第10話 ノーエロノーライフ

「北条!」


僕はそう叫び、北条に急接近する。北条は僕の言葉に反応こちらを振り向く。


 よし、このままいけば僕の思い通り、いきなり振り返ってしまってたまたま、唇が触れ合ったって出来るぞ!


「すまん、北条。唇があ……ってえ?

ちょっと待…… 」


 唇が触れ合う直前、いきなり腕を捕まれそのまま投げ飛ばされた。


「痛ってえ……何するんだよ!」


「いきなり、松山にセクハラされそうになったから、投げ飛ばしただけだけど?」


「僕は別にセクハラなんてしようとしてない、ただキスをしようとしただけだ」


「へー、そうなんだ。ふーん。覚悟は出来てるんでしょうね!」


この後、過去最高級にボコボコにされたのは言うまでもない。


****************************


「バカと天才は紙一重って言うけど、本当だったんだな」


「痛っててて……。うるさい、僕も吹っ切れてたんだから仕方ないだろ」


なんで、あんな事を言ったのか自分でも分からないでいた。普段なら言わないのに、吹っ切れるって恐ろしいな。


そして、僕は学んだ。


「やっぱり、正攻法で行くしかないと思うんだ。キスさせてくださいって」


「本当にやるのか……、安心しろ骨は拾っといてやる」


「おう、任せろ。次は水島だ……」


殴られる可能性がある北条の前に、水島を先に終わらせておこう。


廊下を歩いていると、たまたま水島が歩いているのを発見したので声をかける。


「おい、水島。少し話したいことがあるんだ、ちょっと一緒に部室に来てくれないか?」


「いいよ。2人っきりになって、私に乱暴する気なんだね、エロ同人みたいに」


「しないよ、バカ」


水島の腕を引っ張り部室に駆け込む。


「それで、話ってなに?」


「水島、頼みがあるんだ。キスさせてくれ」


頭を軽く下げる。水島なら、これでキスさせてくれるはず。


「松山くん。いいよ、キスしよ。私の初めてを貰って……」


「なんで、顔を赤らめながらそんな意味深な事を言うんだよ!」


「松山くんにとってはどうでもいいかもしれないけど、女の子にとってはファーストキスは初めてみたいに大事なんだよ」


「何言ってるんだ? 初めては親に決まってるじゃん」


「松山くんって、本当にデリカシーないよね。さあ、私の初めてを……」


その時、僕はふとある事を思いつく。キスって、別に唇を合わせなくても間接キスでもいいのではないかと。


「ストップだ、水島! やっぱキスはなし!」


「むー……残念。そんな、誘うだけと誘っといて飽きたらポイなんて……」


「だから、なんでそんなに意味深な事を言うんだよ! やっぱり、あれだ。水島、ぼくはお前の飲んだものを飲みたい」


「飲んだもの……つまり、松山くんは私の唾液が飲みたいってことなの……? 興奮する」


 だめだこいつ、平常運転すぎる。もし、こいつが変態じゃなかったら、むしろ僕が飲みたいくらいなんだよな……。


「ところで、今更なんだけどなんでキスしたいの? 間接もそうだけど」


 やっと、まともな反応が返ってきたな……。この場合なんて返すのがいいんだ?


「えっと……、不意に異性とキスしたくなったからかな」


 僕の馬鹿! これじゃあ、まるで変態みたいじゃないか。


「なるほど、そういう事。私でよかったら、いいよ。間接キスさせてあげても」


 納得するのかよ……。まあ、これでポイントを貰えるしいいか。


「でも、今は飲み物とか持ってないけどどうするの?」


「うーん考えて無かったな……、とりあえず水を買ってくるよ」


「じゃあ、私少しやることあるから、帰りでもいい?」


「ああ、授業が終わったらここに集合な。クラスだと何言われるか分からないし。んじゃ、そういうことで……」


よし、ひとまず水島はこれでいいか。問題はやっぱり北条か……。とりあえず、川崎に相談するか。


****************************


「もしもし、警察ですか?」


「人の話を最後まで聞いてくれ!」


教室に向かっていると、たまたまペットボトルのお茶を持った北条がいたので、「お前の飲んだペットボトルをくれ」と懇願してみたところ、こうなった。


「はぁ……、さっきからなんなの? そんなにセクハラしたいの?」


「違う、僕は北条と関節キスしたいだけだ!」


 一種、北条の顔が赤くなったように見える。


「ばっ……バカしゃないの⁉ この変態! まあ、でもどうしてもって言うならしてあげなくもないよ」


 なるほど……、つまりこうすればいいのか。 


 僕は正座をし、そのまま地に頭を付ける。一般的に言う土下座いとうものだ。  


「お願いします! この通りなので、ペットボトルを下さい」


「お前にはプライドって物が無いのか……、まあいいけどさぁ」


「そ……それじゃあ!」


「ただし、これで変な事しないでよね、例えば売ったり」

 

