第15話 フロントガラス

今回はゾンビカーの無力化についてです。読み返してみると主人公の判断が良すぎる気もしました。まずゾンビカーを見つけて近づいた主人公のよしおは急にヤリで突かれます。執拗な攻撃をかわすため主人公はカーの下へ潜り込みます。もちろんそのままではモヒカンがオラオラと車外に出てきてヤリを突いてくるのは明白です。モヒカン側としても怪しい者は人間だろうがゾンビだろうが皮だろうがとりあえず殺すのがセオリーなのです。そうでなければ生き残れなかったであろう世界です。


話を元に戻しますと主人公はとりあえずカーの下へ潜り込みました。そしてカーの部品をカンカン叩いて音を出したのです。これは音を出せば周囲のゾンビが寄ってくる習性を利用しています。ゾンビがカーを囲めばモヒカンたちは降りれなくなり主人公は安全になります。今読み返してみて、現場をゾンビだらけにすると安全性が高まるとは何とも皮肉な設定です。


カーの周囲がゾンビだらけになったのでモヒカン2名はリーダーから教えられた手順に従っています。もしもカーをゾンビに囲まれた場合は動くなという教えです。窓やドアをピッチリとロックしてエンジンを切って静かにしているのがセオリーなのです。


余談ですが、執筆中にモヒカンの無線をどうするかはとても悩みました。カーで見回りをしているのですから無線を持ってきていないのはおかしいのです。しかし無線を持っていればゾンビに囲まれたら使いたくなるのも人情です。ただ無線を使えば主人公の存在をモヒカン本部に伝えられてしまいます。「リーダー助けて下さい!ゾンビに、ゾンビに囲まれました!ゾンビの皮を着た妙な男がカンカンしたためです!。」という具合に今後の謎解きがモヒカン本部にネタバレしてしまうのです。私は無線を持っていても使わなかったというシナリオにするには難しいと思っていました。しかし執筆中にふと夜中に目を覚ました私は、アイディアが浮かんで暗いキッチンで飲んでいた水をウゴガゴしました。そのアイディアとはリーダーから無線の使用を禁止されていた場合です。ゾンビは音に反応して集まるのですからエンジンを切って静かにしていればゾンビは去るのです。その対応の一環としてゾンビに囲まれた場合には音のうるさい無線機の使用も厳禁だったのです。さすがはモヒカンのリーダー、頭が良いですねえ。話を進めますとゾンビの皮をぶら下げた特製のゾンビカーはゾンビに攻撃されることは無いのです。この車はゾンビはゾンビを襲わないという設定を利用した戦車とも言えます。もし戦車が言い過ぎであれば特攻野郎Aティームの改造装甲車と考えて下さい。


話を元に戻しますと、主人公は現場がゾンビだらけになり安全が確保されたので車の下からムニュムニュと、はい出しました。当然、集まったゾンビたちは主人公を見て「変な動きをするゾンビだな!」と思ったにちがいありません。しかしゾンビスーツを着てゾンビ臭を出している男に対してはあまり思考力の無いゾンビたちは「まあ。いいか。」となるわけです。集まったゾンビ達の興味はカーにあります。カンカンという金属音で集まったゾンビたちはカーのそばに集まりました。しかし肝心のカーはゾンビ臭、いや、ゾンビスメルを強烈に放っていたのです。ゾンビらは、もし人間臭がすればカーをバシバシ叩いてフロントガラスでも割って中の人間をガブリするつもりでした。しかしゾンビスメルが、あの焼きナッツ臭がしているわけでゾンビたちも仲間を叩くわけにもいかずにウロウロなのです。


話を元にもどしますと、安全を確保した主人公はそのまま立ち去ることもできました。周囲がゾンビだらけなのでヒョイとビルの陰にでも隠れれば、そのまま逃げ切れるのです。しかし主人公はカーの上に乗りゾンビの固定ロープを切り始めます。この判断が異常に速く的確すぎると読み返した私は思ってしまいました。初めて見た異様なゾンビカーの弱点を瞬時に見抜いてゾンビ皮を脱落させたのです。この主人公の判断力の高さには違和感が残るのですが作品のスピード感を出すには良かったとも思えます。現場のスピード感を表現するには主人公がいちいち考えていてはダメなのです。本能的に手が動いたレベルの攻撃防御が必要です。主人公もゾンビ皮を使う者ですからカーの皮の意味を理解しています。装飾で皮を吊る者などいないのですから、ゾンビ皮を切り落とせばカーの機能が失われることは明らかです。敵の車に皮が吊ってあるから切り落とす、というシンプルな思考であるとも解釈できそうです。たとえそれが怒りに震えた主人公の復讐の思考であったとしても。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る