四日目
早朝から、例の部屋に屋敷にいる全員が集められた。
部屋は暗くしてあり、襖の隙間からほんの少し外の明かりが入って来ていた。
皆で老人を囲んで正座し、何かを待っていた。
老人はさっきから声を出していた。始めはつぶやくようだった声が、だんだん大きくなり、今は部屋の中にいる誰かに話しかけるような調子になっている。お経や祝詞のようなものを唱えているようにも聞こえたが、私には全く理解できなかった。
その役目は、家長または生前に最も親交が深かった者が務めるという説明がなされた。
生前という言葉に、強烈な嫌悪を感じた。
この老人はまだ生きている。
最後の儀式、それは到底理性のある人間の所業とは思えなかった。
部屋に満ちる異様な一体感。今まさに殺人が起ころうとしているのに誰もそれを止めようとしない。
私は、恐ろしいのに目を閉じることができなかった。
膝の前の畳の目を必死に数え、気を紛らわす。
縛られているわけでもないのに指一本動かすことすらできない。息もできない。
老人の声が途切れたのが合図であった。
目の端で金属がきらりと光ったのを捉え、振り下ろされたことを悟った。
ざくり
ごとん
ごろごろ
ころり
私の視界に現れる、人の生首。
これは現実なのか?
目が合った。
「次はお前」
確かにそう言った。
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