第20話 果たし状
執筆後になって気になったことがあります。それは、なぜゾンビ皮を着ているとゾンビに襲われないのか?です。
なぜゾンビ皮を着ているとゾンビに襲われないのか?
この疑問は本作品を根底から覆す恐れのある危険な問いかけです。そういう設定だからと逃げることもできますが甘えてはならないのです。そもそもゾンビなんか居ないとフィクション返しもできますが、それも自己否定となってしまいます。この作品はゾンビが居ることを前提として描かれているのですから。
さて、先ほどのギモンに答えるとすれば答えは中和されるからです。薄まるからと答えるのも良いでしょう。もう少し詳しく説明をします。たとえば主人公が人間臭を放ちながら街を歩いています。ゾンビ皮を着たからといって完全密封スーツではないので縫い目などから呼気が漏れてしまっています。その呼気などに人間臭があるため本来はゾンビが襲ってこなければ不自然です。しかし主人公はゾンビ皮を着て強い焼きナッツ臭をさせています。強い焼きナッツ臭、つまりゾンビ臭のおかげで人間臭が薄まっているわけです。匂いで匂いを消す、ゾンビ臭は人間臭さを消す香水のような役割をしています。
ゾンビ臭で人間臭を消す、薄める、中和する、なんでも良いですがゾンビカーも同じ原理を使っています。車体からは中のモヒカンの人間臭が漏れています。しかし車体に吊ったゾンビ皮から強いナッツ臭が出ているので人間臭を隠しているわけです。そのゾンビ皮が落とされれば人間臭がくっきりとなり、ゾンビが寄ってきます。そして窓ガラスをバンバン叩いて割ってしまうのです。
今回リーダーはタイマン勝負を挑むために果たし状を使いました。この時のリーダーの考えとしては、やられたモヒカン二名の復讐という気持ちもあります。しかしメインは敵への恐れです。ゾンビカーを易々と無効化してゾンビの群れに襲わせた正体不明の敵を恐れているのです。そして、時間が経てば見回りの車をチクチクと襲われて人数が減ってしまいます。見回りを怠れば敵がいずれモヒカン本部までやってきてゾンビの群れを突入させるかもしれないとリーダーは考えています。もちろん敵がそのまま立ち去る可能性もありますが、それならラッキーで果たし状が無駄になるだけです。リーダーとしては敵がこの町に居続けるのなら本部を襲われる前に、これ以上犠牲が出る前にタイマン勝負で決着をつけたいのです。
果たし状を作る際には、リーダーは相当譲歩した条件にしました。タイマン勝負に敵が乗ってこなければ話にならないのです。敵がずっと町に居続けて果たし状にも乗ってこないではダメなのです。人数の多いモヒカンチームとタイマン勝負が出来るのですから、それだけでソロの主人公には有利な条件だとも言えます。ただ主人公がモヒカンリーダーにタイマン勝負で勝っても他のメンバーからの報復を恐れる可能性があります。その報復を遮断する条件を敵に決めさせることがリーダーの狙いでした。
もうひとつ付け加えるなら、この果たし状にはリーダーのブラフが含まれています。勝負を逃げた場合は主人公よしおが別の町に移動することになりそうです。その場合でもモヒカンメンバーが追うというのはブラフです。モヒカン二名を襲った敵を追跡しても返り討ちに合う危険性が高いのです。リーダーは手持ちのカードが弱いのでハッタリをかませたことになります。
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