昼の話

 その子供が丘でユリィを見つけたのは、いつものように野草を採りに来た帰りのことだった。

 氷の海沿いの、空気の乾いた村だった。日が沈みきった夕方の、波打つ草原の中に、ユリィは身を丸めて倒れていた。

 子供は遠巻きに、その影に近づいていった。そこで身を屈めて目を閉じていたのは、その子よりもずっと大きな生き物で、少なくとも、同じ人間のようではあった。ぼろぼろの頭巾を被り、うつ伏せの背中には、古そうな猟銃がかけられている。聴こえた荒い息に身を屈めて見てみると、思ったよりも幼い顔があった。眠っているようだった。

 子供は野草が詰まった籠を背負ったまま、脇にしゃがむ。そして、背中の猟銃に手を伸ばしてみた。

「おはよう」

 そんな声がしたのは、子供の指先が銃口に届く寸前だった。どこから聴こえたのかもわからなかった。動きを止めた。手を除けることはしないまま、子供は周囲を見渡す。だけど、その子と倒れたままのユリィの他には、やはり人影はなかった。

「おはよう」

 だから、朝じゃないのにそう返してみた。それから、ユリィの顔をもう一度凝視した。

「やっぱり寝てる」

 子供はそう一言呟く。糸でできた細い弦を弾くような声だ。それからまた、ユリィの背中に固定されている猟銃に両手をかけた。うまく動かなかった。ユリィが目覚める様子もなかった。一通り動かしてから、子供は諦めた。家に戻れば、刃物がある。それで縛っている紐を切ることにした。

 猟銃から手を放し、今度はユリィを両手で持ち上げようとした。思ったより重くないと分かって、子供はユリィを抱え上げた。

 息を吐いて空を仰ぐ。青紫の空は、丘を囲む木々の黒い影の上にある。そこに浮かぶ月の黄色は、いつもより眩しい気がした。そのときまた、子供は声を聴いた。

「連れて行ってくれるの」

 抱えたユリィの口は動いていない。だけど確かに近くで聴こえた。幻聴だろうと思いながら、子供は口を開いた。

「たぶん、そうだね」

 そう答えた。歩き出すと、心臓に何か刺さったような気がした。どうしてかはよく分からなくて、もう声も聴こえなかった。



 夜を越え、朝を越え、また日の暮れかけたころ、ユリィは目を覚ました。どこかの小屋の中にいるようだった。混ざりあう薫りは、針の木と藁と黴と、雑草で出来ていた。尖った光がひび割れた天井から零れる。少し動いただけで床が軋む。木造の壁も同じように、今にも崩れそうだった。

 倒れたときの記憶はなかった。最後に見た景色は、夜の星空。ただ、誰かに運ばれてここにいることは分かった。今はユリィしかいないようだったが、粗末なこの建物も、きっと誰かの住処なんだろう。

 観察していると、間もなく、一つしかない戸がぎっと開いた。ユリィは身構えて視線を向けた。そこから入ってきたのは、一人分の小さな影だった。子供のようだった。

 その子供の肌は痩せて浅黒く、鈍色の髪が肩口までぼさぼさに下りている。身に着けているものも布一枚のワンピースだけで、手にはひび割れたコップのようなものを持っていた。自分より幼げなこんなみすぼらしい子供も、街を出てからはユリィには見慣れたものだった。ただ、ユリィを見下ろす窪みがちな草の色の目が、不思議と心を騒がせた。

 子供はしばらく何も言わず、見下ろし続けていた。だからユリィも見上げ返していた。警戒はするが、子供から殺気は感じなかった。それに、言葉が通じる確信もない。

 やがて、子供が口を開いた。

「飲む?」

 たどたどしい声が発したのは、ユリィにも意味のわかる言葉だった。それから子供はユリィの目の前に屈み、持っていたコップを差し出した。ユリィが覗き込むと、中には枯れた色の液体が入っていて、湯気が立っていた。湯に砕いた葉を混ぜているようだった。

「悪いものは、入ってないから」

 子供はそう続けた。確かに、危険な薫りはしなかった。ただユリィはもう一度顔を上げて子供を見返した。表情がなかった。その子の二つの目は透き通って、色を持たないかのように真っ直ぐだった。声も同じように、抑揚がなく、色が無かった。『狼』という、ユリィの夢の中の少女もそうだった。だけど、それとはどこかが違っている。

 溜息をついて、ユリィはコップを受け取った。拒否する理由もなかった。湯はかなり苦くて、一息に飲み干した。毒にも薬にも、腹の足しにも、水の代わりにもならない。長く眠っていたせいか、ユリィは空腹だった。

