第54話 遺跡への旅

 遺跡があるという戦場跡に向かって飛ぶ。

 森がなくなり戦場跡は魔法の撃ち合いのせいか毒でもまかれたのか樹や草が一本も生えていない。

 風が砂塵を運んでいく。

 随分と殺風景な所だな。


 馬車が戦場跡を一台行くのが眼下に見えた。

 2メートルほどの狼の魔獣に後を追い掛けられている。


「ピッパ、やれ。分かっているなブレスで仕留めるんだぞ」

「オーケー、ボス」


 ドラゴンの言葉でピッパに命令。

 隣を飛んでいたピッパは急降下して狼魔獣の前に舞い降りた。

 風のブレスを吐きまくるピッパ。

 狼魔獣は切り刻まれた。

 馬車は推移を見守っているのか馬がばてたのか分からないが、停車している。


「良くやった」


 俺が馬車の後方に降りドラゴンの言葉で吠えると馬が怯えるような素振りを見せた。


「お父さん、鞍の付いたドラゴンがいる」

「何を夢のような事を言っているんだ。本当だドラゴンに鞍が付いている」


 荷馬車の荷台から顔を出した男の子の声に御者台の商人らしき父親が答えた。


「ここで。何してる」


 ミニアが尋ねた。


「危ない所を助けて頂いてありがとうございます。手前は食料を商っている商人です。戦場跡の真っ只中に食料を持って来いと注文を受けて配達の帰りです」


 こんな所まで配達するのか。

 まるでどこにでも配達するピザ屋並だな。


 ピッパが涎を垂らして期待のこもった目でこちらを見つめている。


「ピッパ、飛べる程度なら腹いっぱい食っていいぞ」

「はい、ボス」


 ピッパはさっき仕留めた狼魔獣をガツガツと貪り始めた。


「ドラゴンは恐ろしいですが。便利ですね」

「ドラゴン。友達。気遣い。満点」

「そうですか。馬も一息つけたようで。私達はこれで」

「気をつけて」


 馬車が砂埃を巻き上げて全速力で去って行く。

 狼の魔獣に追いかけられていたよりも早い。

 そんなに急がなくてもいいのに。




 俺達はのんびりと戦場跡を飛ぶ。

 本当に何もない所だな。

 草がちょぼちょぼともの凄く疎らに生えている以外何もない。


 遺跡はどこにあるんだ。

 影も形も見つからない。

 こういう時こそ魔法だな。

 地形サーチの魔法ではこのだだっ広い範囲を捜索するには魔力が幾らあっても足りない。

 岩と遺跡を区別する方法がまず分からない。

 それに隠されてなければもっと前に見つかっていただろう。

 とうぜん隠されているとみるべきだ。

 難題だな。

 しかし、よく考えてみれば簡単だ。

 この魔法イメージで遺跡を探せる。


void main(void)

{

 system("dir /AH > テニツチスシ"); /*認識阻害の魔法名鑑定*/

}


 見える範囲だけ場所の名前も分かるのだから、繰り返せば良い。

 幸いドラゴンの目は良いから、広い範囲が一瞬で捜索できる。

 発動すると『ねシニスる 遺跡入り口』とイメージがあった。

 イメージに翻訳すると『<DIR> 遺跡入り口』だ。

 視界のどこかに遺跡入り口があるらしい。

 目が良いのも考え物だな。

 どこにも入り口らしき物は見当たらない。

 見える範囲にある物と言ったら、遠くに猫の大型魔獣の群がいる。

 もしかして、あそこか。


 近くまでひとっ飛び。


「ボス。変な臭い」


 ピッパがドラゴンの言葉で言った。

 うんっ、そうだな風に変な臭いが付いている。

 この臭いはなんだ。

 薬臭い柑橘系の臭いに似ている。


 臭いの元を辿ると地面に亀裂がある。

 3メートルもある大型の猫魔獣が亀裂のすぐ側で群れている。

 亀裂に飛び込もうとして躊躇してすぐに元の位置に戻ってくるという行動をとっていた。

 入りたいが入れないといった感じだ。


「ピッパ、空中からブレスで蹴散らしてやれ」

「オッケー、ボス」


 俺のドラゴンの言葉にピッパは可愛い声で答えた。

 内容は物騒だがな。

 ピッパが飛んで行き風の刃のブレスを吐く。

 猫魔獣達はなすすべなく切り刻まれた。

 やっぱり空中からのブレスはジャスティスだ。

 近接なんて馬鹿らしい。


 お食事タイムしてから亀裂の中に入ろうとするが俺はでかくて入れない。

 ここも魔法の出番だな。

 テイマーの必須魔法の使い魔と感覚共有だ。


 魔法のイメージはこうだ。


void main(void)

{

 TEL *tpi,*tpo; /*魂の定義*/

 char s[256];

 tpi=topen("従魔の魔法名.soul"); /*従魔の魂を開く*/

 tpo=topen("temp"); /*仮魂を開く*/

 while(tgets(s,256,tpi)!= NULL){

  tputs(s,tpo);/*従魔の魂をコピー*/

 }

 tclose(tpi); /*閉じる*/


 tpi=topen("マスターの魔法名.soul"); /*マスターの魂を開く*/

 while(tgets(s,256,tpi)!= NULL){

  tputs(s,tpo); /*従魔の後にマスターの魂を追加する*/

 }

 tclose(tpi); /*閉じる*/


 tclose(tpo); /*閉じる*/

 system("copy /-Y temp 従魔の魔法名.soul"); /*出力した魂を従魔の魂に上書き*/


 while(1){

  time_wait(1); /*永遠に待つ*/

 }

}


 やっている事は従魔の魂の後にマスターの魂を追加する。

 これで感覚共有が出来る。

 操ったりは出来ない。

 ついでにこれを発動中は魔法は使えない。

 でもそれでは困るから魔道具にした。

 魔道具にしておけば発動中も魔法が使える。


「ピッパ、感覚共有だ。頼むぞ」

「おいらに任せて」


 感覚共有の魔道具を発動して、二人を見送った。

 視界がだぶって見えるというのは奇妙なものだ。

 慣れるしかないんだろうな。

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