第8話 相崎と体とポイントと

「山場が近いって本当なの?」


周りは静まり、じっと相崎を見る。


「うん、ごめんね。だから……」


「なんで早く言ってくれないの!」


北条がそう叫んだ。僕はここまで悲しそうな表情をする、北条を見た事がなかった……。


「みーちゃんが、そんなに大変だったなんて、私はもっと遊びたかったよ。なのに、なんで……もっと早く教えてくれなかったの」


「えっ、ちょっとま……」


「みーちゃんなんて、勝手に死ねばいいんだー」


北条は、そう言って病室から泣きながら走り去っていった。


「まっ……まあ、相崎。本当に大丈夫なのか、なんかあったらすぐに言えよ」


「そうだよ相崎さん。みんなあなたの体を心配してるんだよ。何かあったらすぐに言ってね、私達飛んでくるから」


そう言って、水島と川崎は既に帰ろうとしていた。


「えっ、もう帰るのか?」


「松山くんもさっさとこっち来て」


僕が質問すると、答えてくれず水島が腕を引っ張る。


「じゃあまた今度ね!」


「うっうん……またね?」


何が起っているか分からないような表情をする、相崎。うん、僕もなんで帰らされるか分かんない。まあ居たくないし、むしろ帰りたい。


病室の扉を閉め、水島に聞いてみる。


「それで、なんですぐ帰る事にしたんだ?」


「だって、相崎さんはもうすぐ死ぬかもしれないんだよ。なのに、これからも元気でい続けることが私達がいたり、相崎さんは悲しくなるでしょ。さっきの北条さんみたいに、もっと遊びたかったのに…って」


言われてみたら、そうか……。ほとんど死ぬ事がわかってる、あいつからすると、僕たちがみんなで仲良くしてたりするのは辛いよな……。


「確かにそうだな。これからお見舞いに来る時はバラバラに来る事にしようか」


「うん、行く時に他の人にも連絡してから、行くことにしよ」


「うん、分かった」


「じゃあ、みんな解散しましょうか」


エルイのその一言で、皆解散した。と言っても、帰り道は途中まで一緒なので、みんなで帰った。


****************************


夜分遅く、エルイが僕の部屋に入ってきた。


「松山さん、お邪魔します」


「ああ、何の用だ? そろそろ寝ようと思ってたところなんだが」


僕の話など気にもとめず、その場に座り込む。


「少し、話がしたくて来ました」


いつになく真剣な顔で話し始める。


「そうか、それで何の話?」


「相崎さん、あの人をどうするんですか?」


「どうするって言っても何が?」


「病気を治すか治さないかですよ」


そんな事言われてもな……。


「治すか治さないか以前に、500000ポイントなんて、集まるわけないだろ?

20000ポイント集めるのにも1週間かかった訳だし 」


1週間だけなら耐えられたが、これがずっと続くと思うと、絶対に嫌だ。僕は女湯を覗く計画を立ててる

し……。


「でも、この間の人助けで100000ポイント貰えたじゃないですか! あんな感じに集めていけばすぐだと思いますけど」


「あれこそ、たまたまだろ? 命の助けを求めてる人間が沢山いてたまるか」


「それでも、友達じゃないんですか?

相崎さんと! 」


「友達だよ、でも500000ポイントを貯めるのに一体どれくらいの時間がかかるんだよ! マイナスの事も考えたら、そう簡単に出来ないんだよ」


僕だって、相崎を救えるかどうかを考えてみたが、僕の性欲の暴走とかを考えた時に、どれだけのポイントが下がるか分かんない。


「マイナスって、ただの松山さんの性欲がだいたい問題ですよね! だったらポイントを使って無くせば解決じゃないですか!」


「そんな事をしたら、僕の1番の個性が失われるだろ! 少しは頭を使え、この馬鹿」


「アッタマきましたよ。拳で語り合うしかないようですね」


「ああ、やってやるよ!!」


「二人ともうるさいのです!」


喧嘩を始めようとした瞬間、扉が開き廊下からりろが来た。


「こんな夜中に、近所迷惑なので喧嘩ならよそでやってくださいなのです」


「ごめん、りろ。今この馬鹿を黙らせるから」


「ごめんなさい、りろちゃん。今から女たらしの松山さんを、ボコボコにするからしすがになります」


お互いが睨みあってると、りろが僕とエルイの間に割って入ってきた。


「そういうことじゃないのです。二人とも、もういい高校生なのですから、もう少し常識的を知ってください。さっきも言いましたが近所迷惑なのです。やめないと、夜中の中途半端な時間に意味もなく起こすのです」


