生配信3 ワンダウン

「はい、どうも。今日もゲーム配信! 配信者はお馴染みTakiチャンネルの滝です。早速ですが、今日プレイして行くゲームを紹介していこうと思います」


 いつも通り、23時配信を自宅から開始する。


 昨日ぶりの機材たち。調子は絶好調のようで、リスナーさん達からの苦情は今のところ届いてない。


「ええ、今日のゲームは『レインボーシックス シージ』です。シージは久々の配信になるのかな?」


『1週間前』

『1週間前』

『1週間前だった気が』


「1週間前か。ちょっと鈍ってるかもしれないな」


 FPSはプレイしていないと腕が鈍る。これは自論だ。

 上手い人はそうでもないかもしれないが、俺は結構鈍る。2日プレイしなければ人の気配が読めなくなり、4日なら照準がブレる。1週間なら照準が定まらず、敵を倒すことができない。


 分かっていたのにFPSをやらなかったのは、俺の怠慢だ。


「最近、色々なゲームに手をつけ過ぎて、やる機会がなかったからな。もしかしたら、下手になってるかも」


『大丈夫大丈夫』

『1週間は長いね』

『試合勘を取り戻そう』


 コメント欄には励ましの言葉と応援の言葉が、ずらっと流れる。


 中には『やってみないと分からない』といった意見もあり、確かにそうだ、と少し勇気を貰う。


 プレイしてみて悪ければ、素直にリスナーに謝ろう。


 そう思いながら、試合を始める。


 シージはオンラインで人を集め、10人集まったら試合が開始される。マッチングするまで、少し時間があるので、リスナーさん達とお喋り。


「聞いてくださいよ、皆さん。昨日のコラボ配信の後、聡太さんとマリオ続けてたら、結構良いところまで進んじゃって。どこまで進んじゃったかというと、後5ステージぐらいで、全クリ」


『結構やったね』

『あれからどれくらいやったの?』

『ルイージ、倒した?』


「あれから2時間ぐらいかな? なんか、マリオ楽しくなっちゃって、お互い協力し合って、最後の面まで行っちゃったんですよ。だからルイージは倒してません」


『最後の方、マリオの残機0になってたな』

『聡太さんの亀、強い』

『ルイージ強かった』


「確かに聡太さん強すぎ」


 リスナーさん達とお喋りしていると、マッチングが終わる。

 シージにはキャラクターがいて、そのキャラクターを操作して戦う。

 攻撃側、防衛側で使えるキャラが違い、自分の好みに合ったキャラを選ぶ。

 もちろん、俺にもお気に入りのキャラクターがいる。攻撃側はハンマーを持ったやつ。防衛側は毒ガスを使うやつだ。


 俺はリスナーさん達と話しながら、攻撃側のキャラクターを選ぶ。


「それで、マリオなんだけど。次、もしも聡太さんとコラボがあっても、マリオはやりません。こっちの勝手なんですけど、先を知ってるマリオやっても、すぐにクリアできちゃうので。すみませんが、よろしくお願いします」


『了解』

『把握』

『仕方ない』


 優しいリスナーさん達でよかった。と内心、ほっとする。


 攻撃側、俺を含めた5人がキャラ選択を終え、やっとシージができる。

 ちなみに、俺のキャラはお気にのキャラだ。


「よおし、頑張るかな」


 まずは、索敵。ドローンを使って建物に潜んでる敵を探し出す。


「ここの建物は、確か」


 頭の中にある地図を広げ、ドローンを建物に潜入させる。


「案外、この建物の見取り図は覚えて『パン!』え?」


 銃声が聞こえた。

 ドローンを潜入させて、5秒も満たないうちに壊される。


「え? え?」


『草』

『壊されたw』

『wwwww』


 一瞬の出来事すぎて、理解に時間がかかる。もう壊されたの!


「マジかよ! 人いた?」


『わからない』

『一瞬過ぎてわからんw』

『どこから撃たれた?w』


「本当どこから? 上? 横? マジで、分からん」


 ドローンの索敵時間が終わり、動き始める。


「俺のドローン壊したやつには、報いを受けさせてやる。誰じゃ、出てこい!」


 走り出し、板で補強された窓をハンマーで壊す。


 よし、開いたぁ!


