おままごとは遊びじゃないんだ真剣にやれ

「僕のシークレット性癖はー、ずばり『赤ちゃんプレイ』ー!」

「あ〜…」

「うん…」

「フム…」


 小人が暴露したシークレット性癖に、三人は納得しつつも残念そうに声を漏らしました。

 小人は身長がとても低く、外見も幼いまま成人を迎える種族です。その為、成人済みであっても他種族からしたら子供に見える事があるので、そういう性癖の人達にそういう需要があったりするのです。

 小人側も需要に応える為にそういう仕事をしたりそういう関係を持ったりしていて、一部界隈で結構有名な話です。

 しかし、彼が暴露したのはシークレット性癖です。そんな公然の秘密の性癖で済むはずがありません。


「それもー、女性を赤ちゃんにしてー、僕が保護者としてあやすやつー」

「あ~」

「うん」

「フム」


 小人が補足した赤ちゃんプレイの説明に、三人は(そうそうこれこれ)といった感じに合点がいった様に頷きながら納得の声を漏らします。

 折角のシークレット性癖暴露大会なのですから、どうせなら意外な性癖を聞きたいですよね。


「これはねー、普段から色々と頑張りすぎていて気を張り詰めている女性であればある程ー、大人用幼児服を着せておしゃぶりを咥えさせた時が興奮するんだー」


 小人は三人が意表を突かれつつも深く点頭している様子を見て満足そうな笑顔になりながら、『赤ちゃんプレイ』の説明を続けます。


「自分が頑張らないとダメだとかー、他の人は信用出来ないとかー、そうやって他者を寄せ付けないで自分で何でもやってしまう人ってー、本当は後で困るのが嫌だから先に嫌な事を片付けているだけでー、元々面倒くさい事が嫌でずっと楽して甘えていたい人が多いんだよねー。うちの精神鑑定師もそう言ってるー」

「お~、伊達に経営者はしてないな」

「社員ヲ良ク見テイル」

「え、ここ感心する部分か?」


 小人はこう見えても国連のお墨付きの大企業を経営する社長であり、多種多様な人種を何千人もを雇っています。

 何処の会社にもある事ですが、彼の会社は人数が多いのと人種が様々な分、従業員同士の衝突が月に複数件あります。報告の無い細かな物だと毎日の様にあるでしょう。その為、会社の制度でメンタルケア用の職員を雇ったり従業員の気質によって部署を返させたりと、社員の精神状態は常に気を気張っているのです。

 そして、本人も良く学生アルバイトの振りをして現場を見まわったりしており、その時に何人かの女性と事を成してはお金で解決しているそうです。


「そういう人をベッドに寝かせてからー、『もう頑張らなくていいんだよ。君は赤ちゃんなんだから横になっておしゃぶりを咥えているだけでいいんだよ。』って言ってあげてー、『こんなスーツなんかも脱いで動きやすい格好になろうねー』って言って大人用幼児服を着せてあげてー、動こうとしたら『危ないからねんねしようねー』って言ってお腹をぽんぽん叩いてあげたりー、『遊んでほしいのかなー?」って言ってガラガラを鳴らしたりしてあげてー、段々と言葉使いが幼くなっていって最終的に『だぁー』とか『うー』とかしか言わなくなっていく様子がさー、


 シークレット性癖の説明の途中で思い出し興奮をしたのか、小人は最後だけ普段のおちゃらけた様子ではなく、父性を感じる優しい笑みを浮かべて言いました。


「頑張ってる女性は頑張ってる女性で好きなんだけどさ、頑張った分だけちゃんと報われて欲しいんだ。うちは働いた分はちゃんとお金は出すけど、お金だけあっても幸せになるとは限らないじゃん? 寧ろお金を貯める事だけを目標にしちゃって体を壊しちゃう人も居るんだ。だから、僕がそういう女性に『頑張ったね。偉いね』って褒めてあげてさ、張り詰めた糸をぷちんって切ってあげるの」


 人は目標があれば頑張る事が出来ますが、その目標が本人にとって正しい物なのかや、目標を達成したからと言って幸福になれるかというのはというのは別な話です。

 小人は体を壊しながらも頑張る女性を見て、せめて心だけでも癒してあげたいと思ってこうしているのでしょう。しかし、何度も言いますがこれはシークレット性癖の暴露です。この程度は小人の性癖としてまだまだ普通に知れ渡っている範疇です。


「するとさ、数時間前はビッシリした格好でキッチリ仕事していた敏腕女社員がさ、数時間後には幼児服を着て、ベッドに寝転んで、手足をばたばたさせながらおしゃぶりを咥えてあーうー言ってるんだよ。そのギャップが物凄くそそるし、僕がこの女性の芯にヒビを入れたんだって事に凄く興奮する」

