眠れない夜にあくびの出るようなお話を
小餡
父と子のお話
むかしむかしあるところに布団の上で毛布に包まれて横になる子供とそのすぐ傍で絵本を読み聞かせる父がいました。
子供が言います。
「今日はなんだか眠れないよ。」
父が不思議そうな顔で子供に尋ねます。
「それはどうしてだい?」
「起きたらもう明日になっちゃうんだもの。」
子供は不機嫌そうな顔をします。
「今日はこれまでで一番楽しい一日だったんだ。もっともっと今日を楽しんでたい。いつまでもいつまでも今日を遊んでたいよ。でも、眠っちゃったら今日が終わっちゃうの。...今日が終わってしまわなきゃいいのに。」
子供はそう言うと、深くため息をついてしまいました。
そんな子供の様子を見た父が言います。
「そうか。それは確かに悲しいことだな。」
父は少し間を空け、続けて言います。
「でも、明日はもっと楽しいのかも知れないんだぞ?」
父は開いていた絵本を閉じて膝の上に置きます。
「今日はずっと今日のままだ。明日になっても明後日になっても今日というこの日は過去としてずっと変わらない楽しい日だ。ただな、今日はこれまでで一番楽しかった日なのかも知れないが、もしかしたら明日には二番目に楽しかった日になってるかも知れない。」
父が子供の頭をそっと撫でます。
「明日はいつだって希望に溢れているんだ。明日が来ることを嫌がらないで。明日もきっといい日になるよ。」
父はそう言うと、立ち上がって部屋の電気を消しました。
「おやすみ。」
父の声が暗くなった部屋を包みこんで静かに消え入りましたとさ。
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