 大胆かつ堂々と潜入する。5人全員が建物の中に入ったのを確認し、仲間の2人がドローンを操作。敵を見つけに行く。


 俺を含めた3人は周囲を警戒。そして敵が潜んでないか確認する。


「ふう、久々だから緊張してきた。でも、仲間がいいね。すごく動きやすい。足引っ張んないように気をつけないと」


 俺ともう1人が一緒に行動し、隣にある部屋を見に行く。もう1人は待機で、ドローン操作している奴らを守ってもらう。


 仲間が先行し、俺が周りを見る。


 ドローン組はまだ敵を見つけることができていないらしい。


 もしかしたら、1階ではなく、2階にいるのでは?


 そう思ったのは俺だけでなく、一緒にいる仲間も。

 仲間はすぐさま行動に移った。天井に粘着爆弾を貼り付け、爆発範囲外まで離れると、ボン! 音が鳴り、天井に穴が開く。


 開いた天井の穴から見えたものは、1人の敵。俺たちが気づいた事に敵も気付く。


 逃げようとする敵に、俺たち2人は発砲する。フルオート(弾倉にある弾を連続で打つことができる)の銃で、しかも2丁で撃てば、弾数は半端なく多い。


 敵の1人が俺の銃弾に当たり、ダウン。キルログに名前が載る。


「おっしゃ! ワンダウン、ワンダウン」


『ワンダウン』

『倒したぁあ』

『ワンダウン』

『ワンダウン』


 喜んでるのも束の間、天井から弾丸の雨が降ってくる。弾数は俺たちが撃ったよりも多く、多分3、4人で俺たちを撃っている。


 相手もおそらくフルオート。そのフルオートで撃って、しかも俺たちのいるところがバレているのなら、生き残れる確率は少ない。いや、0だ。


 急いで逃げようとするも、弾丸が俺の脳天を直撃。もう1人も銃弾を浴びて、俺同様退場する。


 退場したプレイヤーは仲間の行動を見ることができ、どうやら、ドローン組は俺たちが撃たれている間に2階に上がったようだ。


 残った3人が敵を1人、また1人と始末していく。


「おお、これ勝てるんじゃない?」


 相手2人に、こちら側3人。数的には優勢だ。


『分からないよ』

『まだ2人残ってる』

『数は優勢かもな』


 コメントを読み、「そうだよな」と呟く。


「数は優勢。でも、相手の方が上手ければ、すぐ形成逆転。もしくは負け、だもんな」


 FPSでは、相手が1人になったとしても油断は禁物。1人で相手5人を倒すプレイヤーがこの世の中にいるのだ。

 最後の1人まで油断してはいけない。

 最初から最後まで、全力でやらなければすぐ撃たれてしまう。

 