「良シ、ヤハリオ前モコノ女ノ仲間ダナ」

「は? 俺は子供居ねえしこんなプレイもしねえぞ」

「そっちじゃなくて支配欲のほうだろ」

「ねー、ちょっとー? 説明中なんだけどー?」


 小人のシークレット性癖が綺麗な話だけで終わりそうに無い事に三人が安堵し、軽口を叩きました。

 小人も先ほどまでの真面目な様子を元のおちゃらけた態度に戻し、説明を下世話な方向へシフトします。


「でー、もちろん女の子の自制心を パキッ と折った後はそのままおしっこを漏らさせたりー、おむつを替えるから脚開いてねーってしたりするんだよねー。その時に恥ずかしがってるようじゃまだまだだからー、そういう時は『お腹の具合が悪いのかなー?』って言って浣腸するー」

「うわ…」


 流石にそっち方面の態勢は無いのか、浣腸と言う言葉に狼型獣人が若干嫌な顔をします。無個性人は医者なので慣れっこですし、虫人は妻が沢山いて子供も沢山居るので耐性はある様です。


「いやー、この時に『言う事が聞けないなんて悪い子だね』って言うとさー、七割ぐらいの確率で女の子がびくっとして泣きながら謝って受け入れてくれるんだよねー。さっきまで赤ちゃんだった人が幼児服を着たまま現実に戻ってくるのってすごい顔だよー? ちゃんと赤ちゃんのまま最後までやってくれる人も好きだけどさー、ここで素に戻っちゃう人に強制的に浣腸をしてー、下のお世話をしてあげてー、また『偉いね、頑張ったね』って言ってあやしてあげてー、もう一度赤ちゃんにしてあげるともう痛いぐらい興奮しちゃうー」


 小人は筒を掴んでそれを押し込むジェスチャーをしながら説明します。

 その顔はとても良い笑顔をしていて、こうして説明しているだけで段々と生気に満ち溢れてくるかの様です。


「まー、最後はちゃんとやる事やるんだけどねー。その時の入り方も体を洗うって体でお風呂に入れてから流れでって場合もあるけどー、たまに赤ちゃんモードでいながら無邪気に発情しちゃう子とかも居てさー、種族だけじゃなくてその子が今まで生きてきた経験で色々違うんだなってなるんだよねー。おしゃぶりだけは絶対に外さない子も居るしー、こっちがやってる間はじっとして動かない子もいるー。これだから赤ちゃんプレイは面白いねー」


 小人はそう言うと、性癖酒場のウェイトレスの女性へと目線を向けます。

 そこに居るのは青い花を咲かせた樹人で、もう何十年もこの店で働いている女性です。酒場の荒くれ性癖者達に負けない胆力と口の悪さを持ちつつも優しく包容力があり、彼女を狙っている人は沢山います。


「いや~、流石に姐さんは無理だろ~。あの人が赤ちゃんになる姿とか想像出来ん」

「そもそも樹人って幼少期が無いから赤ちゃんが分からないんじゃないか?」

「知識トシテ知ッテハイテモ、ソレヲシロト言ワレテモ出来ヌダロウ」

「えー、ちょっとー、夢を壊すような事言わないでよねー」


 小人は笑いながらも目は真剣な眼差しで樹人を見つつ、シークレット性癖の暴露は締めくくりとばかりに性癖ノートをぱたりと閉じてテーブルの真ん中に置きました。

 そして、ノートが置かれたのを見計らって、無個性人から三人に声がかかります。


「よ~し、じゃあ今晩はこれぐらいにしておくか?」

「いいんじゃないか? まだ飲み足りないなら個別に飲めばいいだろうし。自分は早く帰ってブログの事を聞かなきゃならないし」

「我モ妻ヲ愛シテヤラネバナラヌシナ」

「そうだねー。お開きでいいんじゃなーい?」


 これで参加者四人のシークレット性癖の暴露が済みました。後はノートをお店のカウンターへ戻せばシークレット性癖暴露大会はおしまいです。

 今回は四人だけの参加でしたが、四人は久しぶりに開催されたシークレット性癖暴露大会で自分の性癖を語れた事に満足しています。

 普通はこんな性癖を軽々しく口にすると周りから一歩どころか数歩引かれてしまいますが、それでも他人に語りたい性癖があるからと四人で開催したのです。

 狼型獣人だけは若干不満が残っている様ですが、そこはパートナーと上手い事話し合って解消して欲しいですね。


「あのぅ、ちょっとよろしいでしょうかぁ?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る