第25話 離婚率89%!?(下)

 フィリピン人女性との結婚がうまくいかない理由として,巷間論じられているものは,次のとおりです。

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 突出して違うのが配偶者の女性との年齢差。つまり年の差婚です。

 厚生労働省の平成28年度人口動態統計特殊報告によると,フィリピーナと日本人オヤジの夫婦における年齢差は,2位のタイ(12.5),3位の中国(10.7)を大きく引き離して18.5歳です。

 日本人オヤジ・フィリピーナ組は何故こうも歳の差があるのでしょうか。

 雄の本能の赴くまま行動するスケベオヤジは,自分の年齢にかかわらずなるべく若い女を好むという傾向があることを前提とすると,まず考えられるのは,国の経済力の格差です。

 フィリピンは貧富の差が激しく,日本のピンパブで働くため来日する若いフィリピーナはフィリピンで多数派の貧困世帯出身であり,私の調査では,約8割が未婚のシングルマザーです(子供はマザーが養育している。)。そのためファミリーの生活を改善するため,やはり雌の本能の赴くまま,経済力のある日本のオヤジと結婚することを選ぶのです。日本のスケベオヤジには,経済力などないことを知らないまま。

 フィリピーナといえども,他の国の女性と同じく同年代の若い男性が恋愛対象であるのは当然です。しかし,どんなにラブがあろうと,ファミリーとともに貧困生活を続けていると,マネーがあると誤解した日本のオヤジと結婚し,ファミリーの生活を変えてくれることを望むのです。そのため,フィリピーナは,たとえ高齢者であっても結婚相手として気にしません。日本の女性も年齢を重ねる毎に同様の傾向が見られます。逆に言えば,ごく少数の裕福な家庭に育ったフィリピーナが,日本のオヤジを相手にすることはありません。彼女らは,裕福な家庭に育ったフィリピーノとしか結婚しません。そもそも,彼女らが日本のスケベオヤジと接触する機会はありません。

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 歳の差婚の原因としては,ビザ目的の偽装結婚もあるでしょう。

 入管法の改正により,日本でタレントという名のホステスをするのが困難となったため,合法的に日本で仕事をするために配偶者ビザの取得ないし永住権を取ることだけが目的の結婚をするフィリピーナがいます。それだと日本人男性の年齢は関係なくなります。日本人オヤジが本気であったとしても,フィリピーナにはビザ取得目的しかないこともあります。ただし,それは,フィリピン以外の国の女でも同じですから,さしたる原因とはならないでしょう。

 愛のある結婚だとしても,歳の差婚である限り,オヤジの肉体の衰えによりフィリピーナの妻が若い男と浮気をしたり,より経済力のあるオヤジに乗り換えることもあります。それを解消するためには筋トレ(プラスちんトレ)しかありません。筋トレ,ちんトレは,浮気を防ぐ予防薬であり,経済力の維持,増強は,見捨てられないための秘薬です。

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 貧困層のフィリピーナには,歴史の知識はないものの,日本を黄金の国ジパングだと思っています。KTVやピンパブに来店する客は,金を湯水のように使えるのだから,結婚すれば自分もファミリーも豊かになれると誤解しています。しかし,いざ結婚してみると,オヤジの収入は平均以下であったり,借金さえあることもあり,「こんなはずじゃなかった」と思うのです。目当てのフィリピーナを口説くため,かっこいい所を見せよう見栄を張り,ブランド物をプレゼントしたり,毎回高いレストランで食事をしたり,実生活と乖離したお金の使い方をしていると,そのような誤解を招くのは当然です。

 貯金をするという習慣がないフィリピーナは,宵越しの金をもちません。金があれば,自分とファミリーのためにさっさと使ってしまいます。無ければ無いで何とかしてしまうフィリピーナもいますが,それでも,後先考えずフレンズからヘルプ名目で多額の借金をします。

 結婚するために見栄をはってしまった場合は,恥ずかしがらず,結婚前にお金についてよく話をするべきです。毎月の生活費はいくら,本国への送金額はいくらなどと。

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 次に考えられるのは,愛情表現の不足です。

 長年苦楽を共にした日本人夫婦であれば「言わなくても分かる」が通用するし,それを美徳と捉えてくれる妻さえいるでしょう。 

 しかし,フィリピーナとの結婚においてはそんな考え方は通用しません。フィリピーナに対しては,常に言葉や態度で愛を伝える必要があります。愛の言葉(「I love you.」「I miss you.」)を囁いたり,抱きしめたり,手を繋いだりしてフィリピーナ妻に愛を表現することについて,「日本男児たる者,そんな真似できるか!」と古風な考えをもっているオヤジは,フィリピーナとの国際結婚に向きません。

 毎日「I love you.」と言いながらハグを欠かさないとか,週に一度くらいは安くてもいいので,フィリピーナ妻に花をプレゼントすることなどができない古風なオヤジは,離婚を突きつけられることになるでしょう。

