生配信4 欠伸

「夜配信まで時間ありますね」


「そうですね。どうしますか」


 昼配信が無事に終わり、現在16時20分。次の配信まで約6時間ある。


 打ち合わせしようにも、時間が足らない。


 6時間あるじゃないかって? 


 それは、夜飯や風呂の時間を計算に入れてないだろうか。夜飯や風呂の時間を抜くと4時間あるか、ないかだ。


 4時間じゃあ俺と佐々木さんの打ち合わせは終わらない。


 前回の打ち合わせだって、細かい所まで詰めて5時間ぐらい掛かった。

 

 細かい所まで気になる2人なのだ。終わるわけがない。


 ………嘘です、ごめんなさい。多分やったらすぐ終わります、はい。


 やらない理由? ただ単に面倒くさいからです。


 なんて1人で、心の中で遊んでいると、


「きくん、たきくん、滝くん!」


 佐々木さんの声で我に帰る。


「あっ、すみません。で、何の話してましたっけ?」


「もう! だからスマホで話さない? このまま話していても良いけど、スマホの方が動けるしさ」


 確かに。ずっとPCの前にいるわけもいかないしな。


 佐々木さんの提案を受け入れ、通話アプリを切り、スマホで通話をする。


「ところで、佐々木さんって前回『PUBG』やったのはいつですか?」


「うんとね、1ヶ月ぐらい前かな」


 結構期間が空いている。これは操作方法忘れているのでは?


「ちなみに操作方法の方は?」


 教えるにあたって、佐々木さんの状態を知っておかねばならないので、聞いてみる。


「所々覚えている感じかな? 例えば、方向キーにカメラ操作キー。撃ち方、スコープの覗き方、物の拾い方は覚えてる。でも、銃の変え方や回復方法、しゃがみ方なんかは忘れてる」


 うむ、結構重要なことを忘れてる。


「了解しました。じゃあ、現時点で聞きたいこととかありますか?」


「そうですね。聞きたいことは色々あるんですけど、配信の時の方が良いんじゃないですか?」


「ああ、そっちの方が良いかもしれないですね」


 夜配信の内容は、佐々木さんに『PUBG』を教える、だ。


 その内容をここで教えては、配信をやる意味がないかも。


 夜配信の時間までまだまだある。この時間どうしようか?


 お互いに時間の潰し方を考えていると、「ふああ」と欠伸が聞こえる。


「ふふふっ」


「ああ、笑いましたね!」


 唐突な欠伸に笑う俺。まあ生理現象だから仕方がない。仕方がないのだが、「ふああ」の欠伸は笑う。


「出ちゃったんだから仕方ないじゃん」


 ちょっと不貞腐れちゃった佐々木さんに、フォローを入れる。


「いや、可愛いなって思って笑っちゃったんですよ」


「………本当ですか?」


「本当です。女性特有の可愛らしい欠伸でしたよ」


「………」


「佐々木さん?」


「………」


 返事が返ってこなくなった。

 

 どうやらフォローは失敗に終わったようだ。素直に謝ろう。


「笑ってすみません」


 そんな重大な事ではないから許してくれるだろう。


「………ま、まあ、その、私の欠伸を聞いた人は滝くんが初めてだし、私の欠伸を、その、あの、ね? か、可愛いって言ってくれたから、あと謝ってくれたから、許してはあげる」


 許してくれたみたい。あとフォローは成功だったみたい。


 こう言ってはなんだが、チョロいな。うん。また何かあったらこのフォローして許してもらおう。


 それからは他わいもない話をして、話し中に今度は俺が欠伸をする。お互いに少し寝ようと電話を切り、俺はベッドに寝転んだ。


 タイマーをかけ、目を瞑る。


 あとは睡魔に身を任せ、微睡む。

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