月の話

 赤頭巾を、ずっと探してきた。

 僕は『赤頭巾』になれなかった。どこまでいっても、本能しかない、なのに死ねない、『狼』の役だった。

 だからずっと、物語を、おとぎ話を、繰り返してきたんだ。

 風に吹かれながら、僕は墜ちていく。

 コエ。

 あの子がつけた、僕の名前。二度と呼ばれることのない名前。

 心臓がきゅーってなって、頭がくらくらして。空の一番近いところに爪を伸ばして、お構いなしに僕は墜ちていく。

 いつか、森に還る日が来るのだろうか。いつか、花畑で眠る夜が来るだろうか。月を見上げることしかできなくて、飢えたままで、吼え方さえ忘れて。

 花畑。どうしてあの景色だけは、忘れられないんだろう。いつまでたっても、彼女には会えないのに。

 朱い花びら達が、僕に拍手を打つ。散るように、いくつもいくつも飛ぶ。ハッピーエンドを探して、お構いなしに拍手を打つ。



 今、僕達の空想が、終わる。

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月を壊せ 泥飛行機 @mud-plane

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