第19話 凹み

事件か事故か、それが問題だ。ということでリーダーはナオユキの車を持ち帰ってその原因を探っています。たとえ事故であったとしてもゾンビの群れに囲まれたぐらいでゾンビ皮が脱落してはいけないのです。もし事故だと確定すれば残るゾンビカーの皮はより強靭な鉄のワイヤーなどで固定しなければならなくなります。

今回は車のロープが切られている跡から他に人間が、つまり人間の敵が現場にいたことが判明しました。ナオユキたちが自らロープを切ることは無いのですから誰かがやってきて切ったのです。私はここで執筆中にラッキー、という感じでスイスイ書いたことを覚えています。主人公よしおが包丁でロープを切っていたからこの固い推理が成り立つわけです。私は少し前に主人公のよしおがロープを切るシーンを執筆中に、ゾンビの首を切っても同じことだなと考えていました。むしろゾンビ皮に精通している「よしお」ならロープより皮を切ってゾンビ皮を脱落させる方が自然だったのです。しかしなぜか「よしお」はロープを切ってくれていました。そこで私はラッキーとばかりにリーダーの推理を成立させたものです。これがもし皮を切っていればゾンビの群れが集まったせいで偶然、ねじ切れてしまったことも考えられます。それでも賢いモヒカンたちのことですから切り口から刃物が使用されたことは推理できたと思われます。ただ確実なのはロープの切断面です。

モヒカン本部での精密な推理を細部まで考えていなかったので他のモヒカンメンバーがナオユキたちを襲った可能性を否定できませんでした。そこで急遽、メンバーたちのアリバイ証明のシーンを書き加えました。強固な絆で結ばれたモヒカン連中のことですから仲間を襲って犯行を隠すなんてことは絶対ないのですが、しょうがありません。モヒカンたちのプライドを傷つけるシーンを一応書いておかねばならなかったのです。ごめん、モヒカンたち。今度会ったらトゲトゲ肩パッドおごるからさ。


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