「ありがとう……」

「うん」

 ユリィの一応の礼に子供は頷いた。そして、向かいの壁に背を預けて座る。コップを床に置いてから、ユリィは尋ねた。

「あなたが私をここに連れてきたの」

「向こうの丘で見つけたから」

「目的は何だ」

 低い声でユリィは聞き返す。子供は怯えこそしなかったが、ユリィを見据えたまま口を引き結んだ。目的があるのは確からしい。問い詰めることもできたが、ユリィは話を変えた。

「私はユリィ。あなたは?」

「テト」

「テト……あだ名?」

「テト」

 子供は繰り返した。どこの地方の名ともわからない。埒があかないと思って、ユリィは笑顔を作った。

「じゃあ、テト、ありがとう。私、もう行くから」

「なんで。どこへ行く」

 テト、と名乗る子供が真っ直ぐに聞き返すのに、ユリィは戸惑う。どこへ行くなんて、目的の場所なんて無かった。もちろん、このあばら家に長居する気もなかった。

「別に、どこでもいいけど」

「だったら、ここにいたら」

 テトは言う。ユリィをゆする気なのか、それともユリィの犯罪を見抜いていたのか、それとも。ただ、この子の目的はこのろくでもない浮浪者にあるんだろうと考えて、ユリィはもう少し話を聞くことにした。

「テトは、ここに住んでるの」

「うん」

「一人で?」

「うん」

「お母さんとか、お父さんは?」

 その二つの言葉を口にして、ユリィの心臓を限りなく細い針が貫く。

「いない。見たことない。村に入れないから、空き家を勝手に借りてる」

 そう淡々と答えるテトの表情は、少しも変わらなかった。そのときユリィの耳に遠く、人の足音が聴こえた。

「なに」

「誰か来る」

 ユリィがそう言うと、テトは急に立ち上がり、出口の戸の横の壁を叩いた。するとその壁は倒れて、外界が露になり、外の風が吹き込んだ。倒された壁は落ちることなく、床の一部のようにつながった。仕切り板だったらしい。テトは置かれていた布を運び、その板に敷く。そして部屋の隅の積み藁の中から、いくつもの草の包みを取り出した。それを一つ一つ布の上に並べて、広げ始めた。

 近づいてくる人影は、並べた草の前で足を止めた。テトは小屋の中から手を振る。ただの一人の旅の男のようだった。ユリィは奥から眺めた。

「草売りか」

「そうよ」

「乞食のがきが」

「何か買ってくれる」

 淡々と、テトは男と話し始めた。慣れているようだった。

「ちっ、痒み止めはあるか」

「あるよ」

「いくら欲しいんだ」

「良い人だね、ありがとう」

 男は数枚の硬貨をテトに投げつけた。そのとき、奥にいるユリィと目が合った。

「貸しだ。……おい、そこにいるのは誰だ」

 黙って見返したユリィに男は目を逸らした。見知った顔ではないはずだったが、この浮浪者まがいにはどこか見覚えがあった。そこで、ユリィの頭上の赤頭巾に気が付く。だから何ということもないが、妙な違和感があった。

「雇ってるの。ばいばい」

 そんな男の物思いは、テトの声に打ち切られた。ユリィは俯いた。それで少しばかりの野草を掴まされた男は、気のせいかと歩き去っていった。

 男を見送ってから、テトは言った。

「この辺は、草がよく採れるから」

「ふぅん……」

 そんなことより、ユリィには気になることがあった。

「今の人は、あなたの知り合いなの」

「ううん、全然知らない」

 テトの声に嘘の匂いがないのを確認して、ユリィは立ち上がった。そして出口の戸を開けた。

「……ちょっと、行ってくる」

「待っ」

 テトが言い切る前に小屋を飛び出したユリィは、男の歩いて行った方を追って走った。

 小屋から出たテトはしばらく息を吸うことも忘れて、小さくなるユリィの姿を見ていた。それから、ユリィの後を追うように裸足で走り出した。

 ユリィが狼の足で駆ければ、男にはすぐに追いついた。さっきは一人だったけれど、今は二人になっていた。何かを話しているようだった。

 あの男は、ユリィの赤頭巾を見ていた。故郷の街での事件だけじゃない。赤頭巾は目印になる。心当たりは腐るほどあった。

 ユリィの右手が肥大化し、爪が伸び、狼の毛が生える。その手で、無防備な二つの背中を狙う。そして殺した。

 そこで、狼が口をはさんだ。

『ちょっと焦りすぎじゃない。まあ、餌にはなったけどさ。そんなことより、忘れ物だ』

「寝てるんじゃなかったの」

 数日ぶりの少女の声に、ユリィは死体の荷物を漁りながら、空を見上げた。黄昏だった。狼がユリィに話しかけてくるのは大抵日が暮れてからだった。昼間は眠っているらしい。それから、狼は血が好物だった。

 荷物の中に、肉があった。ユリィは一目散に齧って喰べた。なんの抵抗もなくなっていたが、満たされもしない。

 ユリィは立ち上がる。テトの家に戻る理由はなかった。

「このまま、どこかに逃げてしまえばいいか……」

「どこか?」

 背後で声がした。ユリィはその影に、今の今まで気がつかなかった。

 色の無い目で、テトが見ていた。

 黄昏に赤く染まる地上。溶け合う血の匂い。散乱した荷物とうち捨てられた死体。深く落ちる黒い光とくっきりとした影。その上にユリィは立っていた。

 狼の言った『忘れ物』。それにユリィはようやく気が付いた。背中の猟銃がなくなっていた。



 この辺りの空気は冷え込み、川の水も当然のように痛む。ただ、ユリィには耐えられないほどではなかった。ユリィは近くの川で、長い間身体にこびりついた匂いを洗い流そうとしていた。洗おうと脱いだ服を流水に浸ける。浸み込んだ血が少しずつ、水の流れに溶け込んでいく。二人分の死体は木陰に埋めておいたけれど、こんなに服を汚したら、お母さんだったら叱るだろうなと、久しぶりにユリィは思った。

 適当に洗った服を岸辺に置いてから、ユリィは水の中に潜って、溜息の泡を吐いた。伸びるだけ伸びた髪が、水面に広がる。

 あのとき自分を見つけたテトを殺そうと思えば殺せたし、猟銃のことを問い詰めることだってできた。だけどそうしなかったし、なぜか殺せなかった。理由はわからなかった。どうして、殺せなかったんだろう。

 血塗れのユリィを見ても、テトは少しも怯えなかった。今、川でこんなことをしているのは、テトに洗ってきてと言われたからだ。

 行き場を考えようと思ったのに、頭の肝心なところが鈍ってどうにもならない。ずっと前からそうだったような気さえする。

「ユリィ」

 そうして浮遊していたとき、水中を貫いて聴こえた声に、ユリィは起き上がった。

「ユリィ、これ、どうやって撃つの」

 川の中にワンピースの膝のあたりまで水に浸かって、テトは立っていた。その両手で、ユリィの猟銃を抱えている。

「……これ、私の猟銃だけど」

「知ってる。何あげれば、私にくれる」

 テトは平然と、銃口をユリィに突き出す。ユリィはようやく合点がいった。

「最初から、私の猟銃が目的だったの」

「うん」

「どうして」

「使えそうだから」

 テトはあっさりと肯定した。目的を聞かれたとき、口を噤んでいたのは何だったのか。もう構わないということなのか。猟銃を突き付けてはいたが、テトに殺気はなかった。だからユリィは落ち着いてきた。

「猟銃を渡したら、どうする」

 言いながら、まるで狼みたいな問いかけだな、とユリィは思う。猟銃を渡せば解放してくれるのなら、それで十分かもしれない。どのみち、狼の手は持っていたし、そもそも生き返ってから、五感も身体能力も、昔とは比べものにならなくなっていた。飾り程度に持った猟銃が必要になることはほとんどなかった。

「あなたがさっき、私の客を殺したことを見逃す」

 テトは猟銃を向けたまま、そう答えた。そこに恐怖の色はなかった。その爪が自分に向けられることを考えていないのか、善悪がないのか、感情がないのかは分からない。ともかくこんな子供、簡単に殺せる。だけどユリィはさっきと同じように、なぜかそんな気にはなれなかった。代わりに問いを重ねた。

「あなたの元から出て行っていいってこと?」

「それは、どうでもいい」

 テトはそう答えた。ユリィは言った。

「ううん。渡せない」

 ほとんど反射的に動いた。ユリィはテトから猟銃を引っ手繰った。そして胸に抱きしめた。テトはよろめいて、少し口を開けていた。驚いているらしい。初めてテトの表情が変わるのを見た。だけどユリィも、自分の行動が理解できなかった。

 テトが猟銃にしか用がないというなら。今更、いらない人間になることを恐れているのか。それとも。

「くれないってことは、やっぱり、使えるやつなんだ」

 そう、無感情な声で言い残して、テトは川から上がった。それを眺めて、自分が裸だったことに初めてユリィは思い当たった。全く気が付かなかった。母と暮らしていたときならありえないことだ。野生に近づいているような気がした。

 ユリィは川の中で服を着直しながら、テトに問いかけた。今も、ユリィの衣服は女の子のもののままだった。

「あなたは、私のことおかしい格好だって笑わないの」

 その言葉にテトはユリィを眺めてみて、少し考えてから聞き返した。

「……ずっと頭に被り物してること?」



 その後も、ユリィはテトのもとに留まり続けていた。テトはそれ以上、猟銃を要求することはなかったし、ユリィを告げ口することもなかった。

 留まる理由はわからなかった。ただ、逃げる理由もなかった。草入りの湯、ときどき買ってくるパン、獣の肉。今更、人間の生活なんてものが恋しくなっているのだろうか。ただ、立ち止まるのも悪くない、とユリィは思った。

 眠気は昼間から襲ってくる。逃げるのに疲れていたのかもしれない。こういうときに限って、狼は何も言わなかった。

 そうして、ここに来て三週間が経ったころだった。その日もテトは草を並べて客を待っていた。そうしてやってきた客は、テトと同じくらい痩せていて、青ざめた顔が異様だった。

「じょっちゃん、いつもの」

「わかった。いつもの代わりのやつ選んで」

「どぉれーにーしょぅーかーなぁー」

 これぇかなぁ、と客は左端の草束を指さす。テトはそこから数本取って包んでから、別の包みを、部屋の奥から取り出した。ほんの小さな包みだ。テトはそれを丁重に掌の中に隠しながら、客に渡した。

「はい、できた。誰にも言ってない?」

「へへぇへ」

 座ったテトの膝元に客はじゃらじゃらと硬貨を落として、ふらふらと立ち去っていった。

「今のって、何」

 奥で見ていたユリィが尋ねる。いい夢を見れる薬、とテトは答えた。久しぶりに売れた種類のものだった。数秒の時間がたってから、ユリィがもう一度問いかけた。

「つまり、麻薬ってこと?」

「まやく?」

 テトは聞き返した。その言葉の意味はわからなかった。ユリィの溜息が聞こえて、テトは少し考えて言った。

「よくない薬なのは知ってる」

「あなたも、使うの?」

「私は使ってない。あたまがこわれて死ぬから」

 淡々とテトは答えた。他にも売っていた。傷が早く治るの、熱が冷めるの、眠れるの、動けなくさせるの、殺せるのもある。そういうの、売れるから。

 ユリィはそれ以上聞くのを止めた。親のいない孤児なんて、そういうこともあるだろう。まともな生き方をしてないから、悪いなんて思ってないんだろう。何人も殺してきたユリィに言えたことではなかったし、元から咎めるつもりもなかった。罪悪感なんて、人間にしかないんだから。

 午後になって、ユリィが眠っている間、テトは草を採りに出かけた。そうして背負った籠をいっぱいにした帰り、水を少し汲もうと川辺に立ち寄った。そのときだった。

 川を、人間が流れていた。そしてそれは、テトの目の前で流木に引っかかって止まった。

 テトには見覚えがあった。青ざめて、膨れた顔。今朝、いい夢を見れる薬を売った客だった。傷の類は見えなかった。溺れて死んだのか、凍って死んだのか、その前に死んだのか、それはわからない。

 その死体を見つめて、テトは三角座りの膝に顔を寄せた。きっと、この男が死んだのはテトが売った薬のせいだろう。それでも、買ったのは男で、テトは生きるために売っていただけ。そうでしょう。

 テトは顔を上げて、目の前を真っ直ぐに見た。

「……私、悪くない」

 そう呟く声は、誰に宛てたものでもなかった。

 鳴き声もなく、夕闇に鳥の影が消えていった。太陽は半分以上が落ちて、もう半分の月が上る。

「そういえば、いつから続けてるの」

 籠を背負って小屋に帰ってきたテトに、ユリィは尋ねた。問いかけに顔を上げたテトは、いつも通り無表情だったけど、どこか罰が悪そうだった。その顔を見て、ユリィははっとした。

 本当は、ユリィは安心していた。

 テトが子供と言ったって、ユリィとそう歳なんて違わない。この少女も自分と同じ、悪い子供で良かった。『悪い子』で良かった。

 だけどテトの表情は、そうじゃなかった。本当に何も思ってないなら、悪いことだと思ってないなら、しないはずの顔をしていた。

 言い淀むユリィをよそに、テトは黙って立ち上がり、隅に置かれた藁の中から、一冊の本を取り出した。そしてそれをユリィの前に広げた。

 草の絵が描いてある。いくつも、いくつも。絵の下には、ユリィの読める字で、名前と、用法が書かれている。図鑑のようだった。それをめくりながら、テトは語る。

「覚えてない。昔、やり方を教えてくれた人がいた。旅の人だった。草の集め方も見分け方とか、薬の作り方とか、うさぎの仕留め方、捌き方、物の売り方、話す言葉……あと、この本をくれた。文字は読めないけど」

 そこまで言い終えて、テトはめくる手を止めた。その頁には、花が描かれていた。たくさんの花が。テトはこれらの花を、見たことがあるのだろうか。ユリィは見たことがない。



 夜になった。ユリィは眠れない。眠っていても眠れなくて、息苦しくて目が冴える。今に始まったことじゃない。あの日、母を殺した日から、ずっとだ。

 向こうの壁際では、テトが藁を被って寝ている。ユリィの夜目はすっかり利くようになっていた。閉じた目。幼い顔。汗ばんだ鈍色の髪。痩せた肌。規則正しい寝息。

 血の匂いがする。

 壊したい。殺したい。喰らいたい。血を喰いたい。

 狼の爪が伸びる。テトを目がけてユリィは飛びかかった。その右手がテトの首に触れる寸前、掠れた声が、ユリィの耳を貫いた。

「――ュ、リィ」

 反射的にユリィは飛び退いた。テトは目を閉じたままで、呼吸音は静かに続いていた。ただの寝言のようだった。

 ユリィは目を瞑り、浅い呼吸を繰り返す。蹲りながら、やがて拍動が収まると、愕然とした。今のは、完全に理性を失っていた。本物の狼のようだった。こんなことは、今まで無かった。今も、テトの顔を見るだけで、寝息を聴くだけで、いつまた殺意に飲み込まれるか分からなかった。ユリィは耳を塞いで、眠ろうとした。

 だけど何より分からなかったのは、自分がその殺意を許せないこと。そして、ここから出ていくことさえできないことだった。



 ユリィは久しぶりに夢を見た。オレンジの空の夢だ。

 初めて会ったときと少しも変わらない姿で、白銀の少女――『狼』は立っている。

「君さ、花畑は好き?」

 くるくると振り向いて、狼は足元の影を踏む。仰ぐようにユリィを見て、なんでもないことのように聞く。

「僕は嫌いだ。いや、何もかも嫌いだ。君ら人間のことだって、ときどきどうしようもなく嫌いになる」

 そんなことを言いながら、僅かな微笑みを浮かべている。意味の無い話だ。狼はいつも、答えのない話ばかりする。だからいつも、ユリィは答えない。

 ねえ、狼。

 ユリィは呼ぶ。

「私、いつか本当の狼になるの?」

 二つの金色の目が光る。少女は笑って、狼の牙を見せた。


『赤頭巾』の結末は、最初から、そう決まってる。


 それは肯定だった。

「狼になったら、私は死ぬの?」

 ユリィは問う。さっきみたいに、ただ理性も記憶もなくして、欲望だけの獣になるというのか。それは死ぬこととどう違う。

「君は自分で言っただろ。もう死んでるって」

 父を殺したとき、ユリィは確かにそう言った。だけどあのときは、人間として過ごした記憶があった。意識があった。自分があった。

 溜息をつく真似をするように、狼は溜息をつく。

「狼にだって、心はあるんだぜ」

 そう言って狼は笑うのをやめた。ユリィは自分の足元を見下ろした。何もない砂漠に、相変わらず人の形をした影が描かれている。

 何に、怯えるべきだと言うんだろう。ただ、もう一度死ぬだけだろう。そしてこの死が避けられないなら、恐れても考えても仕方がないのに。そう思って、ユリィは狼の方を見た。

「あなたは私が狼になっても、一緒にいてくれるんだよね」

「いや、終わりだ」

 狼の、甘い、氷のような声が突き刺さる。

「君達の言葉で言うなら、死んだ奴と、どうやって一緒にいることができる?」

「……約束したじゃない」

「約束は破るのが『赤頭巾』だよ。それに、いない奴との約束なんて、どうやって守る?」

 ユリィは何も言えなくなった。

「そんなに僕と一緒にいたかったなんて、照れるな。ずっと、君は僕から解放されて自由になりたがってると思ってた」

 そうだったはずだった。自由なんて欲しくなかった。だけど狼なんて、いらなかったはずだった。心だって、そんなもの、欲しくなかったはずだった。

 なのに、どうして。

 ひとりぼっちが、怖いんだ。

 ユリィは思い出す。

 狼達の死骸。お母さん。お父さん。二人の旅人。何十人もの血液。

 みんな死んだ。ユリィが殺した。

「……お前のせいだ」

 俯いて、ユリィは低く呟く。それから、顔を上げて狼を睨んだ。

「お前は嘘つきだ! 全部、お前のせいだ! 『狼』!」

「……そうこなくちゃ、面白くない」

 少女は無表情のまま、静かに言う。

 こんな奴でも、狼だけが、ずっとユリィの傍にいたんだ。両手を広げて踊りながら、少女の形をした狼は語る。

「君の前の『赤頭巾』役は、君のばあさんの兄貴だった。猟に出た先で、反撃に遭って死にかけていた。たまたま居合わせた僕は助けてやった。君と同じように」

 祖母からそんな話を聞いたことはない。兄がいた、ということさえ知らない。ただ祖母が赤頭巾を大事なものだと言っていたことは、ユリィも覚えていた。

「あいつが本当の狼になったとき、僕を……赤頭巾を、ばあさんに渡すために駆けて行った。そこで、撃たれて死んだ。こんなに世界は広いってのに、どこにも行かずに。結局、お家に帰りたかったらしい。どうしてだろうね」

 やっぱり、狼の物語に意味はない。救いもない。本当だろうとおとぎ話だろうと、どうしようもない空想だ。

 狼は空を見上げた。そこには、白い半分の月がある。横顔を向けたまま、ぽつりと告げる。

「ユリィ。君はまだ、ユリィだ」

 生きてみせろ。

 そしてユリィは、夢から覚めた。



 鳥の声がした。渡り鳥だろうか。とりあえず、朝だった。

「おはよう」

 ユリィが起き上がったのを見て、テトは声をかけた。おはよう、と返事が返ってくる。テトはひび割れたコップに刻んだばかりの葉をひとかけら入れ、沸かしたばかりの湯を注ぎ、市場で買った粉ミルクを混ぜる。そしてそのコップをユリィの前に置いた。いつもと同じ動作に、ユリィは躊躇いなくコップを手に取った。

 だけどユリィは口元にコップを近づけたまま、飲もうとしなかった。そしてついに持ち手を下ろした。何か気になったのか、テトに尋ねた。

「これ、何を入れたの?」

「粉ミルク。なんだか、気分悪そうだから」

 テトは用意のできた自分のコップを持って、ユリィの向かい側に腰を下ろした。そして中身を一口飲んだ。その様子をユリィはじっと見ていた。テトは飲もうとしないユリィを見返した。

「どうしたの」

「ごめんなさい。私は飲めない」

 ユリィはコップを床に置いた。

 ユリィのコップの中身は、薫りが違っていた。ほんの少しの薫りでも、ユリィにはすぐに分かった。中に混ぜられていたのは毒だった。どんな毒かを知らなくても、飲めるようなものじゃないのは分かっていた。ただ、ユリィはそれを口に出さない。

 だけど、テトは言った。

「入れたよ」

「え?」

「入れたよ、薬。すぐに死ぬ薬。やっぱり、気づくんだ」

 当然のことのように、テトの草の色の目は真っ直ぐにユリィを見る。初めから気づくことが分かっていたようだった。

「私を殺すつもりなの」

「あなたは、私を殺そうとしたから」

 そう告げて、テトは自分のコップの中身を飲み干した。慣れた苦い味だった。

 昨日の夜のことに、テトは気が付いていたらしい。表情のない顔が、睨むような顔に変わっていた。テトの表情らしい表情を、ユリィは初めて見た気がした。

「いいよ、別に」

 その言葉は、自然にユリィの口をついて出た。別に今、死んでも構わないはずだ。どうせ死ぬのなら。逃げられないのなら。狼の言うとおりに狼になる前に、死んでしまえばいい。

 ユリィは背中の猟銃を取り出した。そしてそれを、目を見開いたテトに差し出した。

「それで、私を撃てばいい」

 そうユリィは言った。テトは黙ったまま、猟銃を受け取った。だけど膝に抱えたまま、テトはユリィを見据えて動かない。そして、首を横に振った。

 なんだ、結局殺すつもりもないのか。ユリィはがっかりして溜息をついた。

「殺せないなら、出ていく」

 挑発するような言葉は、ユリィの本心だった。ここには長居しすぎた。どこに行っても同じ、変わらない毎日が続くだけの場所だ。限りなく狼に近づき、本当に狼になるだけの疾走に戻ったっていい。

 だけど、テトはもう一度首を振った。

「……どうして、撃たないの」

 痺れを切らしてユリィは呟いた。

「あなたこそ、飲めばいいのに」

 それがテトの返答だった。ユリィはようやく思い至った。死にたいなら、床に置きっぱなしのコップの中身を飲むだけでいい。なのにそれだけはできない。身体が動かなかった。

 テトは考える。あの水死体のことが頭から離れないのか、だとしたらどうしてなのか、それとも全然違うところから来るのか、分からないけれど、たとえユリィが、自分を傷つけるとしても。

「私、あなたを殺せない」

 テトはそう言った。その言葉で、ユリィは毒を飲めない理由が分かった。自分で自分を殺すことができない。恐れなのか、本能なのかは分からない。だけど一つだけはっきりしている。 

 まだ、ユリィは死にたくなかった。

 その為なら、テトだって。

「私は、殺す」

 ユリィはそう言った。だから何もかも、自分を傷つけるものを、殺してこれたんだ。

「殺されたりなんかしない」

 テトは答えた。そしてユリィを見つめ直して、言葉を重ねた。

「私は、あなたのことを知りたい」

 テトは子供だ。そしてユリィも、同じように子供だ。

 テトを殺せなかった理由も、ユリィは今分かった。テトとユリィは、どこかで似ていた。

 ユリィは目を瞑る。テトが知りたいことはなんなのだろう。今まで人間として生きてきたこと。学校の先生の話。祖母の家を探し回った思い出。祖母の語る物語。死んでからのこと。父のこと、母のこと。殺した獣、殺した人間。オレンジの空、狼の振り返る後ろ姿、朱い花。自分が話したいことはなんなのだろう。

