第一話
俺、篠原澪は一般的な高校生だと思う。
容姿は中の下、成績はクラス最下位、帰宅部でオタクである。
人に自慢出来ることがあるとすれば、可愛い幼なじみがいることだ。
幼なじみの名前は宮内唯。
小学生の時から繋がりがあり、気付けば高校まで同じ学校になっていた。
周りの奴らからは、付き合っているのかと問われることがあるが付き合ってはいないし、俺は彼女のことを異性として見たことはない。
さて、高校に入学後、友達と遊んだりしてごく普通の高校生活を過ごしていた俺だが、この日、学校に着き下駄箱を開けた時にはさすがに言葉を失った。
下駄箱に、一通の手紙が入っていたからだ。
封筒は、可愛らしくハートなどが描かれているものだった。
手に取り、封筒を見るが差出人の名前は無く、中に入っていた紙には『放課後屋上に来てください』と書かれていただけであった。
入れ間違いではないだろうか?
それが俺の素直な感想だった。
仲の良い女子は唯ぐらいしかいないのだ。
手紙など貰っても怪しむのが普通だろう。
「とりあえず、持っとくか」
俺は、考えを呟き教室へと向かう。
教室に入ると、既に多くの生徒が登校してきていた。
何人かと挨拶を交わし、自分の席に着くと、自分の前に座る男子生徒へと声をかける。
「おはよう佑真」
「おはよう澪」
彼は、こちらに振り向き、挨拶を返してくる。
元々はメガネをかけた陰キャだったのだが、高校入学と同時にイメチェン。
見事、モブキャラからイケメンへとジョブチェンジした男だ。
「どうしたんだい?悩み事かい?僕で良ければ相談に乗るよ?」
俺の表情を少し見ただけで気づき気遣ってくれる良い友である。
「ちょっとあってな・・・・・・。後で聞いて貰ってもいいか?」
「ああ。何でも話してくれ」
佑真は、俺の言葉に即答してくれる。
「ありがとう」
俺は、佑真に礼を言い授業の準備の為に教科書を机の中へと入れていく。
その時、俺は微かな違和感を覚えた。
何も入っていない筈の机の中に、何か薄い紙の用な物の感触があったのだ。
俺は、何かを掴み恐る恐る取り出す。
「はぁ?」
何かが視界に入った瞬間、そんな言葉を溢していた。
何故なら、何かとは綺麗な封筒だった。
そして、封筒の中に手紙が入っているのは明らかであった。
差出人の名前はないものの、表に篠原澪様へとしっかりと書かれていたのだから。
俺は驚きながら封筒を開け手紙を開くと、紙にはこう書かれていた。
『放課後、屋上に来て貰えませんか?』
文字を読んだ瞬間、俺はある結論へたどり着いた。
これはイタズラだと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます