第3話 ダブルピース

おニューのゾンビスーツで外出した主人公が、まず誰と出会うかは何度も思案しました。軍人や警察官などの特殊な職業人と出会うことも考えましたが、確率的に普通の家族に遭遇するのが自然だろうと考えました。普通の家族でも備蓄食料を食べていれば長期間生きていられるのです。そして食糧を食べつくした家族は、車で故郷へ帰ってみるはずです。電話やネットが不通ですが頼りにするのは故郷の農家などです。しかしその家族はフレンドリーとは言えず、警戒感がビシビシ出ていて主人公とは話も出来ないという感じにしました。とりあえず書き進めていくと奥さんや娘さんの表情が想像しにくい事が判明しました。きっとPTSDだろうと進めるとアレ?と思いました。この家族、もうひとり子供がいたんじゃないのか?・・・こわっ。


父親に持たせる武器は当初はショットガンでした。銃なら近づくゾンビを始末できますし略奪者からも家族を守れます。しかし日本でショットガンは不自然ですし、主人公のよしおが一発撃たれて終わってしまいます。少しでも怪我をすればゾンビ汁が傷口から入って感染してしまうのです。まさか第三話で主人公が感染してしまうのはハードモードすぎてクリアが絶望的になってしまいます。しかしヤリやナイフでは射程が短すぎます。そこで弓矢、アーチェリーにしたわけです。銃の手に入りにくい日本でもスポーツ用の弓矢なら持っていて違和感がないだろうという目論見でした。実際にこの父親が弓矢を使わなくても見せるだけで近づく人間をけん制することができます。「近づけば射るぞ!」「射れるもんなら射ってみやがれ!」「本当に射るぞ!」「射ったね?、オヤジにも射られたことないのに!」


自分がゾンビではないことのサインとして、敵意がないことの表現として、ダブルピースというハンドサインを使う事を考えました。他人とコミュニケーションするにしても声が聞こえにくいので話にならないからです。声が聞こえるほど近づけばそれは接近戦の間合いに入ってしまうというジレンマを解消できると考えました。しかし書いた後によくよくその場面を想像すると、かなり不気味な光景になっていることが分かりました。そこで後から浴室のシーンを付け加えました。すると父親がなぜ突然弓矢を向けたかの説明にもなり彼のフォローとして有効であることが判明しました。父親は普通の人です。ここは偶然の要素の強いストーリー展開ですがパチッとハマった感じがします。「ツイてたな。」と思うことにしました。


三話ラストは家族の無表情の理由を明かして終わることになりました。最初は男の子用のリュックが置いてあったとしめくくるつもりでした。しかしそれでは男の子がいたことが分かりづらいし、作者が女の子用を書き間違えただけだと思われても悔しいので四人家族だったと人数を出すことにしました。次回はゾンビ世界で食糧はどこに残されているかについて書くつもりです。







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