銀行強盗

 退屈な授業が全て終了し学校の拘束時間から開放された。 下校の時間だ。


 帰りに晩飯の食材を買う為、財布の中の財産を確認するが、ほぼ空っぽの状態であった。

「ちっ、銀行で預金を下ろさなきゃ」ちなみに、俺は一人暮らしである。


  両親が海外に転勤になってしまった為、高校進学と同時に一人暮らしをすることになった。 自分の晩飯は自分で用意しないと飢えて死んでしまうことになる。

  幸い、仕送りは俺一人が生活するには十分な位、送金してくれているので、俺はアルバイトをする必要は無い。

  まさに悠々自適な生活である。通学路の途中にある銀行に立ち寄る。 週末であるせいなのかATMの前に人が並んでいる。


 一番前のおばさんが、手間取っているようで列が解消していかない。

 入り口の隅にギターケースを手に人を待っている様子の男がいた。ちょっとその場所には不似合いな感じがした。


「くそー! 時間が無いのに!」少しイライラしながら順番を待っていた。

 十分近くの時間を要してから、俺の順番が回ってきた。

「ふー」ため息をついてから、ATMにキャッシュカードを差し込む。

 その瞬間、大きな警報の音が響き渡った。


「なんなんだよ、一体!」辺りを見渡した。 なにやら奥のカウンターのほうでライフルを構える男の姿が見えた。


「誰だ! 警報を鳴らしたのは!」男は叫びながら天井めがけて銃弾を一発発射した。 天井の蛍光灯が割れ、破片が落ちる。 客から悲鳴が上がった。


「静かにしろ! 騒ぐとぶっ殺すぞ!」男が興奮した口調で叫ぶ。俺のいるATMの場所は、出口に近い為、並んでいた主婦たちは外に逃げようとした。


「待つんだ! 逃げたら撃つぞ!」別の男が銀行の入り口で拳銃を構えていた。

 逃げ出そうとしていた主婦は、まるで練習でもしていたように両手を上にあげた。銃を構えているのは、

 さっき入り口でギターケースを持っていた男であった。多分、あのケースの中に、銃を隠していたのだろう。


 男達は局員と客を一箇所に集めて、動かないように指示してきた。


 男たちの数は五人程度、計画的な犯行のようである。

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