第82話 呪文屋

 念願のと言うほどではないが、呪文屋に行くらしい。

 ティとの感覚共有はばっちりだ。


 呪文屋は大通りに店を構えていた。

 繁盛しているみたいだ。

 引っ切りなしに人が出入りする様子が、遠くからでも確認できた。


 入り口を入るとインクとカビの臭いがする。

 図書館みたいだな。

 でも、本は一冊も置いてない。

 カウンターがあるだけだ。

 今ちょうど客が魔法を選んでいる所だった。

 ミニアが覗き込むと魔法の一覧と簡単な説明と値段が書いてあるのが、肩に乗っているティの目に映った。

 うーん、ほしいのがないな。

 一枚銅貨二十枚って書いた箱がある。

 黒い布で蓋が作ってあって、前世のくじを引く箱を思わせた。


 あれやってと、ミニアに伝言を送る。


「あれ、くじよね。一枚引いても良い」

「銅貨二十枚ね」


 ミニアがお金を払いくじを引く。

 どんな魔法がでるのかな。

 この魔法は……。

 一番簡単なファイヤーボールじゃないか。

 いきなり当りが出るなんてないな。

 次だ、次。

 ミニアにもう一回引けと伝言を送る。


「お姉さん、もう一回」


 こんどはどうだ。

 おお、当りっぽい。


long mana_check(TEL *tp)

{

 char s[256];

 while(tgets(s,256,tp)!= NULL){ /*魂の読み込み*/

  if(mana_heder_ck(s)==1){ /*魔力が記録してあるデータか判断する*/

   return(mana_value(s)); /*魔力の数値を返す*/

  }

 }

 return(0); /*魔力がない*/

}


 解析するとこんなだな。

 これは現在の魔力をチェックする魔法の中身だ。

 普通の人にとってははずれだな。

 これだけでは魔法にならないからな。

 俺は『mana_check』に対応する魔法語『モチミチろソクイソノ』が分かれば良いのだから、これは必要ないな。

 一応該当魔法があるか尋ねてもらうか。


「お姉さん、魔力をチェックする魔法は売ってないの」

「二つあるわよ。魔力の最大値を調べるのと、現在の魔力を調べるのがあるわ。金額は銀貨三枚ね」


 定食三つ分の価値か。

 そんな物だよな。

 ここは銅貨二十枚で銀貨三枚を当てたと喜んでおこう。


 いっその事、追加で五回やってみよう。


「お姉さん追加で五回」

「お嬢さん、お小遣いは大丈夫」

「うん、平気」


 よし行くぞ。

 頼むぞミニア。

 君のくじ運に全てが掛かっている。

 一回目、一番簡単なファイヤーボールだ。はずれだな。


 二回目、生水だ。またもやはずれ。



 今度こそ。

 三回目、種火の魔法だ。くそう、当りはないのか。



 四回目、ウォーターボールか。


 ラスト、これは当たりか。


MAGIC *ice_bolt_make(int conesize)

{

 char *cone; /*氷の矢のデータ*/

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 long i; /*カウンター*/


 cone=(char*)malloc(conesize*100); /*アイスボルトの領域確保*/

 if(cone == NULL) { /*確保失敗 この場合は魔力切れ*/

  exit(EXIT_FAILURE); /*処理の終わり*/

 }

 mp=magic_make(cone,conesize*100,IMAGECONE); /*魔法を作る*/

 for(i=0;i<conesize*100;i++){

  *(&cone[i])=ICE; /*領域を氷属性にする*/

 }

 magic_trans(mp); /*現象に変換*/

 return(mp); /*魔法の情報を返す*/

}


 おお、アイスボルトの中身だな。

 氷に対する魔法語『ニソイ』と円錐に対する魔法語『ソラミイ』が判明したな。

 そこそこ当りだ。


 だけど、普通の人にとっての当たりは一本もなかったな。

 くじだけじゃ何なんで、何か魔法を買って帰るか。

 予算は金貨十枚ぐらいでどうかな。


「お姉さん、金貨十枚の魔法を見せて」

「お嬢さん、払えるの」

「平気。ドラゴン的な財布」

「そう、良く分からないけど、大きそうね」


 お姉さんが金貨十枚と背表紙に書かれた本を持ってきた。

 ミニアが覗き込む。

 誘導弾はパス。

 連続弾もパス。

 ウォール系もパス。

 生産系も要らないなと言うより俺には使えない。

 レシピが分からないとどうにもならないからな。


 何か変わった物がないかな。

 バリヤがあるぞ。

 なんでこんなに安いんだ。

 ミニアに尋ねさせる。


「この魔法なんで安いの」

「魔力コストが多くて、買った人のクレームが凄いのよ。だから買う人には警告しているわ。それと耐久力があまりないのよ。剣の一振りで破られるわ」

「これ買いたい」

「これでいいの。ストーンウォール系の魔法でもっと良いのがあるけど」

「これでいい」


 買った呪文を解析してみる。


void main(void)

{


 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 while(1){

  mp=barrier_make(400); /*2メートルのバリヤを張る*/

  time_wait(60000); /*十分待つ*/

 }

}


 十分置きに魔力400か。

 一般人にはきついな。

 でも俺なら運用できる。

 それこそ、十枚重ねでも余裕だ。

 ただし、ミニア限定だけどな。

 俺をカバーするには魔力がいくらあっても足りない。

 背中にミニアが乗っている時に五枚展開してミニアを覆えば、もしもの時に被害が出ないだろう。

 今回は実り多い、買い物だった。

 またミニアに頼んで買い物に来たい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る