生配信5 サキサキさんとFPS!

「はい、皆さん! 今日一日、私の配信を見て楽しんでいってください。サキサキチャンネルのサキサキです。よろ・しく・ね」


 サキサキさんから始まる配信。昼配信は俺から始まったので、夜配信はサキサキさんに譲った。


「今日はですね、私が最も苦手なジャンルであるFPSをやっていこうと思います」


 この配信の進行はサキサキさんに任せている。なぜって? 昼の配信進行を俺がしたからだ。


『PUBGか』

『サキサキさん、FPS苦手なのか』

『あれ、滝は?』

『そういえば』


 サキサキさんに進行を任せているので、呼ばれるまでは待機。


 今サキサキさんは、プレイするゲームについてとFPSが苦手な理由を述べている。その後に俺を紹介する予定だ。


「という訳で、苦手なFPSを克服するために、今日は先生をお呼びしています。先生どうぞ!」


 よし来た!


『茶番きたw』

『滝だろうどうせ』

『先生草』


 呼ばれたので行ってくる。


「よく来たな、ウジ虫ども! 今日はこの滝教官が「チェンジで」………え、うそ?」


 最後まで言わせてくれないの? 配信前、ちょっと考えてたネタなのに。


『チェンジで』

『チェンジでw』

『チェンジ、早w』


「ええ、私が呼んだ先生は、そんな高圧的な先生ではありません。次の先生どうぞ!」


 このネタは、どうやらお気に召さなかったようだ。滝教官は高圧的でダメと。じゃあ、


「ええ~、きょうは、この滝が「呼んでません」ほへ?」


 おじいちゃん風に挨拶をしようとしたのだが、これもダメだったらしい。


 つうか、ツッコミ早くない?


『チェンジで』

『チェンジで草』

『おじいちゃん!』


「はい次」


「はい、今日はサキサキお姉ちゃんに呼ばれてきました。滝です。よろしくお願いします」


 今度はショタボイスで挨拶を終える。ふざけるのはこれが最後。サキサキさんの「チェンジで」が来たら、いつも通り挨拶するつもりなのだが、


「はい、今日の先生は、少年滝くんに来てもらいました。ちゃんと挨拶できて偉いね」


 あれ? 「チェンジで」が来ない。


「うんとね、サキサキお姉ちゃんのために今日は頑張るね」


「よろしくね、滝くん」


 ちょっとノリで乗ってみたは良いが、まだ「チェンジで」が来ない。


 そろそろキツくなってきたのだが。何がキツいって恥ずかしすぎて心が持たん。


『ショタ滝w』

『いつもの滝に戻れ』

『ショタ滝よき!』

『キッツ』


 キツイのは俺が1番分かっとるわ!


「あ、あのう、サキサキさん? チェンジで、ってくれないといつも通りの」


「あれ? 呼んでない人の声が聞こえる? 少年滝くんはどこに行ったの? 滝くん、滝くーん!」


 こ、こいつ。悪ノリしてやがる⁉︎


 たちが悪りぃ。俺このまま、この配信突っ走らなきゃいけないの?


「少年滝くんがいなくなっちゃったよ」


 上等だ。突っ走ってやるよ!


 俺は覚悟を決め、猫撫で声でサキサキさんを呼ぶ。


「お、お姉ちゃん? 僕はここだよ」


「もう、滝くん! 1人でどっか行っちゃダメでしょ? めっ、だよ」


 覚悟を決めたは良いが、ちょっと腹が立ってきた。


「ごめんなさい。許してください」


『キッツ』

『きっしょ』

『やっば』


「キッツ、きっしょ、やっば。うん、リスナーさん、名前覚えたからな」


『サキサキさん、変な人いる』

『サキサキさん、こいつ怖い』

『滝ショタ、やばいぞ』


 残念でした! サキサキさんはこのコメント欄見れません!


「誰の名前を覚えたのかな、滝くん?」


「んん? なんか聞こえた、サキサキお姉ちゃん?」


「え、今なんか「それよりも『PUBG』そろそろやろう?」……うん。そうだね」


 そう言い、俺は待機画面から『PUBG』の画面を出す。


「ええっと確か、フレンドを呼び出せば良いんだよね?」


「うん、そうだよ! 早くしてね! このノロマ」


 最後の方は聞こえるか聞こえないかの声で喋る。


「え? 今ノロマって」


 招待が届き、サキサキさんのチームに参加する。


「ええ? ごめんなさい、何言ってるか分からない?」


「そうだよね、滝くんがそんなこと言う訳ないよね。お姉ちゃん変なこと言ってごめんね」


 あっ、なかったことにしてくれるんだ。ショタムーブしてれば何言っても無かったことになるんじゃない?


 俺の思っていることを、どうやらリスナーさん達は察したらしい。


『こいつ誤魔化せばいける、とか思ってそう』

『サキサキさん、こいつ言ってますよ』

『ノロマとか暴言やんw』


 あれれ? 何のことか僕よく分からないや? 


「じゃあ、『PUBG』のデュオをやっていきたいと思います」


 この作品『PUBG』は、フィールド内にある武器や医療品を拾い、拾った物を駆使して、フィールドに存在するプレイヤーを全て倒していく、チーム型バトルロイヤルゲームだ。

 

 チームは2人型と4人型が選べる。今回は2人型を選択し、プレイしていく。


 ロビーへ案内され、ここで作戦会議をする。


「ええっとまずですね」


 ショタボイスはここで終了。んん? 覚悟はどうしたかって?

そんなもん、捨てたわ。いつの話してんの? 今することは基本操作のおさらい。


 まあ、一応、覚えている所から忘れてしまった所まで教えていく。


「ああ、なるほどね。しゃがみはこうやって、伏せるのはこうやるのね」


「そうですそうです」


 目の前でしゃがんだり、伏せたりを何度もするサキサキさん。


「で、武器を違うやつにするには」


「1から5までの数字を押せば出来ると思います」


 今は武器など持っていないため、口頭だけの説明。


 これで今教えられる全ての基本操作は伝えた。


 車の操作方法とか教えなくてはいけないことはあるが、それはフィールドに行ってからだ。


「じゃあ、そろそろ作戦会議しましょう」


 基本操作は教えたので、今度は戦い方を教えていく。


「はーい」


「まずはですね、車がありそうな所に降りるのが良いと俺は思います」


「ええっと」


「車さえ取っちゃえば、行きたいところにすぐいけるし、逃げようと思えば「バン、バンッ!」………スッーー。聞いてます?」


「うん、聞いてるよ! 車があるところに降りればいいんだよね? 車があれば何処にでも行けるから」


「そう「バン、バン、バンッ」………人が喋ってるときは殴らないの!」


 俺が喋っていると、サキサキさんが暴力を振るってくる。


「暴力禁止。ジッとしてなさい」


「はーい」


 俺の言葉通り、目の前でジッとしている。それでなんだっけ、ええっと、ああそうだ。


「車さえあれば逃げれるから。あと建物入る際は「スカッ」サキサキさん?」


「殴ってない。当ててない」


 え? そういうことなの?


『殴ってないぞ』

『当ててない』

『殴ってないぞ』


「うん、殴ってないは嘘だね。殴って当たんなかっただけだよね?」


「ふふふ、間違えちゃった」


『可愛いから許せよ』

『許すよな? (脅迫)』

『可愛いいいいいい』


 確かに、不覚にも可愛いと思ってしまった。「ちゃった」はズルい、可愛い。


「ええ、リスナーさん達が『可愛いから許せよ』と言うので許します」


「何目線で言っとんじゃあああ」


 俺をサンドバッグと勘違いしているのかな? 


 棒立ちの俺目掛けて、ひたすら殴ってくるサキサキさん。


『許せよ』

『wwwwwwwwww』

『許してあげなよ』


「食らえ、サキサキ拳奥義百烈拳」


 黙って食らってあげる。だが、あとで覚えとけよ。


 ロビー待機の時間が終わり、俺とサキサキさんを含めた76人が飛行機で、戦場へ向かう。この後、パラシュートで着地しなくてはいけないのだが、ここがこのゲームの鬼門だ。


 パラシュート着地をする際、敵が同じところに着地する可能性がある。もし、敵と同じ場所に着地してしまったら、敵よりも先に銃を見つけなくてはいけない。死なないために。


 だから、パラシュート着地は重要。


 さて、何処に降りますか?


「サキサキさん、何処らへんで降りたいとか」


「ダーイブ!」


「サキサキさん⁉︎」


 飛行機から1人で降りていくサキサキさん。


「ん? 何?」


 どんどん降下していく。


「いや、何でもないです」


 何処へ降りるか聞くのを諦め、俺もサキサキさんの後を追う。


『ダーイブ』

『ダーイブ』

『ダーイブ』


 ダーイブ、ちゃうねん!

 

 幸いにも、この時点で降りて行った人はいなく、少し安心。


 2人共無事に降下することができ、お互い別々の建物を探る。


「アイテムを探すにあたって、気を付けて欲しいことがあります」


「うん」


「外の音に注意しながら、建物内を物色してください」


 外の音とは、車の音や足音のこと。物色に集中していると、敵に奇襲されたり、攻撃を受けたりする。


 外の音に気を使っていれば、攻撃を未然に防ぐことができる。


「了解。外の音を聞いながら物色していればいいのね」


「そうです」


 相槌をうち、建物内を物色する。


 武器はライフル銃が1丁に火炎瓶が3つ。あとは鞄が2個か。おお! 包帯に医療用キットがある! 


 この建物は少しアイテムが少ない。鞄1つはサキサキさんに渡そう。


「サキサキさん、そっちは何かありました?」


「うん! 結構色々ある。スコープに弾が沢山!」


 どうやらサキサキさんの場所は、アイテムが豊富らしい。


「鞄こっちにあるんで、拾ってください。あと、銃何か拾いました?」


「うん、一応。普通のライフル系統の銃。これってスコープつけた方がいい?」


「つけた方がいいですね」


 俺は別の建物を漁りに行く。


 次の建物には、ガソリンや手榴弾。弾やスモークなどがあった。防弾ベストは1つしかなく、その代わりにヘルメットが2つ。


「サキサキさん、防弾ベストがあるのでこっちきてください」


「了解でーす。先にバック拾ってから行く!」


 外を警戒しながら、サキサキさんを待つ。


 数秒しないうちに、今俺がいる建物にサキサキさんが入ってくる。


「ああ、これね。あとヘルメットもあるじゃん! これも貰っていい?」


「はい、どうぞ。サキサキさんがいた建物にまだ弾とかありますか?」


「あるよ!」


 彼女がベストとヘルメットを装着している間に、俺は弾を拾いに行く。


 現時点では順調。


 俺達は近くにある建物を全て漁り、次の場所に向かう。徒歩ではなく、車で。


「良かったですね、近くに車があって。で、サキサキさんは何をしているんですか?」


 運転席に座る俺。しかし、サキサキさんが車に乗り込んでこない。何をしているのか聞いてみると、「私が運転したい」とのこと。


 車の運転の仕方を軽く教え、俺は運転席を彼女に譲り、助手席に移る。


「出発、進行!」


 ノリノリで運転を始めるサキサキさんだったが、


「ちょ、ちょっと、サキサキさん! 行きたいのはそこじゃない! あああああ、木にぶつかる!」


 暴走機関車のように、あっち全速力。こっちにアクセルベタ踏み。と適当な運転をし、1人で「きゃあははあ」と笑っている。


『あぶな!w』

『俺この人の車乗りたくない』

『運転下手』


 コメント欄ではサキサキさんの運転について批判している。


「サキサキさんって免許持ってるんですか?」


「一応ね。1発で合格よ!」


「………嘘だ」


『絶対嘘』

『無免許だろ」

『免許持ちの方が危ない』


「コメント欄でも嘘だって言ってますよ」


「ひっど! これでもちゃんと持ってんですけど!」


 この運転では嘘と言われても仕方ないんじゃないか?


