ゴールデン・アプサスの力

「ミサキお兄ちゃん・・・・・・?」イツミはミサキの姿を呆然と眺めていた。

 

 イツミの言葉を聞いて、ミサキは現実の世界に引き戻された。ミサキの体は黄金に輝く、キング・シールド、金のアプサスを装着していた。


「イツミちゃん・・・・・・・、シオリさんを頼む」そう言うとミサキは、シオリの体をイツミに引き渡した。

「お前は・・・・・・、許さない!」ミサキは、体に渾身の力を込めた。 その瞬間、ミサキの全身から金色のオーラが吹き出た。

「なに! このシンクロは異常・・・・・・・!」カトリーナがそう呟いた時には、目の前に、ミサキが姿を現していた。


 ミサキは、握りしめた拳をカトリーナの胸の辺りに叩き込んだ。 カトリーナは、あらゆる受けの中で一番強固といわれる十字受けで攻撃を受けた。 カトリーナの体は、吹き飛び校舎の壁にめり込んだ。


「凄い・・・・・・、ミサキさん!」ナオミは驚きのあまり、口をあんぐりと開けたままとなっていた。 呆然とするナオミの後ろから、百戦鬼が襲い掛かろうとする。ミサキは、瞬間移動のように百戦鬼の前に現れ、両手を前に突き出した。

 ミサキのその両手から、気のようなものが発せられたように百戦鬼の体は吹き飛んだ。壁の中から、復活したカトリーナは、飛んできた百戦鬼の体を受け止めた。

「百戦鬼! が悪い!一旦引くわよ!」カトリーナは百戦鬼に指示するように言った。

「ちっ、解った!」百戦鬼の返答。二人は、少し力を溜めたあと、渾身の力を込めて脱兎の如く逃亡した。


「逃がすか!」ミサキが、二人を追いかけようとする。それに呼応するようにミサキの体が激しく輝く。

「駄目・・・・・・!深追いしてはいけない・・・・・・!」意識を失っていたはずのシオリが、精一杯の声でミサキを制止する。 しかし、その声はギリギリ、ミサキに届く程度のものであった。

「シオリ・・・・・・さん!」ミサキは、イツミの腕の中で苦痛に顔を歪めるシオリの元に移動した。 それを合図にするように、ナオミ、サツキ、フタバ、そして意識を戻したムツミもシオリの元に集まった。

「早く! シオリを研究所のメディカル・カプセルに入れないと・・・・・・」サツキがシオリの背中の具合を見ながら言った。 メディカル・カプセルは、ミサキ達がバーニの体を手に入れるために、使った培養液の入ったカプセルの事だ。


 ミサキが、以前、小林に聞いた話によると、バーニの負った傷への治癒力の強化も兼ねているとの話であった。

「俺に任せてください!」ミサキは、シオリの体を抱き上げると宙へと舞い上がり、マンションに向かって飛んでいった。

「凄いな、あんなもんが、この学校の下に眠っていたんやな!」飛んでいく、金色のミサキを目で追いながらムツミが呟いた。

「ミサキさん・・・・・・」ナオミは何故かミサキの名を呟いた。


  その言葉は決して安堵によるものではなかった。


 バリアが開放された、校庭の中に狩屋と警察官達は突入した。 既に、長時間、継続した地響きは鳴り止み、先に飛び込んだはずの少女達の姿は消えていた。 校舎には亀裂、破壊された痕があり、校庭も所々、えぐられたような場所があった。 とても人間の仕業と思えるものでは無く、マスコミにも原因は不明と発表された。


 テレビでは、連日、学校の怪奇現象と取り上げられ、取材が殺到した。

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