ナオミ再び!

 薄暗くなった屋上から、桃色の髪の少女は目前にある銀行を見つめる。


 オフィス街の中に位置する中程度規模の銀行だ。

 閉店間際に数人の強盗集団に襲われたそうだ。強盗達は現金を奪い速やかに逃走するつもりだったが局員が隙をみて通報し駆けつけた警察車両に囲まれて店外へ出ることが出来なくなったそうだ。


 時間は夕方六時過ぎ。

 日が落ちて外は暗くなっている。銀行職員と、店内に残された数人の客が人質となっている。


「ナオミ、手首を曲げて屋上のフェンスを狙うのよ! 」ナオミと呼ばれた少女の耳に飾られた、イヤリングから女の声が聞こえる。

 ナオミは女の声の指示に従い手をまっすぐ伸ばして狙いを定める。手首を曲げるとブレスレッドから、ワイヤーが飛び出し狙ったフェンスに絡みつく。


「よしっ!」左手でガッツポーズを取る。

「向こうの建物へ飛び移るのよ!」再び、女の声が聞こえた。

「はい!」返事と同時に飛び上がった。「・・・・・・えっ?」ジャンプしてから不安が頭をよぎる。(こんな距離、本当に飛べるの?)


「ギャー!」ナオミの体は、自分が予想していたより驚異的な跳躍力で空中を舞った。

 なんとか、体制をコントロールして銀行の屋上に飛び移る。遠くから見ると、彼女の姿はスパイダーマンのように見えただろう。


「なんだか、前にもこんな事がなかったかしら・・・・・!」ナオミは両目を涙で潤ませた。


 銀行強盗の確保。彼女が指示された今回の任務である。ただし、彼女が持つ能力を出来る限り公にしてはいけないとの条件が加えられた。よって、警察が包囲する建物周りからではなく死角になっていた、隣の建物の屋上から侵入を決行することとなった。

 フェンスに絡めたワイヤーを外し、足音を消しながら移動し店内へ通じるドアにたどり着いた。

 ドアノブゆっくり握り回すと、以前の教訓を生かしてドアノブが千切れないようにゆっくりと回した・・・・・・つもりであった。

「あちゃー」ナオミは力の加減がわからず壊してしまった。


 ゴン!! 


 彼女は茫然と千切れたドアノブを手に握りしめていた。反対側のノブが落ちた事により建物の中に音が響く。

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