 俺の言葉が原因なのか、フラグを立ててしまったからなのか、敵の逆襲が始まる。


 曲がり角で待ち伏せする敵に気付かず進み、撃たれ、1人退場。

 逃げた敵を追い、部屋に入る。入る際、足元を確認しなかったのか爆弾でボン、とまた1人敗退。

 最後の1人は敵2人に撃たれ、呆気なく終わった。


『フラグ回収』

『フラグ折ったな』

『回収おつかれ』


「もしかして、俺がフラグ立てたから負けたのか?」


『そう』

『草』『草』『草』

『違うよー』


「そうだよね、違うよね。……今、『そう』って言った奴覚えたからな。メモしたからな」


 冗談を言いながら、次の試合に行く。今度も攻撃側。


「今度は死なないように頑張るぞ!」


 ドローンを操作して建物の中を見る。目指すは、2階の角部屋。

 ドローンが出せる全速力で階段を駆け上がり、そして角部屋まで行き、敵を見つける。あとは、ドローンを見つからないように物陰に隠せば、オーケイ。


 逃げるようにドローンは動き出す。敵の1人がようやく気づいたようで撃ってくるも、ドローンは素早く動き出し、逃げ、隠れる。


 ドローンの操作時間は終わり、動き始める。


「よっしゃ、行く『パン!』ぜ?」


 後ろから撃たれ、開始早々退場。


「はあ?」


 そう、このシージというゲームは、FFことフレンドリーファイアができるのだ。つまり、仲間を撃って倒すことができる。


 今、そのFFをやられたところだ。


『裏切り者がいた』

『仲間に殺されるとか』

『wwwww』


 ゲームの右下には、チーム内でコミュニケーションが取れるように、コメントを書き込む場所がある。そこを見ると、仲間の1人が、


「gomen gosha !(ごめん、誤射!)」


 と、すぐさま書き込んできた。

 俺を撃った人物は先程一緒に倒された奴。


「嘘だろろろろ! 誤射とか………まあ仕方ない。仕方ないけど」


『即退場』

『返信返してやれ』

『返信。返信』


「はあ、気をつけろっと」


 ローマ字で打ち込む。


 誤射なら仕方ない。葛藤はあるものの、責められない。


 仲間も書き込みを読み、試合が始まる。


「退場して何もすることがないので、リスナーさん話しましょう」


 やることがないので、リスナーさんのコメントを読んでいく。


『指示出さなくていいの』

『やり返す?』

『撃ち抜かれたね』


「指示出しはしません。書き込んだとしても、読めるか分からないしね。復讐は………しません。やったらヤバイでしょ。配信中に」

 

『確かに』

『炎上しそう』

『やったら、叩かれそう』


 やったら、確実に叩かれる。炎上して、登録者数減る。


 絶対やりません。


「それにしても、最後の2人強かったね。角待ちに爆弾配置。あと追い込み! あの2人が鬼門だな」


『他は雑魚と』

『他の人は強くないと』

『2人以外は弱者だと』


「違う違う! 言い方、気をつけて! あの2人の活躍しか見てないから、2人を褒めたのであって、他の人を貶したわけではないから」


 だって、あの2人が仲間3人を倒したのは事実だし、他の2人は仲間3人に倒されてたし。


 いいところなしなのは事実。評価はできない。


 仲間の評価はできるが。


「それにしても、仲間の連携上手いな」


 2手に分かれて行動している。お互いが背中を守るように。


 だが、防衛側の双璧が攻撃側を奇襲する。


 天井の爆破からの銃撃。壁の爆破からの銃撃。


 この2人だけで仲間の進行を妨害する。足が止まった瞬間に、他の3人が迎え撃つ。


 あっという間に4人を倒してしまう。


「わぁお! 強いな。この5人繋がってるんじゃない?」


 繋がっているとは、まあ連絡取りながらプレイしている、という意味だ。


「こんだけ上手い連携は絶対繋がってるでしょ」


『多分ね』

『うん』

『繋がってそう』


 リスナーさん達もそう睨んでいる。


 5人が繋がってるなら、こちらの勝ち目は薄い。だが、穴はある。


 あの双璧があちらのチームの穴だ。俺はそこをつく。


 今度はこちらが防衛。


 防衛側は爆弾を守りきらなくてはならない。守るために壁や窓の補強、罠やカメラの設置をする。あとは自分達が配置について終わり。


 今回も俺はお気に入りのキャラを操作していく。


 試合が開始し、2階にリスポーン。近くの壁と窓を補強する。補強していると、俺の横の壁を誰かが補強し始める。


 別にそこは補強しなくてもいいんじゃね?


 なんて思いながら、次の補強場所を探す。


「補強入りまーす!」


『入りまーす』

『入りまーすw』

『入りました!』


 今度もまた俺の横を、そいつは補強し始めた。


 こいつ、もしかして、


「誤射した奴か?」


 書き込みの名前と表示されている名前を見比べると、まったく同じ。

 俺が行くとこ行くとこ、こいつはついてくる。


「こいつ、本当にどこまでもついてくるつもりか?」


 ちょっと確かめてみる。


 この建物の1階におり、敵のドローンを見つけに行く。見つけに行くということは、こちらも見つかる可能性があるということ。

 

 あっ、みっけ!


