二日目

 親戚一同が老人の部屋に集められた。二日酔いで頭が痛い。

 老人は昨日と同じ位置に同じ姿勢で座っていた。


 全員が揃ってから暫くすると、初老の男が金属製の鍋を両手で持って部屋に入ってきた。

 鍋には何かの液体が入っているようで、溢さないよう慎重に運んでいる。

 男は、老人の隣に座ると、鍋を畳の上に置いた。

 中には、黄色く透明な液体が入っていた。油のような粘り気がありそうだ。

 老人の近くに座っていた青年が、老人の隣ににじり寄った。ちょうど男二人で老人を挟んだ格好になる。

 青年は、老人の顎と首の後ろ側を掴むと、顎を思い切り引っ張った。

 ごきっと音がして、老人の下顎が前に飛び出してきた。

 関節を外されたにも関わらず、老人の表情に変化はなかった。

 受け皿のようになった顎にもう一人が鍋に入った油のような液体を注ぎ込んでいく。

 次々と口に流し込まれる二リットルほどもあるその液体を、老人は大人しく飲み込んでいった。

 

 これでは、まるで虐待ではないか!

 目の前の異様な光景に対して、場違いなほど真っ当な感想が、私の脳内を埋め尽くした。


 しかし私は昨夜見た、老人が丁重に食事の世話を受けている場面も思い出した。

 総じて、気味が悪い。

 今更ながら生きている人物の葬式という点に疑問がある。生前葬という言葉は知っているが、本人の意思が微塵も感じられないところに強烈な違和感を覚え始めた。

 犯罪めいたものに巻き込まれてしまった焦りと恐怖が広がった。

 こめかみの血管がどくどくと脈打っていた。

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