 しかし,そもそもフィリピーナと結婚するオヤジは,日本人女性から相手にされないのだから,日本以外の文化にマッチする確率は高いのかもしれません。

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 食習慣の違いもあるでしょう。

 誰でも小さな頃から食べ慣れた食事を美味しく感じるので,日本で暮らし始めても和食を受け付けないフィリピーナは大勢います。私の妻もそうでした。生卵や刺身は見ただけで毛嫌いする。魚でも何でも油で揚げようとし,食卓に並ぶのはフィリピン料理のうち共通して食べられるものに限定されます。フィリピーナは好き嫌いが激しいので,子供の頃から食べ慣れた高カロリーで味の濃いフィリピン料理ばかりを食べます。その料理もお決まりのものだけです。

 フィリピン料理を食べることは健康上問題があります。高カロリーすぎるからです。

 日本で暮らすにもかかわらず和食を食べる習慣がないと,夫婦間では問題がなくても,子供がいる場合は学校給食や友達付き合いに悪影響が出ます。フィリピン料理主体の食生活をすると,子供が全く和食を食べることができなくなります。

  フィリピーナが和食を作るのは難しいでしょうが,YouTubeで英語で解説してある和食調理動画を見させてトライさせなければなりません。しかし,そのような努力をするのを嫌がるフィリピーナがほとんどです。私の妻もそうでした。

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 言葉の壁は大きいでしょう。

 日本のオヤジは,タガログ語はもとより英語も話せません。当初の燃え上がっている時であれば,言葉の壁はたいして気になりませんが,結婚をするとなると話は別です。社会生活を送るための意思疎通には,ピンパブレベルの会話では足りず,ある程度理解できる共通の言語が必要です。

 フィリピンで暮らすならば,夫婦間の意思疎通は日本語である必要はなく,英語やタガログ語でも問題はありません。しかし日本で暮らすなら,日本語を話せたり読み書きできるようにならなければなりません。少し日本語が話せれば何とか生活はできるし,一緒に暮らす夫婦であれば何となく言っていることがわかるため,深く日本語を勉強するフィリピーナは少ないのです。

 しかし,それはフィリピーナ妻の将来の可能性を潰しています。日本語を勉強すると日本の文化を学べるので,日本社会に順応できますが,それをしないため,フィリピーナ仲間とばかりつきあいます。暮らす国の言語ができないと孤独を感じます。生まれ故郷から離れて日本へ来たフィリピーナがKTVやピンパブレベル以上の日本語を話せないと,夫側の家族や友人とコミュニケーションを取ることに苦労します。住んでいる地域にフィリピン人コミュニティがある場合は孤独だけは解消されますが,日本語が上手くないフィリピーナが集まると,日本の文化や習慣に触れる機会がなく,小さなコミュニティが全ての世界となります。

 日本語ができないと,夫に依存してしまうことになります。様々な手続きや病院での説明,子供が生まれれば学校行事に係わる全てを夫が一人でこなすのは困難でしょう。

 「妻が困らないように全て俺がやる!」という覚悟があるのかもしれませんが,それは本当の優しさではありません。夫はオヤジまたは老人であるから,いざと言う時にフィリピーナ妻が一人で自活できるようにしてやることが必要です。

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 フィリピーナと国際結婚をすると避けて通れないのが,フィリピンのファミリーへの仕送り(送金問題)でしょう。ファミリー・ファーストのフィリピーナは,自分だけでなく夫婦の生活を犠牲にしてでも送金します。度が過ぎる送金により,夫婦は経済的に破綻します。

 親孝行を否定する気はありません。育ててくれた親へ送金するのは当然だとも言えます。しかし,50歳前後で健康であるにもかかわらず,自らは何の努力もせず,死ぬまで娘からの送金を期待する親への送金が苦になるというのであれば,フィリピーナと結婚する資格はありません。

 フィリピンのファミリーから過剰なヘルプを要求され,フィリピーナ妻がそれに応えて当然と考えている場合,「足りないなら夜のお店で働いて稼ぐ」という状況になるから,それを嫌がるオヤジであれば,家庭生活は破綻します。

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 日本のオヤジは,フィリピーナとの特殊離婚率89%であることを知らないまま結婚します。もし知ったとしても,「自分だけは違う」と思うはずです。しかし, 異なる文化,環境で育ったフィリピーナとの国際結婚は,同じ環境で育った日本人女性と結婚することに比べ,生活環境が大きく異なるのは当然ですし,タイや中国などの仏教国の女性と結婚する場合と比べても大きく乖離します。

 異なる部分は,文化,宗教,食生活,性生活ばかりでなく,フィリピンスタイルと呼ばれる行動様式です。要するに,常識や価値観が全く異なるのです。付き合い始めた当初は,はみ出た部分の違いを楽しめるかもしれません。ぶつかり合いながらも互いの文化や価値観を理解できれば,刺激的で充実した人生を送れるでしょう。しかし,統計が示しているとおり,ぶつかりあっている途中で破滅するのです。

 フィリピーナと結婚するなら,フィリピンで生活するべきであると実感し,フィリピンにやってきましたが,今回,その方針が統計上も間違ってはいないことを実感しました。






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