生配信16 まさかの展開

「はい、どうも。今日もゲーム配信、配信者はお馴染みTakiチャンネルの」


 いつも見ているリスナーさん達からしたら、耳にタコが出来るほど聞かされた挨拶をするはずが、


「はい、こんにちは! 絵茶でーす」


 絵茶さんによって妨害される。


「………ちょっと待って? え?」


「………」


「絵茶さん? 先に挨拶してるんだけど?」


「滝さん? おーい、聞こえてる?」


「聞こえてるけど、えっ、なになに?」


 会話が噛み合わない。っていうか、こっちの声が絵茶さんに届いてない。


 えっ、何で? 


 原因が不明で少しパニくる。さっきまでは普通に声届いてたのに。


 頭に#はてな__・__#が浮かんでいると、コメント欄から指摘を受ける。


『ミュートにしてね?』

『ミュートにしてるよ』

『これ始まってんの?』

『声が無いんだけど!』


 どうやら、配信にも声が乗っていないようだ。


 いや、んな馬鹿な! マイクは刺さってるし、設定でもミュートになってないぞ!


 声がどこにも届いてない原因を探る。


 周囲の機械の状態。設定の確認。配信サイトの設定などなど。


 探ってみたは良いが、どこも異常がない。昨日の配信と同じ設定で、今も配信をしている。


「はああ? もしかしてPCが壊れたとか?」


 マジかよ。もしそうだったとしたら、今日の配信は全て出来ないし、明日の配信できない可能性があるじゃん!


「いや、マジで最悪なんだけど。マジで音入ってないのかよ」


 俺は自分のスマホから、自身の配信に飛ぶ。


 すると、


「「ああああああああああ、あ! えっ? 普通に音入ってんじゃん! ミュートじゃ無いじゃん!」」


 俺のスマホから、配信で喋った言葉が聞こえる。


「「えっ? なになに? ミュートじゃ無いじゃん。普通に聞こえるじゃん」」


 うるさ、スマホの声。


 スマホの電源ボタンを押し、スマホの電源と配信を切る。


『ミュートじゃ無いよ』

『さっきから全部聞こえるよ』

『騙されたな!』

『おもろすぎ』


 ああ、なるほどね。リスナーさん達に騙されたのね。


「いや、マジで焦った。PC壊したかと思った。ってか、悪質すぎない、さっきのコメント。『ミュート』『ミュート』言ってた奴らの名前抑えよう」


 マジで焦った。冷や汗が出るほど焦った。


 配信にはちゃんと声が入っていると。じゃあ、絵茶さんに届いてないのは?


「………っふ」


 絵茶さんの笑い声が聞こえた気がしたんだが。


 少し嫌な予感がし、もう1度スマホを持ち、絵茶さんの配信に飛ぶ。


「「あああ、もしもし、絵茶さん聞こえてますか? って、配信に声入ってるやないかい!」」


「あははははははは! やばい、腹筋痛い。笑いすぎた」


 さては、俺がミュートになっているか確認している間、絵茶さんはミュートにして笑ってたな。


 挨拶を被せたのもワザとで、俺の言葉に反応しなかったのもワザとっと。


「覚えてろよ。仕返しは絶対してやるからな」


 爆笑している絵茶さんに呟く。


「怒んない怒んない。滝さん、許してくださいな」


「嫌でーす! この怒りはいつか返します!」


 リスナーさん達だって俺の挨拶を聞きたかったはずだ。それを邪魔したのだ。リスナーさん達だって怒ってるはず。


『滝、分かっているな』

『滝よ、分かってるな』

『分かってるよ、滝なら』


 ほら見ろ。リスナーさん達もこう言っている。絵茶さんめ、馬鹿な行動をしたな。


『滝、分かってるよな』

『滝、分かってるよね?』

『分かってんだろ?』


 ああ、分かってるって。何度も何度もコメントしなくたって分かってるよ。


『『『許せよ』』』


 だよね。そう言うと思ってた。


「少しは俺の味方してくれない? リスナーさん達さ」


『何で?』

『何で』

『何で?』

『なんでですか』

『なぜに?』


 うん、この配信にコメントしている時点で、俺のリスナーさんなんだよね。絵茶さんの方に行ってないとなると、俺の視点で見たいからいるんでしょ。ならさ、俺の味方になってくれても良いやん。


 そう言いたい! 


 だが、言ったら絶対『じゃあ、絵茶さんのところ行くわ』と、100人単位でごっそり消えていきそう。なので、心の中にしまっておく。


「よし、じゃあ、オープニングトークもした所だし『#DbD__デッドバイデイライト__#』やっていきましょうか」


 このまま行くと、俺が悪者扱いにされる危険性があるので、強制的にゲームを始めていく。


「滝さんが許してくれないんですけど? リスナーさん達も滝さんにお願いしてください!」


『たーき君? 許さないの?』

『滝、男だろ? な? なあ?』

『ちょっと裏で話でもしようや?』

『良いのかい? 本当に許さなくても?』

『道には気をつけな? 分かるだろ、言っていること』


「コメント欄にチンピラが湧いてます! 助けてお巡りさあああああああん」


「さて、滝さんは放って置いて、ゲームを始めますか」


 放って置かないでください。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『DbD』は前回配信でプレイしていたので、どう言うゲームか分かる人が多い。なので、ゲームの説明は省く。


 開始早々、サバイバーとして、絵茶さんとマッチに潜る。マッチが開始するまでロビーで待つ。


「絵茶さんの配信のアーカイブ何個か見たけどさ、キラーばっかやってたよね? サバイバーはあまりやらないの?」


 『DbD』の予習のために、絵茶さんの配信アーカイブを7本ぐらい見たけど、全てがキラーだった。


 過去の配信全てを見たわけではないが、ここ数ヶ月は全てキラーだった。サバイバーとしての絵茶さんの経験はどれくらいのものか聞いてみる。


「そうですね。過去の、1年前の配信とかではサバイバーをちょくちょくやってた気がしたけど、ほとんどキラーですね」


 ほう、やっていたんだ。でも、1年前となると、ブランクはありそうだな。


「でも、まあ、サバイバーは基本隠れて逃げての繰り返しなので、そこまで難しいくはないと思いますよ。個人的な意見ですが」


 ほへー、難しくないと。俺はサバイバーの方が難しい気がするんだけどな。


「キラーの動きの方が難しいの?」


「そうですね、キラーはキラーの能力を把握してないとサバイバーを捕まえることができないので、キラーの方が難しいと思いますよ」


 サバイバーにも、1人1人色々な能力があった気がするけど、それでもキラーの方が難しいんだ。


「慣れれば、サバイバーもキラーも同じ難易度だと思いますけどね」


「それはそうでしょ。どのゲームも慣れればある程度は動けるでしょ」


 どのゲームも時間を掛ければ掛けるほど、上達はする。それはみんな分かっていることだ。


「それはそうなんですけどねぇ。それでもキラーは慣れるまで時間は掛かると思います。個人的な意見ですが」


 そうなんだ。『DbD』上級者の絵茶さんがそう言うなら、そうなのかもしれない。


『DbDは、キラーの方が難しいんだ』

『サバイバーしかやってことがないからキラーは分からない』

『キラーはむずいよ。1人も捕まえられずに終わったことがあるから分かるわ』

『キャラを極めたキラー使いがいた場合は、マジでサバイバー側ムズイ』


 絵茶さんの言葉に、同意や同調するリスナーさん達がいる。


 コメント欄を少し読んでいると、ロビーの待機画面に野良の2人が入ってくる。


「そろそろ始まるのかな?」


「そうですね。キラーもいるし、準備完了ボタンを押せば始まりますよ」


 俺は絵茶さんの言葉通り、準備完了を押す。


 ロビーにいたサバイバー全員が準備完了を押したところで、配信1マッチ目が開始される。


「さて、始まりましたね」


「久々だな、サバイバー! 上手く逃げれるかなぁ?」


「あっ、ちなみに俺のリスナーさん達、絵茶さんのリスナーさん達も聞いて欲しいんだけど、この1マッチ目は絵茶さんのリハビリを兼ねてのプレイとなっています」


「そうだ、説明してなかった」


 忘れちゃダメじゃないですか、絵茶さん。かく言う、俺も今思い出したんだけどね。


「そうなんですよ。私、サバイバー久しぶりで、上手く動けるかちょっと分からないので、1マッチ目はリハビリを兼ねて自由に行動するつもりです。滝さんに教えるのは、2マッチ目からとなります」


 そうそう。今回は絵茶さんに教えを乞う配信ですので、絵茶さんには感覚を取り戻してもらわないと困るんですよね。


 説明が終わると同時に、1マッチ目のマップに全サバイバーが降り立つ。


「ああ、このマップか」


 1マッチ目のマップは、牧場みたいな場所。身長ぐらいある草が生い茂っている畑があり、オンボロの工場みたいな場所もある。


 マップを覚えていない俺では、どこに発電機があるか分からない。ので、


「絵茶さんどこにいますか?」

 

 ひとまず、頼りになりそうな絵茶さんを探す。


「滝さん、こっちこっち!」


 絵茶さんから俺が見えていると言うことは、近くにいるんだな。


「発電機回しているので、音が聞こえる方に来てください!」


 どうやら、絵茶さんの近くには発電機がありようで、それを修理しているらしい。


 確かに、どこかでガシャガシャ鳴っている。こっちだろうか?


 音になる方に歩いていくと、


「滝さん!」


 絵茶さんが確かに発電機を修理していた。


「滝さん、早く回しちゃいましょう」


 絵茶さんの周りには他のサバイバーがおらず、1人で修理をしていた。


「了解です!」


 発電機は1人で修理することは出来るものの、複数人で修理をした方が早く終わらせることができる。なので、絵茶さんの横で修理を開始する。


「これ、修理中にゲージが出るじゃないですか?」


「うん、スキルチェックのことね」


 あのゲージ、スキルチェックっていうのか。


「スキルチェック失敗しても許してくれますか?」


「は? いや、許さないけ」


 バボーン!


 あっやべっ、スキルチェックミスちゃった。

 

「………」


「………」


『ああ!』

『やっちゃった』

『どま』

『草』『草』『草』


 いやぁ難しいね、スキルチェック。あの目印にタイミング良くボタン押すの無理じゃない?


「ちょっと何してんですか、滝さん⁉︎ なんでミスるんですか⁉︎」


「許せ、そして、さらば」


 俺は絵茶さんをその場に残し、退散する。


 ちなみに、このスキルチェックをミスると、キラーにどの位置の発電機が爆発したかがバレるぞ! 


「逃げるなぁあ! って、キラーそこまで来てるじゃないですか!」


 ええ、そうですとも。爆発させちゃった後、くるっと周囲を見回すと、後ろの方からキラーらしきシルエットが………だから逃げた。


 君を囮にしてでも俺は逃げる!


 キラーのシルエットからして、あれはナース服を着たキラーだった。


 まあ、囮はあそこに置いてきたし、ある程度距離は稼げたので、俺のところに来ることはないでしょ。


「さあ、キラーよ。絵茶さんを吊ってしまいなさい」


 ぶははははははは。頑張って逃げるんだな、絵茶さんよ。


 俺は安全のために、さらに距離を稼ぐため走って逃げる。


「くそぉお、あの野郎! 私を囮にしやがって………って、あれ?」


 ナース服のキラーが雄叫びを上げる。


 どうやら、絵茶さんを見つけて喜んでいるみた、


 グサッ。


 い? えっ?


「いったぁあああああああ!」


 えっ! なんで? なんで、俺が追いかけられてんの?

 

 あんだけ距離稼いだはずなのに、なんで俺、ダメージ喰らってんの?


「ぶっ、あははははははは! 私を置いて逃げるからそうなるんですよ! ちなみに、そのキラー『ナース』って言って、瞬間移動みたいな能力があるんですよ」


 へぇ、瞬間移動ね。だから、一瞬で距離詰められたのか。便利な能力。


 って、感心してる場合じゃねぇ!


「なんで、なんで俺を追いかけてんの?」


 絵茶さんがいたのに何で俺なの?


「いやぁ、発電機の側で蹲っていたら、バレませんでしたね。さあ、キラーよ。滝さんを吊ってしまいなさい!」


 このキラー、絵茶さんを見逃しやがった!


「嫌だ! やめてください、痛いのだけは」


 グサッ!


 逃げる俺に2度目の攻撃をするキラー。これで俺は、ダウン状態になる。


 しかも、ダウン状態になった場所が悪く、近くにフックがある。

 

「やめてよぉ。吊るさな」


「吊れ! 吊ってしまえ!」


『やってまえ!』

『絵茶さんを囮にした罰だ!』

『天罰だ!』


 くそ、俺の配信には味方がいない! 


 キラーは容赦なく俺をフックに吊る。


「いったああああああああい!」


「痛くはないでしょ」


 いや、痛い。伝わってくるんだ、あの痛さが。


『マジレスはやめてあげて』

『滝は可哀想な子なの』

『滝はちょっと阿、、、いや何でもない』


 おい、言うならはっきり言いたまえ。阿保だろ、その続きは!


 俺がコメント欄を読んでいると、先程修理していた発電機を絵茶さんが直す。


 発電機の修理が終わると光が着くのだが、絵茶さんの他にもう2つほど発電機に光が灯る。


 どうやら野良さん達が各々修理していたらしく、一気に3つ修理が終わる。


 キェェエエエエエエエエエエ!


 またナースが叫び出し、目の前から消えていく。


「ほう、これが瞬間移動か。このキラーなかなかやりおるわい」


「吊られた奴が、上から物を言ってるよ」


「マジレスはやめて。心にグサってくるから」


 発電機が一気に3つ終わり、キラーは焦っているのか、こっそり近づいていた絵茶さんに気づかない。


「絵茶さんよ、助けてくれても良いのだよ? というか、今しかチャンスはない!」


 助けを乞う俺。しかし、絵茶さんはというと、


「他のサバイバーさんはどうやら上級者のようだ」


 そう呟き、近くにあった発電機を修理し出す。


 ううん。どうやら気づいてないようだね、俺の存在。


「助けるなら今ですよー、絵茶さん!」


「ふんふんふん、ふふん、ふふふん」


「ちょっ、聞いてる、絵茶さん⁉︎ 鼻歌歌ってる場合じゃないよ! 俺死んじゃうよ!」


「………(チラッ)」


 絵茶さんは修理途中の発電機から離れ、俺の方へ寄ってきてくれる。


 流石に見殺しには出来ないようだ。


「ほれ、助けぇい!」


 絵茶さんは吊られている俺を助けるべく、俺を持ち上げ、そして、


「ほい」


 救助を諦める。


「えっ?」


 絵茶さんは俺を持ち上げては、救助を止め、持ち上げては、救助を止める。


 何度も何度も繰り返し繰り返し。


『遊ばれてんじゃんw』

『煽られてんじゃんw』

『助けてくれなくて草』

『死にそうで草』

『キラーがもう1人いるじゃんw』


 笑ってる場合じゃないんですけどね、リスナーさん達。


 どんな意図があって………いや、どんな意図もクソもないな、これは。絵茶さん、絶対楽しんでやってるよ。


 証拠に、ほら。


「てってててて、てってててて、ててて、ててて」


 暢気に鼻歌を歌いながら、俺を虐めてるもん。


「お願い、助けて! ってか、やめい! フックが刺さっては抜け、刺さっては抜けの繰り返しだから、めっちゃ痛いでしょ!」


 これ実際にやられてたら、失神物だよ、激痛付きの。


「何、なんか恨みでもあるわけ? 思い当たる節が」


 1、発電機のミス。


 2、キラーの報告もせず、1人でその場から離脱。


 3、ボイスはキラーに届いていないが、絵茶さんがいる場所を教えようとしていた。


「あるわ。思い当たる節が」


「ですよね、ありますよね? しかも、助けてもらう側なのに、あの上から目線の言い方。………ここで1回死んでみます?」


「嫌だああああああああああああ! じにだぐないいいいいいいいいい!」


「っふ! ゲホ、ゲホ………飲み物飲んでる時に、パッションで押してくるのやめてください!」


 やめてくださいって言われてもね? 飲み物飲んでん知らんし、無理じゃね?


