第36話 虎の穴(下)

 虎の穴の幹部たちを紹介しよう。多くが「ミス」と自称しているが,その大半は結婚歴もなく,妊娠した途端,男に逃げられた(run away)シングルマザーのおばさんである。

・ミスX(本名:マニー・キャッシュ・ゴンザレス)

 極東地区担当マネージャー。

 結婚をしていないシングルマザーであるため「ミス」と名乗っているが,実は子持ちのおばんさんである。トンズラした男は,「ミスターX」である。

 「虎の穴の鉄の掟である半金上納を破ったタイガーピーナを抹殺するため,次々と刺客を送り込む。

 ストーリー終盤では,役立たずのミスXに代わり,ボスであるゴッドマザーが直接指揮をとるようになり,ミスXはプロモーターに降格される。

 店外でタイガーピーナの命を狙うが,墓穴を掘る形で命を落とす。

・ボス(ゴッドマザー)

 当初は姿を見せない謎の存在だったが,失敗続きのミスXに業を煮やし,タイガーピーナ抹殺の指揮をとるようになる。

 その正体は虎の穴の創設者で,かつては日本中を荒らしまくった天才ジャパゆきさん。接客力,歌唱力,寝技,反則技と,力と技のすべてを兼ね備えた虎の穴最強のエンターテイナー。人呼んでゴッドマザー。

・赤いマスクの支配人(3人の支配者)

 虎の穴本部で世界各地区のマネージャーたちに指令を出す。その正体は,虎の穴が生み出し,各地区最強と恐れられながら忽然とピンパブ界から姿を消した幻の3人のフィリピーナである。

・マネージャー

 総勢7名で構成されており,世界中の各地区を担当している。

 ミスYとミスZは,ミスXと並ぶ虎の穴の有力マネージャー。「3人の支配者」亡きあと,そのうち3名は,ボスから新たな「3人の支配者」に任命される。

     *****

 虎の穴からの刺客たちを紹介しよう。

・ブラック・パイソン(黒いニシキヘビ)

 虎の穴がタイガーピーナ抹殺のために送り込んだ最初の刺客。

 来日直後,成田空港で痴漢に及んできたスケベオヤジを手刀一発で絶命させる実力を披露した。

 必殺技は,69人を債務整理に,9人を民事再生に,2人を破産に追い込んだ高速ボトル注文。

・獣人ゴリラウーマン

 フィリピン・ミンダナオ島のジャングルでマウンテンゴリラに育てられた少女を悪役ピンパブ嬢として養成した。巨体のために飛行機に乗ることができず,檻に入れられたまま貨物船で来日。

 報道陣を招いてのデモンストレーションでは,わしづかみで大盛りライスを100杯食べた。 

 巨体を利用した高速大量のフライドチキン注文が必殺技。

 タイガーピーナに敗れた後,タイガーピーナの尽力で,人権団体によって身柄を保護され,人間になるべく再教育を受けることになった。

・ローン・ウルフ

 ミンダナオ島の山中で,ハイイロオオカミに育てられた狼女おおかみおんな

 ゴリラウーマンに類似しており,ミスXによって「知能は幼児並み」とまで言わしめているが,フォークとスプーンが使えるなどゴリラウーマンよりよほど知的である。

 鋭い爪と牙でスケベオヤジの財布に噛みつこうとする。

・スカルスター(どくろの星)

 ミスXの手引きで営業中に照明を落とし,ミス・シャドウとのタッグでスケベオヤジを叩きのめす。必殺技の高速ドリンク注文は,対戦客に対し同時に2杯のドリンクを注文させる。

 その正体はタイガーピーナと同期のラッキー。訓練生時代,たびたびタイガーピーナに危機を救われていたため,タイガーピーナ抹殺の指示を拒否したことから,ミスYに処刑される。

・ミス・シャドウ(影の女)

 待合室にひそみ,ミスXの手引きにより,営業中に照明が落ちた後,スカルスターのヘルプとしてタッグを組み,スケベオヤジを叩きのめす。スカルスターの客が同時に2杯のドリンクを注文させられるのは彼女のヘルプあってのことだった。

 その正体は,タイガーピーナと同期のリコ。訓練生時代,たびたびタイガーピーナに危機を救われていたにもかかわらず,タイガーピーナを抹殺しようとし,出勤途中で交通事故死するなど裏切り者のおバカさんとして描かれている。