「お前は僕をなんだと思ってるんだ……」

    

 ひとまず、北条のやつは手に入れることに成功した。水島も後で貰えるとして、あとは相沢だけか……。


 まあ、あいつの事だ何とかなるだろう。


****************************


帰りに、部室に立ち寄り水島に買ってきた水を渡し、少し飲んでもらった。


これで、水島の分もいいわけだ。残るは相沢……、水島には相沢のお見舞いに行くということで、部活を休みにしてもらった。


「おっす、相沢久しぶり」


「あ……、まーくん。来てくれたんだ。珍しいね、今まで一人で来たこと1度もないのに……。まさか、ついにボクの事を求めにやってきたんだね!」


「そんな訳ないからな、ただのお見舞いだ。ほれ、お茶とプリン買ってきてやったから」


「わーい、ありがとう。ボク、プリン大好きなんだ」


目をキラキラ光らせ、相沢はプリンをもの凄い勢いで、食べ進める。


「そういや、この間のテスト結果どうだった?」


「嫌な事に、相沢が文句無しの1位だぞ。何も言うことは聞くって言ったが、現実的なものにしてくれよ」


 こいつなら、結婚とかもやりかねないしな……。


「じゃあ、どうしよっかな……。うーん、キスかな?」


「キスだと……」


 普段なら絶対に断るが、今日はむしろ僕がしようとしてたくらいだ。変なお願いより、全然ラッキーじゃないか!


「だめ……かな?」


「是非、キスさせてくれ」


 相沢が顔を前に出し、キスを待つ。こいつが女だったら、むしろやりたいんだけど……。


 いざやるとなると、やっぱ少し緊張するな……、僕はポイントのためだけでやりたくは無いし。そうだ、いい事を思いついた。


 僕は、指を相沢の唇につけそれを自分の唇につけた。


「ほら、キスだ。キスはキスでも関節キスだがな」


「むー……。まあ、まーくん指に触れられたからいっか」


「喜ばれたなら、良かった」


 一応、これで僕の目的は果たせたけど、これからどうするか。取り敢えず、世間話でもするか。


「相沢、お前の体調どうなんだ?」


「体調? まあ、いい方だよ。こうやって、まーくんと話が出てきてる訳だし。ひどい時は、人と話せないくらい辛くなるしね」


「そうか……、今度の修学旅行は行けそうか?」


「一応、お願いしてるけど……今のままじゃ、だめみたい」

 

 まあ、学校にも行けてないくらいだし、無理に行って、途中で倒れたりしたら大変だしな。


「そんな訳だから、ごめんね。行けなくて」


「仕方ないよ、体調が悪いんだったら無理行って更に病気が重くなったら、大変だし」


「はぁ……、まーくんと一緒にお風呂とか入りたかったのにな」


「もし行けたとしても、絶対に一緒に入らないからな」


 相沢と入ると、何されるか分かったもんじゃないし。


「仕方ないから、かーくんにまーくんの裸の写真頼もうかな」


「やめろ、バカ。それだと僕が風呂に入れなくなる」


「確かに、この案はやめよう。ボクのまーくんの裸が、他の人にも見られちゃうしね。」


「別に、お前のじゃねぇからな」


 僕の体は僕の物だ。なんで、こいつは勝手に自分のと認識しているのだろうか。


「そういや、ほーちゃんまだ怒こってる?」


 そうか、この間怒って飛び出したからか。


「見た感じは怒ってなさそうだったぞ。もう、気にしてはないと思う」


「そっか……この間はごめんね。いきなりあんなこと言っちゃって」


「別にいいさ。まあ、なんかあったらまた呼んでくれよ。すぐ来てやるから」


「もう、帰っちゃうの?」


「ああ、ちょっとやる事あるしな。んじゃあまたな」


「うん、またね……」


 本当に、この相沢が死ぬのか? なんか、考えられないな……。


****************************


 ポイントが、デイリーミッションのおかげで、30000ポイントほど増えたので、取り敢えず、エルイの報告の為部屋に呼んだ。


「おめでとうございます。良かったじゃないですか」


「そうなんだけどな……、やっぱりおかしいと思うんだよ。これって、良い事をするとポイントが貰えるってアプリなのに、あいつらとキスしても貰えるっておかしくないか?」


「そうですか? 私は別におかしくないと思いますが」


 こいつ、ポイタメは神が作ったって前に言ってたよな。確かに、普通のポイントが貰えるシステムはしっかりと出来ている。問題は、やはりデイリーミッションだ。


 普通に考えて、ここまで完璧なシステムを作っておいて、何故デイリーミッションだけ、キスしろだとか変なものにするか?


