彼女たちのその後

 あれから時は経ち、未咲と玲香はそれぞれ別の大学に進学することになった。

 原因は未咲にある。

 惜しくも合格点に届かず、もうひとつのほうの大学に受かったからだ。

 当時はそれが悔しくて、ひと晩じゅう泣いていたらしい。


 そんな時期もあっという間に経ち、あろうことか未咲はあっさり退学していた。

 大学生活を送っていくうちに、どうも何かが違うと感じ始めていたらしく、

 気づいたらサボりがちになってしまい、退学時には元気がすっかり失せていた。


 友達はそれなりにいたらしいが、どの子とも結局最後まで続かず縁が切れた。

 職を転々としていたそうだが、結局どの仕事もうまくいくことはなかった。


 そして(未咲語り)気づけば、玲香ちゃんはお金持ちになっていた。

 つながりがつながりを生み、大金を動かすほどの存在になっていたみたい。


 それでもやっぱり玲香ちゃんは玲香ちゃん。あの性格は変わってないらしい。

 なんでも人をあごで使っているといううわさ。わたしのとこまで届いていた。

 というか、そろそろちゃん付けで呼ぶの、やめたほうがいいかな。


 いろいろなことを考えてきたけど、これからわたしどうしよう……。

 そう思っていた矢先、玲香ちゃんから久しぶりに連絡があった。


 玲香「(☎)あんた、いま困ってるって? わたしのところまで届いてるわよ」

 未咲「なんで知ってるのかな……」


 どこかで傍聴でもされているんじゃないかと、少し不安になる。

 でも、久しぶりに玲香ちゃんの声が聞けて嬉しくなる自分もいた。

 とたんに下半身が疼く。これはもう反射的にそうなっているとしか言えない。


 玲香「わたしのところに来なさい。たっぷりお世話してあげるから」

 未咲「(わー……なんだかよくわからないけど遠慮したい……)」


 ただ、そういっていられるほど余裕もなく、とりあえず玲香ちゃん邸へ。


 玲香「ようこそ、わたしの自宅へ。さて、覚悟はいいかしら?」


 ♦


 迎えられたのは、ふたりのお手伝いさんとおぼしき人たち。


 玲香「あそこの部屋まで案内してちょうだい」

 手伝「かしこまりました」


 つかつかと歩くその姿に、終始わたしは緊張しっぱなしだった。

 それに連動して、ある感覚もだんだん強くなっていった。


 未咲「(どうしよう、おしっこしたい……

     でも、とてもじゃないけど言い出せる雰囲気じゃないしなぁ……)」


 仕方なく我慢して、隙があったらトイレに行かせてもらおうと考えていた。

 だけど、目の前の玲香ちゃんを見ていると、その気は毛頭なさそうだった。


 ――もしかしたらあのときみたいに、わたしにおもらししてほしいのかも


 その予感は、どうやら当たっていそうだった。


 ♦


 玲香「とりあえず、そこのベットで横になって」

 未咲「あの、玲香ちゃん、ちょっといいか――」

 玲香「いいからさっさとそこに寝転がれ、この××××××!」


 感じたことのない気迫だった。思わずわたしは後ずさる。

 だけど鍵はなぜか勝手に閉まっていて、外に出られそうにない。

 殺される――それは思い過ぎにしても、そう感じてもおかしくないほどだった。


 未咲「わかった! わかったから落ち着いてよ、玲香ちゃん!」

 玲香「あぁもういらつく! さっさと横になればいいんだよっ」


 人が変わったようだった。こんな玲香ちゃん、見たことない。


 未咲「ね、ねぇ、どうしちゃったの、玲香ちゃん……?」

 玲香「どうしたもこうしたもないよ! はん、どいつもこいつもいらつくな!」


 ほんとにどうしちゃったんだろう。なにかわかることがあるといいんだけど。


 未咲「ほ、ほらわたし、もう準備万端だから……」

 玲香「なんの準備よ! どうせあんたのことだから、あれなんだろうけどさ!」


 大金を手にして、ここまで人が変わってしまうというのは少し聞いた気がする。

 それはともすれば本当だと思う。けど、これほど変わるとは思いもしなかった。


 玲香「ふ、ふふふ……あんたにとっておきのもの、用意してあるわよ」

 未咲「これって……」

 玲香「ただの水よ。だけどねぇ、とってもキンキンなの」

 未咲「キンキンって……」

 玲香「そう、ばっちり冷えてるってこと。これを飲んだらどうなるか……」

 未咲「くくく……」

 玲香「なによ、いきなり笑って……わたしのこと馬鹿にしてるの?」

 未咲「ちがうよ……それくらいのことなら、お安い御用だなって思っただけ」

 玲香「あんた、あのころからこれっぽっちも進歩してないんじゃ……」

 未咲「うーん、ちょっと違うかな……

    あのころの部分も、携えながらここまで生きてるってことだと思う」

 玲香「……」


 何か反論したかった。だけど何も浮かばなかった。

 未咲の言っていることは的を得ていると、直感でそう悟ったからだ。


 玲香「なんか、さっきまで暴れてたのがきゅうにばからしくなってきたわ……」

 未咲「そう思ってくれてうれしいよ、玲香ちゃん」

 玲香「ちゃん付けで呼ぶのはもうさすがにやめてほしい……」


 それからわたしたちは、やさしいおもらしプレイに興じた。

 内容は省略するけど、とても気持ちよかったとだけここに書いておくことにする。


 玲香「春泉たちは元気にしてるかしら」

 未咲「そうだといいね」


 やわらかく笑って、わたしたちは少し早い睡眠をとった。

 ここで暫くお世話になって、それからまた素敵な人生を描いていけるといいな。

 では、おやすみなさい。                        fin

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