・ミス・HELP

 タイガーピーナ抹殺のため,ミスXが企画した新人タレント入店イベントで来日。

 高身長,異様な撫で肩と長い首,美容整形に失敗し,目や鼻がない丸い頭で,「宇宙人のよう」(オヤジ談)な異形の容姿をしている。首元にはドットで「HELP」と書かれている。

 実は,全身がビニールタイツに包まれ,顔は整形手術の失敗によるのっぺらぼうのギミックタレント。異様なバストは,綿の詰め物が入っているためであり,首元の「HELP」は覗き穴および呼吸穴である。異様なルックスにひるんだスケベオヤジから大金を巻き上げる。

 新人タレント入店イベントで最初にタイガーピーナと対戦し,整形前のルックスを暴露されたため羞恥心によりギブアップして敗北する。その正体は黒人との混血女性。背があまり高くないため,タイガーピーナは「ちび」と呼んでいた。

 ミスXは,タイガーピーナに対し「ミス・HELPは,新人タレント入店イベントで来日したピーナたちの中で一番弱い」と告げている。

・ドラキュラ(吸血鬼)

 新人タレント入店イベントで来日。

 全身が剛毛に覆われ,ざんばら髪で悪鬼のような顔を隠している。全身の剛毛は麻酔薬を仕込んだ注射針になっており,客を痺れさせた後,その財布を奪う。

・クイーン・サタン(悪魔女王)

 新人タレント入店イベントで来日。

 タイガーピーナに化粧を剥がされ,素顔を晒して場外撃沈。

 その正体は虎の穴のコーチだった。

・ゴールデン・マスク(黄金仮面)

 新人タレント入店イベントで来日。

 特殊ガラスで作られたアルカイックスマイルの仮面を着用。

 仮面から発するサーチライトのように強烈な光で客の目を眩ませて財布を奪い、ロープをもかみ切る強力な牙でオヤジギャグを噛み裂く。

・エジプトミイラ(反則王)

 新人タレント入店イベント・売上高ランキング戦の決勝で,ライオンウーマンとタッグを組み,タイガーピーナ&グレート・マネゴン組と対戦。

 古代エジプトのミイラそっくりのコスチュームで,包帯の間に仕込んだ胡椒や眠り薬で客を翻弄して,セット料金の数倍もの金を払わせる。

 その正体は虎の穴の反則専門の助監督。

・ライオンウーマン(百獣王)

 新人タレント入店イベント・売上高ランキング戦の準決勝で,エジプトミイラとのタッグでタイガー&グレート・マネゴン組と対戦。

 取り立てて奇抜な技は有しないが,客20人相手のヘルプもこなすなど,桁外れの接客力が武器。タイガーピーナのコブラツイストに敗れる。

 その正体は虎の穴の総監督。

・赤き死の仮面(20世紀の吸血鬼)

 2000種類の反則技を持つと言われ,対戦客には,ヘルプ攻撃により必ず破産手続開始決定を受けさせる残虐接客を売り物とする稀代の反則魔。

 彼女が入店するとその店の人気はたちまち地に落ち閉店に追い込まれると噂されるほどで,名だたる悪役フィリピーナも彼女の前ではすくみあがる。

 タイガーピーナは彼女との死闘の最中,我を忘れて大反則を犯してしまい,勝負には勝ったものの,心に深い絶望感を抱くことになった。

 タイガーピーナに敗れた後,多数のフィリピーナによる集団いじめにあい,帰国後,虎の穴本部で奴隷のような身分に落とされ地獄の重労働にあえいでいる姿が確認されている(この時,素顔も晒されている)。

・ミス・カミカゼ

 もともとは虎の穴出身ではなく,極真空手を学んだ正統派フィリピーナだったが,やがて表舞台を追われ,虎の穴の息のかかったマラテのKTVで活躍していた。

 タイガーピーナと戦い敗れるが,その戦いの中で友情を結び,タイガーピーナの助力を得てピンパブ界から足を洗う。

 ウルトラ・タイガー・ブリーカー(日本名:フジヤマ・タイガー・ブリーカー)の最初の犠牲者でもあった。

・ゴキブリアン

 虎の穴用語ではデスマッチと呼ぶアフターでタイガーピーナと対戦。

 アフターの最中であるのもかかわらず,酔ったスケベ親父の前で,ゴキブリを放し,タイガーピーナを襲わせた。自らはブランドTシャツにゴキブリよけの薬を塗っていたが,その薬をタイガーピーナによって剥ぎ取られ,自らがゴキブリの餌食となった。

