生配信16 休憩30分

 昼配信を落として、休憩を取る。


「ふぅ、で? 本当にこのまま配信続けるんで良いんですか?」


「もちのろん」


 当初の企画では、13時から16時の昼配信、23時から26時の夜配信で『DbD』コラボをするつもりだった。


 しかし、絵茶さんの「練習は長時間続けてこそ練習」発言から俺の「30分後、また会おう」発言により、企画が大幅変更。


 これでは、もう、


「耐久配信ですね」


 耐久配信とは、自身で目標を決め、目標に至るまで配信を続けなければならない配信のこと。また、その日に目標を成し遂げられなかったら、次の日の配信、また次の日の配信と、成し遂げるまで次の日に持ち越しとなる。


「まあ、耐久と言えば耐久なのかな?程度ですけどね。目標が『滝さんを強くする』なんで」


 確かに、耐久配信にしては目標が簡単すぎる。


 『DbD』初心者の俺は、RPGゲームに例えるとレベル1の冒険者だ。それに対して、絵茶さんは80レベルくらいの冒険者。


 レベル80の冒険者のプレイを見習えば、レベルなんてすぐに上がり、強くなる。


 いや、こんな簡単な耐久配信をする配信者は、俺と絵茶さんぐらいだな。


 あはははははは。


 ………


 ……


 …


「それじゃあなんか、つまらないですね」


「っ!」


 そんな簡単な耐久配信をしたところで、見てるリスナーさん達はつまらない。というよりか、配信している俺がつまらん。


「耐久と言ったら耐久ってことは、耐久じゃ無いって言ったら耐久じゃ無いってことでしょ? ならさ、やるなら耐久をやろうよ」


 中途半端は誰の得にもならない。


「私は良いですけど、滝さんは大丈夫なんですか? エーペックスとかFF14とかやらなくて? ここ最近ずっとやってたじゃ無いですか。リスナーさん達待ってたりとか」


 ああね、確かにリスナーさん達の中には、『DbD』よりも『エーペックス』とか『FF14』の配信を見たいって人はいるかも。『FF14』に関しては、丸1日やってないしね。


 でも、そこは、


「応援してくれるリスナーさん達のことを考えるのは当たり前なんだけど、でも、でもね、俺らのチャンネルだから。俺らの好きにやって良いと思うんだよね」


 リスナーさん達には我慢をしてもらおう。


 配信の内容? そんなの俺が決める。明日の配信の内容も俺が決める。明後日も明明後日も。未来永劫、リスナーさん達が配信の内容を決めるなんて日は来ない。


 リスナーさん達には悪いと思うが、これは俺の配信。俺が配信主で、リスナーさん達は視聴者。この関係は絶対に崩れるわけにはいかない。


「………それもそうですね。じゃあ、ホンマもんの耐久配信しますか!」


「おう、やってやろうぜ!」


 完全なる耐久配信をする。意思は固まった。


 さて、耐久配信をすることは決まったのだが、


「目標をどうにかしないといけませんね? 滝さんが上手くなる以外で」


 そこなのだ。目標を決めなくては耐久配信は始まらない。


「目標ねぇ」


 どんな目標ならば良いだろうか? 難しすぎず、易しすぎず。


 うーん………こういう時は、


「『DbD』のことよく知らないから絵茶さんが決めてよ!」


 秘技、他力本願丸投げ。


「はあああああああ⁉︎ それは無いでしょ、滝さん!」


「すまぬ。このゲーム、何が難しくて何が易しいのか、よくわからぬゆえ、よく知っている絵茶さんに助言を………というか、目標を決めてくれたら嬉しいんですけど」


「自分で決めないで人任せとか………まあ、こうなったのは言い出しっぺの私のせいなので良いですけど」


 そうだよ、そうだったよ! 言い出しっぺは絵茶さんなんだよ。言い出しっぺが決めてもらわないと、


「言い出しっぺが決めてもらわないとって思ってます、今?」


 ………ゴクリ。


「い、いいや。思ってないよ」


「声が震えてるように聞こえるんですけど」


「ふ、震えて、ないよ。絵茶さんは、な、な、何を言って、るんだ。あ、あはははははは」


 誰がどう聞いても震えている。自分でも喋ってて、震えてるって思ったもん。


「はあ、目標か。………あと2人いれば、4人1回も吊られずに脱出耐久出来るんですけどね」


 あと、2人か。


 いつもなら、聡太さんと#佐々木__サキサキ__#さんを呼び出すのだが、


「聡太さんは他の配信者さんと旅行に出かけて、帰ってくるのが明日」


 俺と聡太さんのLINEのやり取りを確認し、呟く。


「サキちゃんは、今コラボ配信してるから呼び出せない」


 通話アプリ越しから、#佐々木__サキサキ__#さんの声が聞こえてくる。多分、絵茶さんがスマホか何かで#佐々木__サキサキ__#さんの配信をつけているのだろう。


「うーん、あと2人………いや、どうだろうな。行けるかな、あの2人は」


「どの2人のこと言ってます?」


「えっ、決まってるじゃん」


 俺は頭の中に浮かんだ名前をあげる。すると、


「ああああああああ! いいんじゃないですか!」


 絵茶さんも盲点だったらしく、名前をあげた途端、音割れするほどの声を上げた。


「じゃあ、片方は俺が連絡するんで、もう片方はお願いしてもいいですか?」


「はい! この人は1度連絡取ったことがあるんで任せてください」


 確かに絵茶さんはもう1人の方とは1度連絡をとっている。ダメージ勝負の時に。


「耐久配信だって言わないといけないんで、そこのところをちゃんと伝えてください」


 俺らの配信の内容が耐久なので、その旨を伝え、それでもOKなのか、どうなのか聞く。

 

 文面は、


『どうも、お疲れ様です。滝です。今から耐久配信でDbDをやるんですが、一緒にどうですか? もちろん、断ってもらっても構いません。もし一緒にやっていただけるのなら、有り難いです』


 これで送信っと。


 あとは待つだけ。


「連絡送りました! あとは返信を待つだけですね」


 絵茶さんの方も送ったらしく、本当にあとは待つだけ。


 耐久配信まで、あと20分。それまでに連絡が来てくれればいいんだが。


 ………


 ……


 …


 待つこと10分。


 ピロリン!


 絵茶さんと世間話していると、返信が返ってくる。


 内容は、ふぬふぬ。


「絵茶さん、片方はOKだそうです!」


「こっちも返信来ました。全然OKだそうです!」


 2人してOKならば、耐久配信はできる。


「「じゃあ、準備しますか!」」


 俺と絵茶さんは2人を迎えるべく準備をしとく。


 配信まで8分。


 ああ、耐久配信、楽しみだな。

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