20 幼馴染に彼氏ができたらしいけど1ピコも興味ない
【ほぼ毎日投稿】るあ姫様が斬る!~わきまえなさいッ~
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『はろはろ~ん、ヨウチューブ!』
『〝るあ姫〟こと、瑠亜でぇーっす!』
『今日はねえ、サイっコーなイベントがあったから、みんなにも聞かせてあげる!』
『ずーっと、アタシに気のない素振りを続けてた〝女友達〟がねッ、ようやく白状したの!』
『本当はアタシのこと大・大・大好き! だって♥』
『くふふ。今までずーっと痩せ我慢してたのねッ』
『まったく、無駄なテーコーを。アタシの魅力に抗えるわけないのに。わきまえなさいッ!』
『でもねぇ、このるあちゃん様、そう簡単にはオチないからっ』
『ここでさらに焦らして、焦らして、焦らしまくって――アイツを泣かせてやるッ』
『「もうダメです瑠亜様ボクがまちがってました許してください!」って泣きつくまで、許してやんないんだからッ』
『実はね、そのための作戦も、もう考えてあるのよう』
『みんな、楽しみにしててねん♪』
『ぐふふふふ。あはははは。ハーッハッハッハッ!! ッシャッシャッシャア!』
【コメント欄 1942】
テーブルかけ・1分前
最後の笑いやべえww
るあ様のしもべ2号・1分前
姫様がゴキゲンでなによりです!
ルノアール・1分前
麗しい友情に涙がとまらない
ヨツンバイン・1分前
もっと百合百合して!
真実の狂信者・1分前
ほんとに女友達なの?
・
・
・
◆
翌日の朝。
先日と同じく1時間早く登校すると、総合グラウンドにまたもや銀色の髪が揺れていた。
ジャージ姿すら麗しい我らが生徒会長。
今日も一人きりで、生徒のために石を拾っている。
「おはようございます」
「おはよう」
隣にしゃがんで石を拾い始める。
会長は何か言いたそうに俺を見たが、結局そのまま作業を続けた。
無人のグラウンドで、美貌の帰国子女と二人きり。
しばらくして――。
「ねえ、鈴木君」
「和真でいいですよ」
会長ははにかむように頬を染めた。
「じゃあ、私のことも涼華(すずか)で。ね? 和真君」
「わかりました。涼華会長」
「会長、もいらないのだけれど……」
なんて、少し残念そうな顔をする。
「昨日の放課後、臨時生徒会を開いて話しあったの。例のバッチ制度は廃止することになりそうよ」
「さすが。動きが速いですね」
「瑠亜さんったら、あの後すぐに理事長室に駆け込んだらしいわ。あのワガママ娘が、誰かさんの言うことは聞くのね」
「へえ。誰かさんねえ」
あのブタさんが、他人の言うことなど聞くはずはない。
俺がやったことは、ブタ自身でそう判断するよう、仕向けただけだ。
「昨日の午後は、貴方の話題で持ちきりだったわ。どうしてあんなすごいやつが無印なんだって。それもあって、バッチ制度は意味ないってことになったみたい。……本当、何者なの、貴方は」
「見ての通り、ただの陰キャです」
過大評価も良いところである。
会長は手を休めて、俺の顔をまじまじと見つめた。
「和真君は……その、胸の小さな子が、好みなの?」
昨日の学食で、ブタとの会話が聞こえていたらしい。
「いえ。大きいほうが好きですよ」
「え?」
「決まってるじゃないですか」
会長は呆れたように小さく口を開いた。
「じゃあ、瑠亜さんに言ったのは嘘?」
「さあ。なんのことやら」
「…………。やっぱり怖い人ね、貴方」
形の良い唇から、ため息が漏れる。
「でも、どうしてかしら。今はとっても、貴方のことが気になるの……」
会長の熱い視線を頬に感じる。
「馬鹿同士ですからね。俺たち」
「……ええ。本当、馬鹿ね」
言葉と裏腹に、その声は優しかった。
こうして俺たちは、一限目の予鈴が鳴るまで石を拾い続けた。
新たな朝の日課になりそうである。
◆
放課後。
いつものように地下書庫で、甘音ちゃんのボイトレに付き合っていたところ――。
「和真君。お邪魔するわ」
なんて言いながら、青い瞳の生徒会長が入室した。
こんもりと盛り上がったブラウスの胸にはもう、金バッチはない。
「噂には聞いていたけれど、こんなところを溜まり場にしていたのね」
物珍しげに、ぎっしりと並ぶ本棚を見回している。
そんな彼女に、甘音ちゃんが険しい視線を向ける。
「わ、私たちの部屋に、何か御用ですか?」
「私〝たち〟?」
甘音ちゃんの視線を、会長は冷たい瞳で迎え撃つ。
「ここは学校の施設であって、一部生徒の私的な場所ではないわよ」
「追いだそうって言うんですか?」
「貴方、声優の皆瀬甘音さんよね? 人気急上昇中らしいけれど、お仕事は?」
「放課後はここで練習するって決めてるんですっ! 和真くんとっ!」
甘音ちゃんは俺の腕を取り、しがみついた。
会長は怯んだ様子もない。
「貴方たち、正式に交際しているの?」
「そういうわけじゃないですけど……き、キスはすませてます!」
おいおい。
しかし、会長は余裕の態度を崩さない。銀色の髪を涼やかにかき上げる。
「キスごときで占有権主張? 可愛いわね貴方」
「なっ!?」
「そんなもの、帰国子女の私には挨拶程度よ。こんな風に、ね」
もう一方の腕を取って、俺を引き寄せた。
ん、と背伸びする声がしたと思ったら――なめらか・つややかな唇が、俺の唇に押しつけられた。
「いっ、いやあああああああああああああーーーーーー!!」
豊かな声量で悲鳴をあげた甘音ちゃん、ぴきーんと固まってしまった。白目を剥いたままぴくりとも動かない。いや、そこまでショックなの?
一方の会長はけろりとしたもので、
「ねえ和真君。本棚を案内してくれない? 貴方のお勧めの本が読みたいわ」
なんて言いながら、俺を部屋の奥へと引っ張っていく。
本棚の陰で、ぴったり体を寄せてきて。むにゅっ、とたわわを押しつけて。
頬を染めながら、甘えた声を出す。
「彼女にはあんな風に言ったけれど……実は、初めてだったの」
なんて、爆弾発言。
「まだ膝が震えてるわ」
「…………」
「責任、取って頂戴」
すごい濡れ衣だった。
やれやれ。
なんだかまた、俺の周りに厄介事が増えたようだ。
――と、その時である。
「ごきげんようカズ! アタシが来たわ!! ていうか来てあげたわッ!」
またもや扉が開き、バァン! と入室したのはブタさんこと、ブタ屋敷ブタ亜。
いつもながらの自信満々余裕綽々な笑みを浮かべているのだが――今日は一人の男子生徒を連れていた。
彼は困ったような笑みを浮かべて、所在なげにしている。無理やり連れてこられたのが丸わかりである
俺の姿を見つけると、ブタさんは誇らしげに金髪を揺らし言い放った。
「ふふん! カズ! このアタシに新しい彼氏ができたわ!!」
……さて、お勧めの本はっと。
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