第四話

 翌日、俺は普段通り学校へと向かおうとしていた。

 制服に着替えて身支度を整え、授業で必要な物を鞄に放り込んでいるとインターホンがなる。


「はーい、少々お待ちください」


 俺は外にいるであろう人物に聞こえるよう少し大きめの声で返事をし玄関へと向かう。

 扉を開けると、立っていた人物の姿が目に入り思わず動揺してしまう。


 宮内唯が訪ねてきていたのだ。


「ゆ、唯?朝からどうしたんだ?」


 表情は動揺を悟られないように努めていたが、声は少し震えてしまっていた。


「一緒に登校したいなーと思って」


 彼女は明るい声で告げる。


「それに私、諦めないから」


 顔を赤らめながら、だが、瞳には強い決意を秘めながら呟く。


「わ、わかったよ。準備するから少し待っててくれ」


 俺は、彼女から逃げるように家の中へと戻る。


「落ち着け、落ち着け」


 自分の部屋に入った後、自分に言い聞かせるように呟く。

 俺は、宮内唯にドキドキしていた。

 こんなことは今までなかった。

 それ故に現在の自分の気持ちに驚いていた。


「告白されたことによって意識し始めたとか、あり得な過ぎるだろ・・・・・・」


 自分に呆れつつとりあえず荷物を整え、気持ちも整え、唯の元に行く。


「待たせてな」


「大丈夫だよ、行こう」


 彼女は俺の手を引き、学校への道を歩みだす。

 俺は、彼女の手を拒むことができなかった。


「お、おい、あれ・・・・・・」


「ああ。間違いないな・・・・・・」


 この時、二人の声に気づいていれば未来が少し変わっていたのだろう。

 だが、彼女の手から伝わる熱から意識を逸らせなくなっていて声に気づくことは出来なかった。




 こうして、俺は学校へと向かってしまった。

 手を繋いだままで。

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