生配信2 配信後
配信後、俺たちはお互いの足を引っ張ることをせず、黙々と『マリオ』を進めていた。
「あ、そこ気をつけてくださいね」
「ここ? どこに気をっと! あ、あぶねー。なるほどね」
11時から3時間配信をすると、もう終電はない。帰れないわけではないが「泊まってけよ」と聡太さんが言ってくれたので、ご好意に甘えさせてもらう。
配信中のプレイは演技だったのでは、と思うほど、マリオとルイージが協力し、ステージをクリアしていく。
「配信、どれくらいの人見に来てくれてました?」
「俺んところは、4000ぐらい。お前は」
「1200ぐらいですね。聡太さんに吸われました」
誰かとコラボすると、どちらか1人にリスナーが偏ってしまうことがある。この現象を、吸われると俺は言っている。
「そんなことはないだろ。フォロー差だな」
「フォロー差ですか」
まあ、フォロー約30万人と15万人。どっちの方が視聴率を稼げるかなんて火を見るよりも明らか。
納得したくないが、納得せざるを得ない。
マリオを真剣にやる聡太さんを見て、少し助言をもらうことにする。
「登録者数どうやったら増えますか?」
真面目な質問に、聡太さんの手が止まる。いや、俺も操作を止める。
マリオとルイージがノコノコにやられ、『New スーパーマリオ』自体、少し中断。
俺の一言で空気が変わった。これは真面目な話をするときの空気だ。
「んん、難しい質問だな。登録者数は、見てる人の好みで増えたり減ったりするし、俺だって毎回それで悩んでるし」
聡太さんでも、そこが悩みなのか。
「俺の助言で増えるか分からんけど良い?」
「はい。お願いします」
30万人に届きそうな人の意見だ。参考できるものは参考しよう。
「そうだな。一つは配信数を増やす。増やして、多くの人に見てもらう。お前の場合は、23時配信だけじゃなくて、昼にも配信をする。それだけでも、数十人は増えると思う」
確かに。23時からだと、見る人が限られてくる。昼や夕方なら多くの人に見てもらえるかも。
「あとは、多くの人とコラボ配信をする。これは俺の実体験。いろいろな人の配信にお邪魔することで、その人しか見てないリスナーさんが目をつけてくれる」
実体験か。そんでもってコラボ。でも、コラボするとなると1つ問題が。
「コラボって結構難しくないですか? コラボ相手が俺のことを知らないと、コラボできませんよね?」
知らない人とコラボすると、結構疲れる。というのも、気を使うことが多いからだ。相手に迷惑をかけないように、かつ面白くしなくてはならない。
「まあ、そこは当たって砕けろってやつだな。Twitterで連絡するしかない。俺はそうした」
なるほど。当たって砕けろか。これ二つともできそうだな。
「まあ、頑張れ」
「ありがとうございます」
頭を下げて、感謝の言葉を述べる。
「やめろ、やめろ! さあ、続きやるぞ!」
「はい」
照れているのか耳まで真っ赤。さあ、じゃあやりますか!
それから1時間ぶっ通しでマリオを進める。しかし、この時気づかなかった。
スマホがピコン、ピコンと鳴っていることに。
『夜遅くにすみません。サキサキこと、佐々木美玲です。今日の配信、聡太さん側から見させていただきました。とても面白い配信で、思わず、蒼さんのところにコメントを送ってしまいました』
『もしよろしければ、今の日付から2日後、コラボ配信をしていただけないでしょうか。お暇でなければ別の日でも構いません。ご連絡お待ちしてます』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます