゃん……」オズオズ


妹「あ、男くん。どうしたの?」


男「もしかして、傘持ってない感じ……?」


妹「うん。降ると思ってなかったから」


男「そう……」ゴクリ


リア充(イケ! イケっ!)


男「あ、あの、もしよかったらなんだけど」


妹「?」


男「僕、鞄に折りたたみ傘持っててさ。これ、貸してあげようか……?」


妹「え、いいの?」



男「で、でもさ! これ貸しちゃうと、こっちが傘無くなっちゃうじゃん? それは結構困るっていうか……」


妹「あ、うん。そうなっちゃうね。そこまで迷惑かけられないから私は別に……」


男「だ、だからつまり、その……」


妹友「あ、まさか」


男「よ、よかったら! 僕と一緒に帰らない!? 家まで送るよ! 消しゴムのお礼!」


リア充「よっしゃ! よく言った!」


妹友「こいつ妹のこと好きだったんだ……。 急な雨にかこつけて、相合傘を狙っていくって寸法ね! 今回は折りたたみ傘を日頃から仕込んでいたこいつの勝ち!」


男「ど、どうかな!?」


妹「無理、かも」


ザーザー


男「……えっ」



リア充(あっちゃ~……)


男「無理……無理なんだ……?」


妹「クラスメイトの男の子と相合傘はちょっと抵抗ある、かな?」


男「そっか……」ズーンッ


リア充(まさか妹ちゃんがこういうの断るタイプだったなんて……。すまねぇ男、俺の作戦ミスだ……。すまねぇ~~~~……)ポロポロ


妹友(無理、は効くでしょうね……)


リア充(ぐすん。どうすりゃいいんだよこの空気……)


ザーザー


カツーンカツーン


妹「……あっ。この足音」


男「足音……?」


リア充「確かにこの雨の中やけに響く音が聞こえるが……」


天狗面「……」ヌッ


リア充「うわぁ!? なっ、なんだこいつっ!? 変質者か!?」


男「妹ちゃん下がって! 君は僕が守る!!!」バッ


天狗面「……」スッ


カパッ


俺「妹。迎えにきてやったぞ」


妹「お兄ちゃん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る