「……『赤頭巾』の物語を、教えてあげる」

 ユリィはそう、口を開いた。



 また夜が来て、ユリィは藁の中で身を竦めた。

 テトは何処かに行っていた。ユリィに行き先は分からない。野草採りか水汲みか、こんな夜に何処へ行くというのだろう。

 小屋の中は暗く、壁の隙間から刺す光は本当に僅かだ。月の光だ。下弦の月だった。こんな夜なのに、狼は話しかけてこなかった。いつものように目は冴えて、心臓が暴れる。仕方がないから、少し考えることにした。

 昼間に眠る時間が長くなった。夜に眠る時間が短くなった。一度死んだはずの身体が、簡単に作り替えられていく。この感覚は、女の子の恰好をし始めた頃に、少し似ている。

 ユリィがどこから来たのか。どうしてここまで来たのか。どうしてテトを殺そうとしたのか。ユリィは説明できるだけをテトに話した。その間、テトはほとんど表情を変えなかった。話し終えると、テトは一度頷いただけで、黙ってコップを差し出した。今度はまともな飲み物だった。

 死ぬまでの間、やりたいことをしようと決めた。やりたいことが何なのか、そんなものがあるのかは分からない。だから今は、テトの小屋に留まっていた。

 狼、とユリィは呼んだ。

「……どうして、撃ったのがお母さんだったんだろう」

 そう呟く。

 馬鹿な悪い子だから、狼に唆されて、こんなところまで来てしまった。善悪の感情をとっくにどこかに追い払ってしまっていても、そのことはユリィも認めていた。

 そうだとしても、引き金を引いたときに母を思い浮かべたのはどうしてだったんだろう。一番殺したい奴を思い描け、そう狼は言った。

 母のことは嫌いなんかじゃなかった。殺したいなんて思ったことはなかったはずだった。いじめられて、ユリィを演じて、確かに、嫌なこと、窮屈なことばかりだったけれど、だからって、どうして。だって今もあのころのまま、ユリアンはユリィで、恰好も言葉も、母の言いつけ通りだ。もう縛るものなんて、狼と赤頭巾しかいないのに。

『もうすぐ、そんなこと考えなくたってよくなる』

 狼はその一言だけを返した。

 もし明日、思い出や感情を、取り戻すことができたなら。何か自分が、変わることができるなら。

 残された時間はあと僅かだ。もうすぐ狼になって、ユリィは死ぬ。本能でそれが分かる。架空の月を見上げる少女の後姿が、ユリィの脳裏に浮かぶ。

 ユリィは目を瞑って、眠る振りをした。光は届かなくなる。夜の音が鳴る。枯れ木と藁と草が薫る。

 明日を待つ。明日になったら。明日になったら。そんな風に数えているうちに、いつか意識を失った。



 月も傾いたころ、テトは小屋に帰ってきた。荷物を置き、隅で寝ようとしたとき、声が聴こえた。

「おやすみ」

 その声はユリィの方から来たけれど、ユリィの声ではなかった。現に、今は眠りについているようだった。ただテトは前にもその声を聴いたことがあった。丘でユリィを見つけた日だ。

「……おおかみ?」

 テトは問いかける。

「うん」

 その声は肯定した。昨日のユリィの話の通りなら、ユリィの頭の赤頭巾から、声が出ているのかもしれなかった。

「君は勘がいい。君が引き金を引いたなら、僕はユリィの身体を使って、君を引き裂いていた。まあ、僕が出るまでもなく、ユリィはそうしたかもしれないけどさ」

 狼の声はそう続けた。

「けっこう、よく喋るね」

 意味がわからなくて、テトはそう返すしかなかった。

「どうして、君はそんなにユリィが好きなの?」

 やっぱり、テトには意味がわからなかった。言葉の続きを待ったけど、それ以上声は聴こえなかった。

「……すき?」

 その言葉をテトは反芻した。すき、って何だろう。結局よくわからなくて、テトは気にしないことにした。おやすみって言えなかったな、と眠りに落ちる頭でテトは思った。



 火の粉の匂いがする。天井の穴の真上に太陽があった。ユリィが起き上がったとき、小屋の中にテトは居なかった。また外に出ているようだった。ユリィが外に出てみると、小屋の前でテトは焚き火をしていた。

「おはよう」

「お、おはよう」

 ユリィの返事はなぜかぎこちなくなった。テトは燻る火の前に座りこんでいる。薪と草葉を積んだだけの原始的な焚き火だ。真昼に揺れる小さな炎が、テトの浅黒い頬に赤い陰を落としている。元から暖かくはない場所だが、近頃は特に冷え込みが激しくなっていた。

