少女と少年のお話
むかしむかしあるところに帰りを共にする一組の少年と少女がおりました。
少女は、俯き歩く少年を案じて声をかけます。
「今日はやけに元気がないのね。何かあったの?」
少年は少女の問いかけに答えます。
「明日、漢字のテストがあるんだ。」
少女は少年に同情するように言います。
「そう、それであなたは元気がないのね。」
少年は声を小さくして答えます。
「僕は漢字が苦手なんだ。また悪い点数を取ってしまうんじゃないかって、明日のテストが不安なんだよ。」
少女は俯く少年に言います。
「それは大変ね。でも、不安なのは良いことだわ。」
少女と目も合わせようとしなかった少年が、少女のことを怪訝な表情で伺います。
少女は話を続けました。
「あなたが不安なのは、あなたが苦手に勝てるだけの隠れた力を持ってるからよ。ただ苦手なものを不安に感じる人はいないわ。苦手なピーマンを食べるのは嫌でも『怖い~』って不安にはならないでしょ?きっと苦手な漢字のテストでだって乗り越えられるくらいの力があなたにはあるってあなた自身が期待してくれているのね。」
それでも、少年は顔をしかめて言います。
「でも、自分に期待されていたって出来ないものは出来ないよ。」
そう言って、少年はまた俯いてしまいました。
すると、少女は少年の隣から正面に移動し、少年の手を握ります。
驚いて顔を上げた少年と、少女は目が合うとにっこりと笑って言います。
「あなたなら、大丈夫よ。だって、私も期待しているもの。」
少年は少しだけ心が軽くなったのを感じました。
「じゃあ、また明日、テストがどうだったか教えてね。」
少女はそう言うと、手を振り、さっそうと走り去っていきましたとさ。
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