 世界悪役ピンパブ嬢決定リーグ戦への参加者として登場。

・ミラクル3(ミラクルスリー)

 ボスが試合勘を取り戻すため,かつ,タイガーピーナに他の席からプレッシャーを与えるための仮の姿として登場。

 奇跡的なパワー・スピードで中国人ホステスなどの外人タレントを圧倒し,タイガーピーナに無言のプレッシャーを与えた。

 世界悪役ピンパブ嬢決定リーグ戦への参加者として登場。

 その正体は3人1役で,それぞれパワー(大声によるカラオケ),スピード(高速ドリンクおかわり),反則(ヘルプ)を得意とする者が同じコスチュームを使い入れ替わっていた。

・ストロング・アーム

 正体は虎の穴コーチの鉄腕ジェシカ。訓練生時代のタイガーピーナには目をかけていた。

 得意技は強烈なジャイアントスイングで,スケベオヤジがコーナーポストにぶつかるほど,テキーラのボトルをオーダーさせる。。

 試合前にグレート・マネゴンから,タイガーピーナが老人介護施設への援助をしている話を聞かされため,店内では反則技を封印し,ジャイアントスイング(テキーラボトルの追加注文)をしても客は一度も鉄柱にぶつからなかった。

 タイガーピーナに敗れた後,必殺技を持たないタイガーピーナの弱点を指摘し,必殺技の重要性を説いた。

 飛行機搭乗前に,ミスXによって手荷物に時限爆弾を仕掛けられ,直接の描写はないが,死を暗示させる演出でストーリーは締めくくられている。

・シャーク2世

 虎の穴の鬼コーチで,残忍な反則技を見せる。

 世界悪役フィリピーナ決定リーグ戦の決勝戦に進出したタイガーピーナを倒すため,ミスXとともに対戦予定者ビル・ヘラクレスを脅迫し,ゴムマスクを利用して入れ替わる。

 試合中にタイガーピーナのバックドロップでゴムマスクがずれ,正体がばれて撃沈。

・ミラクルズ

 タイガーピーナの技を研究するため虎の穴が送り込んだスパイレスラー。

 お互いの片腕の先が結合した双生児として生まれ,手術で切り離した腕に強化骨を埋め込んでいる。 

 双生児特有の一種の霊感による意思疎通で対戦客のホテルへの誘いをかわす。

・ブラック・パンサー

 ミラクルズの助力でタイガーピーナの技を研究し尽くして対戦した。虎の穴には珍しい正統的な技巧派レスラー。

 タイガーピーナに敗れた後,赤き死の仮面らとともに地獄の重労働を強いられることとなった。

・ビッグ・ハイエナ

 赤いマスクの支配者(幻の3匹のハイエナ)たちの一人。

 恐るべき怪力の持ち主。フィリピンで毎年開催される24時間耐久チキン&ライス大食い選手権で10連覇を達成中であり,横綱北の湖を軽く投げとなしたという伝説を持つ。

・ブラック・ハイエナ

 赤いマスクの支配者(幻の3匹のハイエナ)たちの一人。

 変幻自在のスピードの持ち主。虎の穴のOJTで,スケベオヤジにオープンラストをさせ,ドリンクを100杯注文させた実績をもつ。

 グレート・マネゴンは,「サバンナを駆けるハイエナさながらのスピードを持つ」と評している。

・キング・ハイエナ

 赤いマスクの支配者(幻の3匹のハイエナ)たちの一人。 

 ビッグの怪力とブラックのスピードを併せ持つと言われ,反則攻撃を得意技とする。

 かつてはジャパゆきさんとして,スケベオヤジにファミリーのためのブロックハウスの豪邸を何件も建てさせた驚異の実績をもつ。「幻の3匹ハイエナ」の中でも最強のハイエナ。

・ハイエナ・ザ・グレート

 ボスの正体で虎の穴最強最後の刺客。通称ゴッドマザー。胸にハイエナとドクロの刻印が施された不気味なコスチュームを着ている。

 タイガーピーナとの最終決戦でもスケベオヤジに対して凄まじい反則攻撃で荒れ狂い,救出しようとするタイガーピーナを死の寸前まで追い込んだ。

 しかし覆面が破れ,正体を明かされてしまったタイガーピーナの怒りに燃えた壮絶な反則攻撃に逆に打ちのめされる。最後はミラーボールに逆さ吊りにされ,重みに耐えかねて落下した照明の下敷きとなり死亡。虎の穴は崩壊した。


おしまい

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