「この辺りって、雪は降るの」

 何気なくユリィは尋ねた。

「ゆき?」

 テトは顔を上げて聞き返した。知らない言葉のようだった。

「白くて、冷たくて、やわらかくて、上から落ちてくる……」

「白い、冷たい、硬いやつならたぶん……もうすぐ、くる」

 ユリィの下手な説明は伝わったらしい。ここの雪は硬いのだろうか。それともテトには硬いのか。どちらにせよ、確かめる時間はユリィにはない。

「そういえば、何してるの」

 ユリィは話題を変えた。

「芋を焼いてる」

 テトはそう言って、もう一度焚き火に目を遣って、大分火の鎮まった薪の中に棒を突っ込んだ。その棒を持ち上げると、確かに痩せた芋が刺さっていた。

「食べよう」

 テトが棒を向けたから、ユリィも焚き火の前に座った。

「うん」

 差し出された芋を掴む。手で掴めるくらいの温度だった。テトも自分の分を焚き火の中から取り出す。

 ユリィは噛みついた。何の味もないどころか苦いくらいで、皮は硬かった。要するに不味かった。それでも、芋なんて食べたのはここに来てから初めてで、それどころか、故郷の街を出てから初めてで、ユリィは懐かしいと思った。

 チェリーパイが食べたい。本当は食べたくない。肉を食べたい。血を喰べたい。

 ごちゃごちゃする頭を上げてテトを見ると、一心不乱に芋に噛り付いていた。それが少しおかしかった。

 ここは冷たい。温かくはない。ただ、こういう景色を、不幸せじゃない、と呼ぶような気がした。

「ユリィ」

 そんな物思いに耽るユリィを見て、テトは声をかける。ユリィは顔を上げた。

「すきって、なに」

 テトは真顔で、そんなことを聞いた。

「……好き?」

「なんでもない」

 ユリィが聞き返すと、テトはなぜか打ち切って、芋の残りを食べ始めた。ユリィは少し不審に思いながら、自分の芋を食べているうちに、そのことを忘れた。



 数日経った午後、ユリィは川辺に座っていた。両足を冷たい水に浸している。ユリィの後ろに、テトは膝をつけて立っていた。

「こう?」

「うん。器用だね」

 テトはユリィの髪を編んでいた。赤頭巾の下に流れるユリィの髪は、長い間の油が染みついてうねっていた。テトの鈍色よりも黒い色の髪だ。テトは藁の紐で、二つに分けた片方の毛先を縛り終えた。これはユリィが言い出したことだった。

 そのうち編み方を自分なりに覚えてしまったけれど、母はずっとユリィの三つ編みを編んでくれていた。結局、一番綺麗に編めたのはいつだって母だった。

 水面にユリィの顔が映っていた。だけど、ユリィには自分が今どんな姿になっているのか、少しも分からなかった。昔のように髪を結んでみても、違う気がする。水流に入れた足が痺れてくる。ああ、死体みたいだ。

「ねえ、テト。抱き締めてくれる」

 口をついて出たのは気まぐれな言葉だった。背後のテトは動きを止めて、少し驚いたように答える。

「まだ片方終わってない」

 また意味が分からなかったのかもしれない。

「終わったらでいいよ」

「寒いの?」

 もう一度ユリィの髪を編みながら、テトは問いかけた。

「そうかも」

 ユリィはそう答えた。

 感覚のなくなった足を眺めながら、しばらく時間が経った。爪が伸びたなと思った。そういえば、手もだ。狼の爪を借りなくても、十分獣みたいだった。

 そうしていたとき、いきなり背中に重みを感じて、平衡を崩しそうになった。テトは、抱き締めるというより覆いかぶさるように抱きついてきた。草の薫りがした。ユリィの胸の前で、骨と皮ばかりの腕が組まれた。背中に温度を感じた。冷たかった。

「これでいい?」

「お母さん……」

「え?」

 ユリィから漏れた言葉に、テトは怪訝そうな声を上げた。ユリィははっとして頭を振った。頭の中で、死んだ母の、荒れた手の感触が蘇る。

「何でもない……ごめん、もう離して」

「わかった」

 ユリィが身体を捩ると、あっさりとテトは離れた。テトの体温は温かくなんてなかったのに、離れてしまえば、抱き締めてもらう前よりずっと、心臓が凍える気がした。

 テトはただ、一言呟くように言った。

「……あったかいね、ユリィ」

 ユリィは足を川から抜きながら、思わず振り返った。見下ろすテトの顔に、相変わらず表情はない。きっと本当に、口に出したことしか考えていないんだということは、ユリィにもわかってきていた。

「テト」

 ユリィは呼びかけた。テトは瞬きをした。

「なに」

「……テトは、笑わないよね」

 その目があまりにも透明で、ユリィはとっさに誤魔化した。そして空笑いした。本当は、もう一度、と言いたかった。どういうわけか言えなかった。

 少しだけ俯くように目を伏せたテトは、今までで一番不思議そうな顔をしていた。

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