第11話 隷属竜:スレイブドラゴン
腹に響くような規則的な振動が、洞窟を揺るがしていた。
まるで巨大な槌を地面に打ち付けるような音。その音源に向けてトーリは静かに岩陰を縫っていく。
心臓の鼓動が早い。この先に居るものがトーリの想像通りであれば、たとえ[
先ほど十四階層に上る道すがら危惧し、棄却した想像が再度思い浮かぶ。もはやそれはこの一つ一つが重戦士の重い一撃に匹敵するような足音を聞いてほとんど確信に変わっていた。あの十四階層に上る道にあった壁の掻き傷は、間違いなく奴が通った跡だ。
(……!! やはり、
十四階層にある中規模の空間。そこを多くの
(しかしおかしい……。
本来は
(まさか、
しかもトーリを十六階層まで追い詰めた集団よりもさらに巨大な群れだ。
(情報が少なすぎるな。現状では判断できない。
(もっとも俺なんかに情報が下りてくるはずもない……)
恐らく最も
(結局分からないことだらけだな……だが、急ぐ必要がある)
(別に倒せなくてもいい。迂回しながらでも、
早く付いて伝える事さえできれば、あとは高位冒険者か自衛軍が対処をするだろう。
徐々に
トーリは足音が遠ざかったのを確認して、大きくため息をつく。冷や汗によって全身が湿っていた。
(よし、行くか)
恐怖によって萎えた足に活を入れると、トーリは踵を返す。ただジュリの元に戻るだけであれば、行きの四分の一も時間は掛からない。むしろ少し意識するだけで、自分の位置まで分かる状態で地図が頭に浮かんでくるのだから、至れり尽くせりの環境だ。トーリはジュリの待つ一六階層に向かって、駆け足で移動を開始した。
早くジュリに伝える必要がある。
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