「死ねやぁぁぁぁ!」


『ドローンの恨み』

『ドローンの復讐』


 弾3発でドローンを破壊。ついてきた仲間も1機破壊する。


 よくやった、倍返しだ。………ん?


 今、ついてきた仲間を見て思い出す。こいつ、トラバサミ持ってね?


 ならば、作戦の幅は広がる。


 俺はすぐさまトラバサミ君を連れて、補強されてない窓へ行く。


 銃口を向けて指示。ここに置けと。


 置かれたトラバサミの近くに、毒ガスを設置し、近場に潜伏する。


 待つこと数十秒。バチン、と何かが引っ掛かった音がして、俺は毒ガスのスイッチを押す。


 キルログに俺の名前と敵の名前が載る。


「ワンダウン」


『きちゃあああ』

『ワンダウン』

『ワンダウン』


 同じ場所にいても無意味なので、敵が隠れていそうな場所又入ってきそうな場所に向かう。

 

「ん、足音が聞こえるな」


 少し走った先で俺たちとは違う足音が聞こえる。


 俺たちは中腰になり、隠れそうな場所に隠れる。


「まだ足音聞こえるな、近付いてない?」


 ドローンを使い、周囲の安全を確認しに行く。


「んーん、こっち側にいないのなら、ん? ああ、あれか」


 ドローンを物陰に置き、操作をやめる。


「じゃあ、殲滅しに行きますか! 上手い敵さんを」


 ドローンのカメラで確認した敵数は2人。そのうちの1人が双璧の片方。


 あいつから仕留めてやる。

 

 まずは先制攻撃。

 スコープを覗き、相手の身体を撃ち抜く。

 

 相手がこちらを向く前に、トラバサミ君と位置を交換する。これで相手は、勘違い。トラバサミ君が撃ったように見えるだろう。名付けて、


「食らえ、身代わり作戦」


 トラバサミ君はその場で敵さんと応戦。その頃俺は、確実に撃ち殺せるように位置取りをする。


 敵さんは勘違いで、トラバサミ君1人だと思っている。だからか、物陰に隠れながらジリジリと距離を詰めてくる。


 さあ、さあ、さあ、


「こいこいこいこいこい」


 今いる場所から敵は見えないが、ドローンの位置からなら見える。

 あと数歩。あと数歩で。


 ドローンのカメラから自分の視点に戻し、


 バン!


「ツーダウン」


 相手の頭が見え、撃ち抜く。キルログにまた俺の名前が載る。


 双璧の片方敗れたり。


 敵さんもう1人は、トラバサミ君が処理する。


「あと2人、あと2人、あと2人」


『あと2人』

『あと2人』

『あと2人』


 その2人は上でドンパチしてる。あ、仲間の1人が死んだ。


「こちらは俺含め4人、相手は2人。うん、いけるわ」


 試合中はコメントを見ないのだが、この時少しだけ見てしまう。


『試合勘、戻った?』


 ふっ、と鼻で笑ってしまう。多分、マイクが拾っているだろう。


「試合勘戻った? 当たり前のこと言わないでくださいよ。もうバッチリ、戻った」


 俺とトラバサミ君は2階に上がり、挟み撃ちする。

  