 荒い運転を我慢し、次の建物に到着する。


「じゃあ、俺はこっち。サキサキさんはあっちの建物、お願いします」


「了解でーす。ところでさ、滝くんって休日何やってる?」


「ゲームです」


 即答で答える。だってあまり外でないし、やることないし、ゲームしかやってないもん。


「ゲーム以外に何かしないの? もしかしてずっと暇なの?」


「んん? サキサキさんこれ喧嘩売ってます?」


「ふふふふふふふ、違うよ! 喧嘩売ってないよ、興味があっただけ」


 ずっと暇なの、は酷すぎるでしょ。確かに、休日はゲームしかしてない。でも、これは配信のためにゲームをしているだけで、暇だからゲームをし続けているわけではない。


『でも、暇でしょ?』

『やることはゲームしかない』

『本当は?』


「なにリスナーさん達? 『本当は?』って? 聞きたいの、暇か暇じゃないか? じゃあ、教えてあげるよ!」


『おお!』

『暇なんだろ』

『わかってるよ』

「ドルルルル、ドドン」


 雑なドラムロール。いらんってサキサキさん。


「ええ、そうですよ! 暇すぎて暇すぎてゲームしてますよ。だってやること何もないんだもん」


『彼女なしか』

『かわいそうに』

『DTかw』


「彼女いねぇよ。だ、誰がDTじゃ!」


 俺の答えに、向かいの建物を漁ってるサキサキさんが「くくくっ」と声を殺して笑っている。


 聞こえてんぞ、コラ!


 照準を合わせて、「ドンッ」と1発。


 ガシャン、と窓ガラスが割れ、1人の頭を撃ち抜く。

 

「きゃあああ、撃たれた! 敵、敵がいる。助けて滝さん! 死にそう!」


『敵がいるな』

『味方だといつ思ってた?』

『敵は滝さん』


 そうだよね、リスナーさん。いつから味方だと思ってた。

 

 敵だと勘違いしているサキサキさんに、俺は乗っかり、しらばっくれる。


「マジですか? 敵見当たらないんですけど」


「いや、私撃たれてました。起き上がらせてください」


 仕方ない。助けてあげますか、痛みから。


 俺は今いる建物からサキサキさんのいる建物に向かう。


 蹲っているサキサキさんを見つけ、近くにガソリンを置く。


「あ、あの。今リスナーさんから聞いてんですけど、私を撃ったの滝さんですか?」


 どうやら余計なことを言ったリスナーさんがいるらしい。


 俺はサキサキさんの質問に答えず、銃口をサキサキさんの近くに置いたガソリンに向ける。


「大丈夫、大丈夫。痛みなんかすぐになくなりますから。一緒に行きましょう、サキサキさん」


 俺もサキサキさんの近くに駆け寄り、ガソリン目掛けて発砲。


 ドドドドドド、バァン!


 ガソリンが爆発し、俺とサキサキさんは吹っ飛ばされ、死亡する。


「きゃああああああああ!」

「あはははははは!」


 死んだことに悲鳴を上げるサキサキさんに、高笑いする俺。


 画面には仲間をキルしないような注意文が出てくる。


「俺に喧嘩を売り、笑った罰じゃい!」


『喧嘩を売った代償が死w』

『一緒に死んでワロた』

『wwwwwwwwww』

『草』『草』『草』


 コメント欄でも面白かったようで『草』の1文字がずらっと並ぶ。


「あはははははは」


 ホームに戻り、高笑いする俺。


「きゃああああ、だって!」


「サイコパスめ! この鬼畜外道め!」


「あ、あれ? 喧嘩売ってます?」


「売ってないです。だから殺さないでください」


「ですよね。売ってなんかないですよね」


『サイコめ』

『さすが滝』

『やめたれw』


 サキサキさんのせいで、リスナーさん達にサイコパス呼ばわりされている。


 まあ、やってることがやってることだから仕方ないか。


「じゃあ、次行きますか」


 マッチングをし、ロビーへ向かう。


 先程はロビーで沢山殴られたが、今はかなり大人しい。


「そうだ、サキサキさん。さっきは俺の休日について聞いてきたじゃないですか」


「うん」


「サキサキさんは休日何しているんですか」


 ロビーで落ち合い、サキサキさんの前に立つ。


「休日は服を買いに行ったり、あと友達と遊びに「バン」きゃあああ。殴った、滝さんが殴った!」


「操作ミスです、操作ミス。で、友達とどこに遊びに行くんですか?」


「操作ミス? ありえな。ってか、殴っといてよくすぐに話戻せますね?」


 だって、操作ミスだから仕方ないじゃないか。ミスはミスですよ。


「まあいいです。で、友達とはデパートとかカラオケとか行きます。服みたり、ランチしたり、歌ったり」


『どんな歌、歌うの?』

『何聞くの?』

『女友達?』


 どうやらリスナーさん達は、サキサキさんに質問があるようだ。


 代弁者になって差し上げよう。


「第1回サキサキさんに聞いちゃおう、を開催します。リスナーさんからの質問。『どんな歌を歌うの? またどんな曲を聞くの?』だそうです。これはカラオケについての質問ですね。サキサキさん、これは答えられるでしょうか? 答えたくなかったらお答えしなくてもいいです」


 ロビー待機のいい暇つぶしになる。もちろん、サキサキさんが嫌なら、


「そうですね。この質問には、答えましょう!」


 止めるのだが、彼女はノリノリで答える。


「私が歌う歌はアニソンが多いですね。しかも女性アーティストの曲。聞く曲も歌う歌とあまり変わりません」


「アニソンですか。アニメはよく見るんですかね?」


「見ますね。好きなアニメはBlu-rayまで買います」


「そうですか。では、次はサキサキさんのコメント欄から質問を1つ拾って答えてください」


 交互にやらなくては不平等だ。リスナーさん達の質問権利は平等ではないと。


「はい、じゃあ、『サキサキさんは、どんな石鹸を使ってますか?』ですね。石鹸って石鹸ですか?」


 それ以外に何がある?


「え? 石鹸ってもしかして知らない? 手洗ったり、体洗ったりするやつ」


「知ってますよ! そうじゃなくて、石鹸っていろいろあるじゃないですか。シャンプーやリンス。ボディーソープにハンドソープとか」


 なるほど、言われてみればそうかも。質問者が悪いなこれは。でも、まあ、


「全部教えちゃえば? いっそのこと」


「………そうですね! じゃあ、教えちゃいます」


 そのあと彼女の言ったシャンプー、リンス、ボディーソープは呪文のような名前をしていて、1つも頭に入ってこなかった。ハンドソープは一般家庭が使うようなものを使用していた。


「じゃあ、次はと言いたいところですが、試合が始まりましたので、一旦終わりにします。次の質問は」


「私ではなく、滝さんに聞きたいことを、ロビーの待機中に送ってください」


「だそうです」


 サキサキさんの横槍から標的が俺に変わる。リスナーさん達、サキサキさんには手加減するのに、俺には一切手加減してくれないもんな。


 今だって、「次のロビーの待機中に送れ」ってサキサキさんが言ったのにも関わらず、すぐに送ってきたリスナーさん達がいるからね。


『滝の彼女歴』

『童・貞歴』

『1番の黒歴史』


 このように、悪意しかない質問だらけ。


 はあ、やだやだ。俺が答えられないと思っているリスナーさん達がいることに嫌気が差す。


 滝の彼女歴=俺の年齢! ではなく、大学時代に、付き合っていた彼女はいた。過去形である。


 童貞歴は、大学時代にやることはやっているので、これも残念。


 黒歴史は、中学2年生のとき中二病を発症。完治まで2年ぐらいまでかかった。


 ふっ、答えられるわ! 雑魚質問どもめ!


