第42話 フィリピン散策8
フィリピンの一般的な公衆トイレ街の食堂(トロトロ)のトイレには,次の特徴があります。
① トイレットペーパーが設置されていない。あっても流せない。
② タンクがない。汚物はバケツの水で流す。
③ 便座がない!
①については,トイレットペーパーを設置すると盗まれるし,設置しても水に溶けない安物のペーパーを設置するからであり,これを他のアジア諸国でも同様です。
②はフィリピン特有で,バケツの水は汚物を流すためだけではなく,水洗トイレのシャワーの役割を果たします。
私が衝撃的だったのは,やはり「③ 便座がない」ということでした。その理由について私が調査した中で,なるほどと思ったものを紹介します。
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フィリピンの戦前におけるトイレは,地面に穴を掘っただけのものでした。紙は貴重品なのでバケツの水で下半身を洗っていました。
戦後,洋式トイレが徐々に普及するようになりました。
バケツの水で汚物を流すことにはさしたる問題はありませんが,戦後といえども,紙が貴重品であるフィリピンでは,紙は使えません。しかし,洋式トイレに普通に腰掛けてしまっては,下半身をバケツの水で洗うのは不便です。
その不便を克服しようと,フィリピーナは,カエルのように便器の上に乗ってしまうのです(カエル方式)。しかしそれでは体重で便座が壊れてしまいます。トイレの管理者が修理してもフィリピーナはカエル方式を止めないので再び壊れてます。
これが繰り返されたためトイレの管理者は諦め,壊れたまま放置するようになり,便座なしのトイレの形になったのです。
フィリピーナの中には,中腰になる者や便器にそのまま腰掛ける者もいますが,カエル方式は今でも続いています。
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フィリピンの便座なしの洋式トイレは世界でも極めて使いにくいものであることは否めません。
今ではトイレットペーパーはどこのスーパーでも売っていますが,盗難防止のため公共のトイレには設置されていません。しかも,その大半は水に溶けないため,水洗トイレに流すことができず,ゴミ箱に捨てなければなりません。
トイレットペーパーを使えない事情があるならば,昔の形(中国式トイレ)の方が下半身を水洗いするのみ便利なはずで,あえて西洋式トイレを導入する必要はないはずです。それにもかかわらず,あえて西洋式トイレを選択しつつも,フィリピン独自の便座なしトイレを考案したフィリピーナは,もともと旧宗主国のカトリック(スペイン統治時代)や英語(アメリカ統治時代)を受け入れ,自家薬籠中の物とにしてきた国民性と似たものあるようです。
フィリピン全土に頑固に根付くフィリピン式洋式トイレは,カトリック教や英語と並ぶフィリピン人のアイデンティティーの1つなのかもしれません。
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