 そして、なんでここまで的確に僕達の事が分かるんだ? ずっと僕達を見てるってことか?


 考えている内に、ひとつの結論へとたどり着いた。


「ズバリ聞こう、このポイタメの作った製作者を神だとすると、デイリーミッションをたじているのは、別の誰かだろ。違うか?」


「違いますよ。これは神様が作って、神様がデイリーミッションを出してます」


 まっすぐとした、曇りなき眼。嘘をついているようには見えないが……。


「じゃあ、なんで僕達の事をここまで把握してるんだ? 例えば、相沢が死にそうだから病気を治せとか」


「さあ? 何処かで見てるんじゃないですか? 以外と暇してそうですし。それか、神様だから全てを把握してるとかじゃないですか?」


 神だからって、何でもかんでも把握してるもんなのか?


「そういうもんか……。ちなみに、エルイはデイリーミッションの内容をどう思ってるんだ?」


「私ですか? 私は別にいいと思ってますよ。水島さんや北条さん的に」


「なんで、そこで水島と北条の名前が出てくるんだ?」


「松山さんにはそのうち分かりますよ」


「でも……」


「はいはい、ここでこの話は終わりです。明日の朝も早いんですから、さっさと寝てくださいね」


「待てよ、まだ話しは終わってない」


 エルイは、僕の静止を聞かずそのまま部屋を飛び出した。


 結局、僕の聞いた質問に対して、しっかとした回答は得られなかった。


 その日の、午前0時を回った頃。僕はデイリーミッションを確認した。その内容は……、


「は? なんだこれ、意味が分からん」


 水島と北条、2人が自分の事をどう思っているのかと、相沢の本当の気持ちという3つだった……。


 やっぱり、神様は何がしたいんだ? 暇だからやってるのか、それとも……。


****************************


「それで、キスの次は水島と北条の松山に対しての気持ちが知りたいと……、お前本当にどうした?」


「頼むよ、川崎。お前だけが頼りなんだよ」


 いつも通り、イケメンの川崎に手伝いを頼んでいる最中だ。


 川崎なら、僕よりは女の子の気持ちとかは分かるだろう。


「まあ、別にいいんだけどさぁ……。あいつらの気持ちかぁ。うーん、なんて言えばいいんだろうか。ていうか、僕に聞くよりも直接聞いた方がいいんじゃないか?」


 まあ確かに、本当か分からない気持ちを聞くよりも、ちゃんとした正確な気持ちを聞かないと意味がないか。


「それで、どうやって聞くべきだと思う?」


「普通に直接『水島、僕の事どう思ってる?』って、言えばいいと思うけど……、どうせお前はそれじゃあ納得しないんだろ?」


「当たり前だ、前も言ったがそれが出来たら苦労はしないんだよ! それに、そんな事いきなり聞いたら変だろ。常識的に考えて」


 僕が女の子だったら、絶対におかしいと思うし。


「今お前がやってる事は、常識的なのか……。まあ、たまには俺が動いてやるよ。とりあえずお前は、帰りに部室に寄れ。北条を呼んで、上手く言っといてやる。水島は一緒に帰ればいいだろう。相沢はその後でまたお見舞いに行け」


「流石、川崎! 持つべきものはイケメンの親友だよ」


「イケメン関係あるのかな……」


****************************


 川崎に言われた通り、帰りに部室に寄ると、その場に北条が居た。


「川崎に松山から大事な話があるって聞いたんだけど……何かな?」


「ああ、来てくれてありがとう」


 川崎は大事な話があるって……変に誤解されるような事は言ったてないよな。


「それで、話って?」


「ああ、えっと。北条って僕の事をどう思ってる?」


 北条の顔は一気に真っ赤になり、僕と目を逸らす。


「えっと……、言わなきゃダメ……かな? 恥ずかしいんだけど」


「頼む、北条。僕はお前の本当の気持ちが知りたいんだ」


「こういうのって、男の人から言うべきなんじゃないかな……?」


 そうなのか? ただ気持ちを知りたいだけなんだが……。


「僕は北条の事を好きだと思ってるよ(友達として)」


「ほっ……本当? 実は私も松山の事……好き……だよ(本命)」


 これで、ポイントは貰えただろう。やっぱ好きって言われるのいいね、友達としてでも好かれられている実感が湧くし。


「そうか、ありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ。じゃあ、また明日な」


「えっ……これだけ? 愛の告白みたいなのは?」


「なのん話? 僕はただ北条の気持ちが知りたかっただけだぞ。それ以上でもそれ以下でもない……って、お前その棒で何する気だ、殴るのか? 殴らないよな!」


「乙女の純情を奪った罪は重いよ」


 北条に体のあちこちを棒で叩かれ、蹴りを入れられボロボロの状態で下駄箱に向かった。


「松山くん、遅かったね……って、その傷どうしたの!?」


「いやぁ、ちょっと転んでそのまま階段から落ちてね。安心して、ほとんど痛くないから。さあ、元気を出して帰ろう!」


「本当に大丈夫……?」


****************************


 帰りながら、話し始めてしまい、水島が僕をどう思っているのかを聞き出せないでいた。


「あの幼稚園は私立だし、なんか自由で、別に行っても行かなくてもいいんだよ。だから、こうやってすぐに休みにできるんだ」


「なんていうか、いい制度だなボランティア同好会」


「そういや、相沢さん。元気だった? 昨日お見舞い行ったんでしょ?」


「ああ、凄く元気だったぞ。プリンを渡したら一瞬で無くなるくらい」


 あれで、元気じゃなかったら逆にどうなんだろうか。



「そうなんだ……。相沢さんって本当に死んじゃうのか」


「見た感じは、体調悪くないんだけどな……」


「相沢さんって、人の前だと元気を装ってるのかも。本当は裏で泣いてたり」


「その可能性は十分あるんだよな。だから、心配なんだよな」


 そうこう話している内に、僕の家までたどり着いてしまった。


「じゃあ、また明日ね」

 

 言い出すタイミングは、ここしかないか……。


「ちょっと待ってくれ水島。大事な話があるんだ」


「そういや、そういう事で川崎くんによびだされたんだった」


「お前って僕の事どう思ってる?」


「思ってるって……どういうこと?」


「僕は水島が僕のことをどう思っているか本当の気持ちが知りたいんだ」


 嘘を言われると困るし、ここはハッキリ言わないとな。


「私の本当の気持ち……、本当に聞きたい? というかこの間言わなかったっけ?」


 この間……? ああ、お泊り会の時のあれか。


「もう一度聞いて確かめたいんだ」


「そう……私は松山くんの事が……好き……。これでいい?」


「ああ、ありがとう。じゃあまた明日な」


 そう言い残し、扉を開こうとすると……、後ろから服を掴まれた。


「待って、松山くんは私の事をどう思ってるの……?」


「僕か? 僕は水島の事、好きだよ。前は、そんなに好きじゃなかったけど、お泊り会をしたり、色々遊んだりして、イメージ変わったし」


「そう……。じゃあね、また明日」


 水島は顔を赤らめ、そう言い残してその場を去った。


 なんで、北条といい顔を赤らめるんだろうか。


****************************


「おっす今日も来たぞ」


「来てくれてありがたいんだけど。まーくん、部活はいいの?」


「ああ、水島も休んだから、何していいかわかんないし」


 一応買ってきた、プリンを渡すと速攻で開けて、食べ始めた。


「そんなに勢いよく食べてもプリンは逃げないぞ」


「わかんないよ? いきなりジャンプして逃げ始めるかもしれないじゃん」


「どんなプリンだよ……って、だから早いって。まあ、昨日こうなったからもう1個買ってきてあるんだけど……欲しい?」


 そう聞くと、北条は取れそうな勢いで、頭を縦に振りまくる。


「そうか、じゃあ1つ聞きたいんだけど。相沢の本当の気持ちってなんだ?」


「ん? どういうこと、意味がわからないんだけど」


 まあ、僕も意味が分からなかったしな……んっと、どうすればいいんだ?


「例えば、好きな人とか入るのか?」


 まあ、いつも僕の事を好きっていってるから、それ以外の人がいれば本当の気持ちって事になる……のかな?


「何言ってるの? いつも言ってるじゃん。まーくんだって」


「僕以外にいるんじゃないか? 本当は」


 多少強引にいかないと、答えてくれないだろうしな。


「やっぱり、まーくんは察しがいいね。そうだよ、私は他にも気になる人はいる、ほーちゃんだよ。昔から遊んだりしてね、気になってはいる。でも、まーくんの方が好きだからね!」


「別に、僕の事を嫌いになって、北条を好きになればいいじゃないか……」


 結局、これが正解だったらしく。昨日と同様30000ポイント手に入った。でも、僕は少しポイタメのデイリーミッションに違和感を感じていた……。


所持ポイント 281520

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