 そんなことを思っていると、ゲームが始まり、1人で飛行機から降りて行った奴がいる。


「ダーイブ!」


「おい、ちょっと待て! 先に行かないでくださいよ!」


 どんどん降下していき、サキサキさんの後についていく。


 彼女は一応目星をつけて降下しているようで、パラシュートを開き、無事に建物の屋上に着地。


「あのですね、サキサキさん? 1人でどこかいくのはやめて」


 俺の言葉を聞いていないのか、1人でそそくさと建物の中に入っていく。


「サキサキさん? 1人でどこかいくなって言ってるんですよ?」


 声自体は聞こえているのだから、アプリ越しに説教する。


「………束縛? ヘラってんの? こっわ」


「………やっちゃおう」


「きゃああああああ、束縛ヘラ男がまた殺しにくる!」


 俺も建物の中に入り、銃を探す。


 あっ、みっけた。ショットガン。


 さあ、ハンティングの始まりだ。


「サッキサッキさん、遊びま「ガシャん!」」


 この音は聞き覚えがある。確か火炎瓶!


 投げてきた方向を向くと、サキサキさんが火炎瓶を片手に持って立っていた。


「あはははははは、いつから狩る側だと思った! 今のお前は「バンッ!」きゃあああああ、くらえ!」


 俺は撃つと、火炎瓶が1つ飛んでくる。


「ちょ、火炎瓶はエグい。死ぬ、これは死ぬ」


「火っていいですよね? 浄化してくれそうで」


「んん? 何を浄化してくれるのかな?」


「滝さんの汚い心」


「ふっ、汚い心って! 酷すぎませんか?」


 言葉が酷すぎて、不覚にも笑ってしまった。


「浄化だ! 汚い心を浄化だ!」


 3つ目投下。火炎瓶3つは流石に耐えられない。


 俺はこうして死んでーーー逝く前にショットガンでサキサキさんの頭を撃ち抜く。

 

 またしても2人死亡。


 この光景に、俺達は笑ってしまう。


「また2人死亡ですよ、滝さん!」


「殺される前に道連れ」


「酷すぎます! 私に殺されてくださいよ」


「無理!」


「そんなぁあああああ」


 さて、配信の撮れ高は撮れたと思うので、この後の試合から本気を出す。


 教えながら、本気でプレイしているとリスナーさん達から『動画のギャップが凄すぎて草』『最初の茶番いらなかったんじゃ?』なんて送られてくる。


 いやいや、面白ければ何でもいい。それが配信ですから。


 配信が終わる頃には、サキサキさんは敵を16人キルし、FPSを克服した………と思う。


 そして今日も、そろそろ締めるの時間になる。


「はい、今日はご視聴ありがとうございました。この配信が面白いと思った方は、チャンネル登録をよろしくお願いします」


 先にサキサキさんが締め、次に俺。


「はい、今日も夜の配信をご視聴いただきありがとうございます。この配信が面白いと思った方は、チャンネル登録と評価をよろしくお願いします。アーカイブは残しておくつもりです」


『お疲れ様』

『おもろかった!』

『コラボ良かった』


 リスナーさん達から、コメント欄に感想が送られてくる。ほとんどが『楽しかった』『面白かった』と楽しんで貰えたようで、配信者として嬉しい。少数派の意見はあまり気にしないことにしているので、見るだけ見てみる。あとで。


 さて、そろそろ終わりにしますか。


「「では、また明日」」


 こうして、一日サキサキさんコラボは幕を閉じた。

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