 1人がこちらに銃口を向ける前に、撃ち抜く。


「スリーダウン」


 あとは全員で弾がなくなるまで、撃つだけ。あっ、誰かが双璧の1人を倒した。


 まあ、これでこちらが1勝。あと3勝ぐらいすれば勝ちかな。


 コメント欄では『スリーダウン』『スリーダウン』と盛り上がっている。


 試合勘が戻った俺は、今度の攻撃側でも2人を倒す。もちろん、その2人は双璧さんだ。

 双璧さんがいなければ、こちらは確実に勝てる。


 勘を取り戻してから順調に勝ち星を積んでいき、4勝2敗の成績で1試合目を終えた。


 2試合目、3試合目と続けて勝つことができたが、4試合目以降は集中が切れてしまったためだろう、なかなか敵を倒すことができなくなり、仲間頼みの試合になってしまう。


 勝率は5割と、まあまあな結果だろう。


 配信を2時間半行い、いつもより早くゲームを切り上げる。


 もちろん、その訳を話す。


「今日は皆さんに報告があります。そのため少しだけ早く切り上げました」


 コメント欄がざわつく。


『引退?』

『マジ』

『いや結婚かも』


 色々な推測が飛び交う。


「引退ではありませんし、結婚でもありません」


『まあ、結婚はありえないな』

『無理だな』


「結婚はありえない、無理だな、だと⁉︎ はっ! 俺彼女『嘘つくな』って早い早い早い。否定が早いよ! で、報告が続けていい?」


 まあ彼女は嘘だが、結婚はわからない。ありえないはひどいな。

 

「ええ、リスナーさんの皆さんには2つ報告があって、1つは配信数を増やします。昼配信を13時ごろ、夜配信はいつも通り23時からやっていきます」


『13時は見れないかも』

『アーカイブは?』

『配信時間は?』


 来る質問に答えていく。


「13時配信見れない方は多くいると思います。学生の皆さん、会社勤めのリスナーさん。配信した動画は、編集せずに、そのままアーカイブに残しておくので、いつでも見てください。配信時間はあまり決めてません。でもかなり短くなるとかはないです」


『アーカイブ残るのは嬉しい』

『配信数増えるの嬉しい』

『倒れないでくださいね』

『頑張ってください』


「応援ありがとうございます。で、2つ目の報告は」


 明日の昼配信に、と続けて言おうとした時、コメント欄に来るはずもない人が『頑張りましょう!』と激励を送ってくる。


 もちろん、リスナーさん達も気付き、コメント欄が荒れる。


『サキサキさん!』

『サキサキさん⁉︎』

『サキサキさんが来てるよ』

 

「ええ、サキサキさん激励をありがとうございます。で、2つ目の報告は」


『サキサキチャンネル : いえいえ、そんな(照)』


『サキサキさん可愛い』

『配信見てたの?』

『滝さんと友達?』


 リスナーさんの興味は俺からコメント欄のサキサキさんへと移る。


『サキサキチャンネル : いえいえ、リスナーの皆さんの方が私より可愛いですよ』

『サキサキチャンネル : 配信は途中からです。滝さんとは親友ですね(照)』

『サキサキチャンネル : まあ、滝さんがどう思っているかは分かりませんが………チラッ、チラッ』


「人の配信でリスナーさんと会話するのやめてもらっていいですかね。あとコメント欄荒らすのやめてもらってもいいですか?」


 この人、人気あるんだからさ。言動には気をつけてもらいたい。


『サキサキチャンネル : チラッ、チラッ』

『見てるぞ』

『サキサキさん、見てるぞ』

『答えなかったら炎上だぞ!』


「脅すのやめてもらってもいいですかね! あとチラチラ見んな! そうですね、親友ですね」


 今日あったばっかの人を親友っていうのか? まさか、配信を盛り上げてくれるために?


 今日のあの人の会話を思い出す。


 いや、ないな。あの人の素だとおバカさんだもん。


『サキサキチャンネル : 照れ』


「照れんな、照れんな! もういいです、報告を続けます」


 サキサキさんを無視して報告をする。


「明日から昼の配信をしていくつもりです。昼の配信第1回目はコラボ配信の予定で、コラボ相手はなんとサキサキさんです」


『888888』

『パチパチパチ』

『サキサキチャンネル : 88888888888888888888』


「リスナーさん、サキサキさん、拍手ありがとうございます」


 何拍手しとんねん! ってツッコミたい。


「ええ、長くなりましたが、これにて今日の配信を終わりにします。長い間ご視聴ありがとうございました。明日の昼配信並びに夜配信の内容はTwitterにて公開しますので、よろしくお願いします。ああ! あとサキサキさん、後で連絡しますね。説教します。ではおやすみなさい」


 配信後、コメント欄が少し荒れるが俺は知らない。


 タバコを1本取り出して、火をつける。そして、


「もしもし、佐々木さんですか?」

 

 これから長い夜が始まる。

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