 絵茶さんは「もういいです!」っと言い放ち、俺を救助せず、近くの発電機を修理しに行ってしまった。


「………飲み物吹いて、怒っちゃったのかな?」


『多分』

『吹いちゃったんですね』

『ああ、マイクが』

『飲み物吹いちゃった』

『俺に吹いて欲しかった』

『俺に吹いて欲しかった』


 変態がコメント欄に湧いているが………って2人も湧いてんじゃん! 気色悪いわぁ。


 フックに吊るされ、プランプラン状態の俺。そんな俺は、発電機を修理している絵茶さん眺める。


「あと少しで………終わり!」


 発電機が修理し終わり、終わった後すぐに、俺をフックから降ろしてくれる。


「あざます! この恩は一生返さないでおきます!」


「キラーさん! こいつ、今吊れば即死しますよ!」


「ちょ、やめてもろて。キラーが来たらどうす」


 キェェエエエエエ!


「「きたあああああああああ」」


 フックに吊るされたサバイバーを救助すると、キラー側に情報が行き、すぐ分かるようになっている。


「私が、囮になるんで逃げてください」


 逃げるって言ったってどこに逃げれば。


 そう思っていると、


 ポォオオオオオ。


 音が鳴り、気付けば修理する発電機が0個となっていた。


「じゃあ、あとはゲートを見つけて逃げるだけだ」


 しかも、この『DbD』は優しいことに、指定された数の発電機を修理すると、一瞬だがゲートがどこにあるか強調表示してくれる。


 その強調表示からすると、俺達のいるところからちょっと先にゲートがあった。


「ここは私がヘイトを稼ぐんで、先にゲートを開けて来てください」


「了解!」


 俺は絵茶さんの指示に従い、絵茶さんをその場に残し、走ってゲートまで向かう。


 ゲートまで向かうと、野良さんが既にゲートを開けようとしていた。


「ナイス! やるやん、この野良さん」


『ナイス』

『ナイス』

『ナイス』

『ナイス』


 リスナーさん達も、君のこと褒めてるぞ、野良さん。


 ゲートはすぐさま開き、開いたことを絵茶さんに知らせる。


「絵茶さん、もうゲート開いたから逃げて来ていいですよ!」


「了っ解っです! どうだ、このボケ! ザマぁあみろ、板に当たって痛いねぇ!」


 ここでやっと絵茶さんらしい、ブラック絵茶さんが出てくる。


「よし、じゃあ逃げますよ!」


 絵茶さんの指示に従い、他のサバイバーを待たずにゲートを潜り、見事にクリア。


「いやあ、野良さんが強くて勝てたって感じですね。滝さんは終始足引っ張ってましたけど」


「まあ、それが俺の役目って感じですし? 2マッチ目も多分やらかすでしょう」


『宣言すんなw』

『がんばれ』

『ないふぁい』

『GG』

『GG』


 しょうがないやん、こちとら初心者だもん。足引っ張るのが初心者の仕事だもん!


 それから2マッチ目、3マッチ目と宣言通り、味方の足を引っ張ってしまい、どうすれば足を引っ張らずにプレイ出来るか、絵茶さんに教えてもらう。


 4マッチ目、5マッチ目以降は、教えを生かしながらプレイするも、味方に貢献出来ずに終わって行ってしまった。


 そして、絵茶さんと『DbD』すること3時間。


「いやぁあ、なかなか上達はしませんでしたな。悔しい!」


「そうでもないですよ? いい感じでしたよ?」


 絵茶さんに励ましの言葉をもらうも、至らない点ばかりが見えてしまっていて、本当に悔しい。


 悔しいが、そろそろ配信を閉じる時間になったので、閉じていこうと思う。


「じゃあ、3時間経ちましたのでそろそろ配信を閉じよう」


 と思います。


 これが続くはずだった。しかし、


「ええ、30分休憩を挟み、『DbD』の練習の続きをして行こうと思ってます」


 絵茶さんに再度邪魔され、聞いたことのない予定をぶっ込まれる。


『マジで!』

『練習続けるの?』

『16時以降22時前に配信するの初めてじゃね?』

『よしゃ、見よう』


 見る気満々なリスナーさん達。


 えっ? 俺の知らない間に予定が入っているんだが? 


 えっ? 絵茶さん、そんな話したっけ?


「えっ、絵茶さん?」


「ふふふふっ、練習は長時間続けてこそ練習。逃しませんよ」


 ははぁ、なるほど。この娘、ワザと俺に教えなかったな。


「た・き・さ・ん」


 ふっ、いいだろう! やってやろうじゃないか!


「30分後、また会おう!」


 俺はこの言葉をリスナーさん達に残して、配信を閉じた。


 


 













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