第32話 被害15(猫カフェ)
ご飯を食べ終えた私たちは店を出ました。
はぁ、とても恥ずかしかったですが幸せな時間でした……。
やっぱり先輩から恋人っぽいことをされるのは嬉しいです。思い出すだけでにやけてしまいそうです。
頰が緩まないよう一生懸命真面目な顔を保とうとしていると先輩から声をかけられました。
「よし、雨宮。ご飯も食べたし、次の場所移動するか」
「そうですね!先輩に連れてきてもらったこの店凄い良かったですし、次の場所も楽しみです!どこに行くんですか?」
ふつうにデートをしている感じがしてとても楽しいです!先輩と一緒にいられるだけで幸せです。
こんなに幸せでいいんでしょうか……。
「ああ、結構歩いて疲れてるだろうし、休憩がてらカフェにしようかと」
「いいですね!気を遣ってもらってありがとうございます!」
「気を遣うというか俺が疲れた」
「それは、普段先輩が寝てばかりいるからですよ?少しは運動しましょう?」
気を遣ってくれたのかと思ったんですが、先輩自身が限界でしたか……。まったく、仕方のない先輩です。
「やだよ。その時間あったらもっと寝る」
「えー、じゃあ、この可愛い私が相手してあげますから!ほら、運動したくなってきたんじゃありませんか、先輩〜?」
先輩と運動!楽しそうです!運動がしたいというよりは先輩と一緒にいるための理由があればいいだけなのですが……。
「いや?まったく。むしろよりやる気を失ったわ」
「なんでですかー!!」
まったく、もう!ほんとに先輩は私の誘いにのってくれません。せっかく次会う約束ができるかと思ったんですが残念です。
「いいから、行こうぜ」
「先輩、誤魔化さないで下さいー!!」
抗議するも先輩が無視してスタスタと先に行ってしまいます。慌てて追いかけました。
しばらく歩くと目的の場所に到着しました。
「せ、先輩!?もしかしてここって…!」
「ああ、猫カフェだ」
カランカラン、ドアを開けるとベルが鳴ります。
「いらっしゃいませ」
店員が出てきて、色々説明を受けました。
「では、お楽しみください」
説明を終えた店員はそう言って下がっていきました。
「先輩!猫がたくさんいますよ!」
猫さん可愛すぎます!早く撫でたいです。家では動物を飼ったことがないので慣れていませんが、あの柔らかそうな毛は撫で心地が良さそうです!
あっちの猫さんにしましょうか?いえ、こっちの猫さんも触りたいです。
とりあえず、目の前にいた猫さん目掛けて近づいていきます。しかし、猫さんは私を見るとプイっと顔を逸らして、私から逃げるように離れていきます。
そんな……。猫さんに振られてしまいました。いえいえ、あの猫さんにはたまたま嫌われただけです。他の猫さんならきっと……!
希望を持って別な猫さんに向かいます。ですが、またしても逃げられてしまいました。
「ま、待って下さい!」
呼びかけますが猫さんに人間の言葉が通じるはずがなく、離れていってしまいました。
何回も試みますが、まったく寄り付いてくれません……。振られすぎて絶望していると、さらに落ち込む光景を目にしました。
「ずるいです、先輩!なんで先輩の周りにばっかり猫が群がっているんですかー!」
私の周りには1匹も猫さんがいないというのに、先輩の方に殆どの猫さんたちが集まっているのです!
ああ、先輩が猫さんの背中をなでなでしています。猫さんがあんなに気持ち良さそうな顔してます。羨ましすぎます!私も撫でたいです!
恨めしげな目で先輩を見ていると、やれやれと首を振って先輩が猫さんを抱き上げてこっちに来ました。
「ほらよ、抱いてみろ」
「あ、ありがとうございます!で、でもどうやって抱いたらいいんですか?」
先輩が連れてきてくれました!先輩は相変わらず優しいです!触りたいんですが、初めてでどうしていいか分からず猫さんを前にしておどおどしてしまいました。
「知らないのか。とりあえず抱えて。教えるから」
言われるがまま適当に抱き上げます。
「こうやって、こうするんだ」
「え?え?こ、こうですか?」
「違う違う。こうだ」
先輩に教えてもらいますがなかなかうまくいかず何度も先輩に注意されてしまいます。
何度言ってもうまく出来ない私にしびれを切らしたのか、先輩が背後に回りました。
「こうやるんだぞ」
「ひゃ、ひゃあーー!?ちょっと、先輩!?み、耳が!手が!」
先輩が私の背後に回り、包み込むようにして両手を取りました!
さらに耳元で囁くようにして言ってきます!もう訳が分かりません。色々な場所がくっついていますし、先輩が近すぎます!
一瞬で顔が赤くなるのが自分で分かります。
「雨宮うるさい。ちゃんと聞け」
「!?は、はい、すみません……」
何でこんな時ばっかり低音の声で言うんですか!?しかも耳元で囁くなんて反則すぎます!
思いっきりドキっとしてしまいました……。
そのまま抱きすくめられる格好で抱き方を教えてもらいますが、まったく頭に入ってきません。もう、私の心臓の限界です!これ以上は胸がキュンキュンしすぎて苦しいです!
「ほら、雨宮、こっちの猫も抱いてみろよ」
「い、いや、猫を抱くのはもう…」
「俺がもう一回教えてやるから、な?」
「も、もう一回あれをやるんですか!?わ、分かりました…」
何ですか、その頼み方!そんな言い方されたら断れる訳ないじゃないですか!
こんなに抱きしめられるような格好がドキドキするとは思いませんでした……。
しかも弱い耳元で囁かれるなんて、ときめかないはずがありません。はぁ、今日一日で何回ドキドキすればいいのでしょう……。
後ろからまた先輩が教えてきます。ああ、また先輩の体温が後ろから伝わってきます。もうこれだけで身体が火照るのが自分で分かります。
こうして私は照れながら何度も先輩に猫さんの抱き方を教えてもらうのでした。
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