第14章 生徒のドラゴン2

第81話 魔道具勝負

 ミニアはだいぶ授業にも慣れてきて、精力的に色々な講義に顔を出している。

 当然の事ながら行った先でライナルドにも出会う。

 あれからネチネチと言ってくる事はないのだが、何か言いたそうではある。

 今日も頻繁にミニアを睨んでいた。


 せっかくの楽しみのスイッチ付きライトの講義が台無しだ。

 気を取り直して周りの声を拾う。


 『ヒラニシ……む』と聞こえてきた。

 呪文の真ん中は聞き取れないように小声だったが、スライムは体全体が耳なのでよく聞こえる。

 さっそくさっきの魔法をイメージにしてみる。


void main(void)

{

 MAGIC *mp1,*mp2; /*魔法の定義*/

 int onoff; /*オンオフの状態*/


 mp1=button_make(1); /*ボタン生成*/

 onoff=0; /*最初はオフ*/


 while(1){ /*無限ループ*/

  if(touch(mp1)==1){ /*ボタンに触った*/

   if(onoff==0){ /*オフの場合*/

    mp2=light_make(5); /*光生成*/

    onoff=1; /*オンにする*/

   }

   else{ /*オンの場合*/

    magic_delete(mp2); /*光を消去*/

    onoff=0; /*オフにする*/

   }

  }

  time_wait(1); /*0.01秒待つ*/

 }

}


 なるほど簡単な魔法だな。

 魔道具が出来上がった人がいたので動作確認の様子を見る。

 魔道具を起動すると空中にホログラフィのようなボタンが出た。

 あれに触るとオンオフが切り替わるのか。


「おい、俺と勝負だ」


 ライナルドがミニアに勝負を挑んで来た。


「受けて立つ」


 ミニアは自信満々に承諾した。


「いいか、どっちが素晴らしい魔道具が作れるか勝負だ」

「分かった」


 これは、俺に対する挑戦だな。

 さて何を作るか、電灯といえば照らすのと小玉電球だ。

 俺の子供時代のイメージではそうなっている。

 今はLED照明で三十二段階の明るさとか色々あるけど、昔を懐かしんで普通の明るさと小玉だな。

 いや待てよ。

 二段階ってのは誰でも考え付く、ライナルドが作ってくる可能性もあるだろう。

 小玉の方はタイマーをつけて一時間で自動的に切れるようにするか。

 需要はなさそうだが構わないだろう。


 イメージはこんなだ。


void main(void)

{

 MAGIC *mp1,*mp2; /*魔法の定義*/

 long i;

 int onoff;


 mp1=button_make(1); /*ボタン生成*/

 onoff=0;


 while(1){

  if(touch(mp1)==1){ /*スイッチに触った*/

   if(onoff==0){

    mp2=light_make(5); /*明るい光生成*/

    onoff=1;

   }

   else{

    magic_delete(mp2); /*光を消去*/

    mp2=light_make(1); /*暗い光生成*/

    i=0;

    while(i<60*60*100 && onoff==1){ /*一時間分ループ スイッチが押されても灯りが消える*/

     if(touch(mp1)==1){

      onoff=0;

     }

     time_wait(1); /*0.01秒待つ*/

     i++;

    }

    magic_delete(mp2); /*光を消去*/

    onoff=0;

   }

  }

  time_wait(1); /*0.01秒待つ*/

 }

}


 これを魔法語に翻訳してミニアに伝えた。

 リタリーに提出してライナルドと共に採点を待つ。


「ライナルド君のは明るい光と更に明るい光の切り替えなのね。70点というところかしら。試験なら余裕で合格だわ」


 やっぱり二段階だったか。

 簡単に思いつくよな。

 古代王国の魔法使いが思いつかないはずはない。


「ミニアちゃんのは明るい光と暗い光で、更に暗い光には一時間のタイマー付きね。同じく70点というところかしら」

「ミニアの方が高機能のような気がするのだけど」


 セラリーナがミニアを擁護した。


「あのね。使う側の事も考えないと。寝てる間に自動的に灯りが消えたら真っ暗じゃない。減点よ。普通に作っていたらこっちの方が高得点ね。でも呪文は大半は発掘品だからしょうがないわ」

「くそう、なんか負けた気分だ」


 ライナルドが悔しさを滲ませて言った。

 俺もなんか悔しい。

 明るい、更に明るい、暗いの三段階ならもっと高得点だったはずだ。

 プログラマーあるあるみたいな事をしてしまった。

 要らない高機能がついたソフトってのは定番といえば定番だな。


「挑戦は何時でも受ける」

「覚悟しとけよ」


 そう言うとライナルドは去って行った。

 今回のお休みタイマーは送風機ならよかったのかも知れない。

 今度タルコットの所に持って行こう。

 スイッチの応用は夢が広がるな。


 最初に考えたのは地雷だ。

 だが、地雷ってのはイメージが悪いんだよな。

 紛争地で子供が犠牲になるイメージがつきまとう。


 次に考えたのはライターとコンロだ。

 だけどもスイッチを使う利点がない。

 魔道具の起動と停止で事が足りる。


 その次に考えたのはウォーターサーバーだ。

 地雷を除いた三つの案をミニアに頼んでリタリーに言ってもらったらそれは既にありますと答えが返ってきた。

 今ある物を作っても美味しい商売は出来ない。

 第一つまらない。


 その時に考えた。

 シンプルに行こう。

 カウンターなんてどうだ。

 スイッチを押すと空中に数字がカウントされる。

 これは流石にないだろう。


 ミニアがリタリーに確認するとそういう物は知らないそうだ。

 需要はない事もないだろう。

 交通調査みたいなものはあるだろうから。

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