第五話
学校に近づき、唯に手を離してもらうよう頼んだ後、登校途中の佑真と合流した。
「おはよう。朝からラブラブだね。結局、澪は宮内さんからの告白を受けたんだね」
手を繋いでいたところを見ていたらしい彼が話しかけてくる。
俺の告白への答えを知らないのだから仕方がないだろう。
だが、実際には唯の告白を断ったので彼の言葉に冷や汗を流していた。
「私、澪に振られたよ」
俺より先に唯が言葉を口にする。
口調はどこか明るかった。
「え?本当かい?」
「ああ」
俺は動揺しながらもなんとか返事を返す。
「でも、私負けるつもりも諦めるつもりもないから。・・・・・・澪、先に行くね」
彼女は佑真になのか俺になのかわからないが明るく力強く告げ、学校へと向かう。
「はぁ~」
俺は、彼女の姿が見えなくなると長いため息を溢してしまう。
「それはこっちのセリフだよ。まあ、僕も悪かったね、ごめん」
佑真は、俺に謝罪してくる。
「別に大丈夫だよ、俺は・・・・・・」
「だけど、君が彼女を振るの意外だったよ」
佑真は、努めて明るい口調で言ってくる。
「ま、色々あってな」
佑真に理由を話すのは少し恥ずかしかったので言葉を濁す。
「ちなみに、もう一つの方はどうだった?」
「イタズラじゃなかったよ。相手は一城さんだった」
「え、は?もしかして・・・・・・」
「そのもしかしてだよ、同時に告白された・・・・・・」
「マジか~、遂に澪にモテ期か~」
佑真はゲラゲラ笑いながら言う。
「笑い事じゃないんだよ・・・・・・」
俺は、笑いが治まらない佑真にため息を溢してしまう。
「ごめん、ごめん。でも、同時に告白とはね~」
佑真は、なんとか笑いたいのを堪えているようだが、口はニヤニヤしていた。
「まったくだ。しかも、両方振ったんだから気まずいったらありゃしないよ」
「白雪姫も振ったのか、それが知られた学校中の男子に襲われるね」
「だがよ、俺は彼女と関わりがなかったんだぜ?」
「それでも、今まで何十という告白を断ってきた彼女から告白されたっていうだけで重罪だよ」
「バレた時のことを考えただけで胃がいたくなるな・・・・・・」
「バレないことを祈りな・・・・・・」
佑真とは、それっきり告白の件には触れず、いつもしている他愛もない会話をして教室へと向かった。
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