「スマン、言い過ぎたよエルイ」


「私も言いすぎました。ごめんなさい」


「それでいいのです。喧嘩するほど仲がいいっていうのです」


りろは、そう言い残し部屋を出た。


「それでだ、さっきも言ったが無理なもんは無理な……ん?」


僕のセリフの途中、スマホの着信音が鳴った。こんな時間になんだ、と思いながら見てみると、着信音の発信源はポイタメだった。


恐る恐るポイタメを開いてみると、そこにはモンスミッションという文字が新しく表示されていた。タップすると、そこにはこう書かれていた……


『モンスミッション。修学旅行前日までに、ポイントを使い相崎の病気を完治させ、命を救え』


「なあ、モンスミッションって失敗するとどうなるんだっけ?」


「強制的に地獄に落とされますが、それがどうかしたんですか?」


「いや、今そのモンスミッションってのが送られてきてな、達成不可能な気がしたから」


つまりだ、修学旅行が4週目の土曜からだから、約21日間でクリアしなきゃいってことだ。うん、どうしよう。


「どんな内容だったんですか?」


「えっと……」


送られてきた内容包み隠さず話す。


「マジですか……、でもどうするんですか? 先程松山さんが言った通り、無謀じゃないですか」


「なあ、これってポイントを使ってモンスミッションを変更とか出来ないのか?」


「可能です。ただし、変更されたものは必ず、前以上に難しくなります。それだけは注意してください」


 今以上難しくなるって……、600000ポイントを必要としてくるやつとかか。


「でも、500000ポイントなんてどうやって集めれば……」


「毎朝早起きして前に言ってた教室掃除をして、なおかつデイリーミッションをクリアすればいけるんじゃないでしょうか」


「デイリーミッションは、変なやつばっかなんだよ。だから毎日出来るとは限らないし、朝も起きれるかどうか」


「そうですよ……、でもやらなきゃ地獄行きですよ?」


「分かってるよ、そうじゃなかったらやらないし。はぁ……やるしかないか」


「頑張ってください。私からはそれしか言えません」


エルイはそう一言を残し部屋から立ち去った。


さて、どうするか。エルイが言った通り、朝起きて掃除するとしたら、修学旅行までに学校に行く日は15日間。掃除で集まるポイントが7000なのでざっと100500ってとこか。


それと今持ってるポイントを合わせて201500、後298500をどうするかだ。それに、僕の事だ絶対に週一で問題を起こし、ポイントがマイナスになるだろう。それをざっくり考えると360000は必要になって来るだろう。


デイリーミッションがまともなやつが来ればいけるが……今までのを見てる限りそれは無理だろう。町のゴミ拾いとかした方がいいか……。


****************************


「……ん? ああ、寝ちゃったのか」


窓から朝日が差し込み、僕は目覚めた。よだれを垂らしたらしく、色々とどうするかメモった紙はぐちゃぐちゃになっていた。


「夜中の、頑張りはなんだったのか……、まあほとんど覚えてるしいいんだけど」


よだれが付いた紙を捨て、リビングへと向かう。すると、既にそこにはごはんを食べている、エルイとリろの姿があった。


「あっ、お兄ちゃん。おはようなのです!」


「松山さん、おはようございます。今日は遅かったですね」


「昨日、夜遅くまで考えてたけど寝落ちしたんだ。てか、朝からなんでそんなもの食べてるんだ?」


エルイとりろが食べていたものは、朝から食べるのはキツいであろう、オムライスだった。


軽い方だけど、朝から食べるものでは無い。


「何言ってるんですか? 今13時ですよ? これは、朝ごはんじゃなくて昼ごはんです」


「そういうことか……って、僕は完全に寝坊じゃないか! さっさと朝ごはんを食べてポイントを集めに行かなきゃ!」


台所に僕の分のオムライスも用意されていたので、それを急いで食べる。味は普通に美味しい、エルイが作ったのだろう。


「じゃあ、行くぞエルイ! さっさと食べて行かな……」


「待ってくださいなのですお兄ちゃん」


僕が、リビングを出ようとするとりろに呼び止められた。


「お兄ちゃん、米粒が残ってるのですよ。しっかり食べないと、行ってはダメなのです」


「で……でも、お兄ちゃん。とっても急いでるんだけど」


「お兄ちゃん。世の中にはですね、ご飯を食べたくても食べれない人か大勢るのです。なのでら食べれることにありがたみを感じるのは当然なのです。それでもお兄ちゃんは残すのですか?」


「分かった、食べるから絶対食べるから、そんな泣きそうな顔でこっちを見ないでくれ!」


少し残った粒を食べきり、部屋を出る。いつからだっけな、りろがこういう事を言い出したのは……。


****************************


「よし、ポイントを集めにいくぞ!

エルイ 」


「毎回言ってると思いますが、私付いて行く必要ありますか?」


「一人だと僕が寂しいだろ?」


一人で、ずっといいことし続けるのは精神的にも来るものがあるし。


「松山さんの、事情に私を巻き込まないでくださいよ。前にも言いましたが、北条さんとか水島さんにポイタメの事話して、付いてきてもらればいいじゃないですか」


「だから、前にも言ったけどそれはなんか違う気がするから、ダメだ。僕のラブコメ的にはな」


「何言ってるんですか、女たらしのクセに」


こいつは何を言ってるんだ? 僕が女たらし? 煽ってんのかこいつ。


「いつ、僕が女の子とイチャコラしたんだ? 言ってみろよ! こちとら彼女居ない歴イコール年齢だわ」


「何言ってるんですか! 傍から見たら松山さんは、変態もしくはラブコメの主人公ですよ? そろそろ自覚してください」


「んなわけねぇだろ! 僕の何処がラブコメの主人公だって言うんだ? まだスタートラインにも立ててないんだぞ」


「スタートラインどころか、もうゴール直残なの理解してください。鈍感主人公を現実でやると、ここまでタチが悪いんですね」


「さっきからなんだよ、拳でやるのか?」


「昨晩は、りろさんに邪魔されましたが、受けて経ちますよ」


殴り合いを始めようとする、その瞬間後ろから誰かに殴られた。


「痛ってえ……誰だ」


後ろを向くと、そこに居たのは昨日泣きながら帰った北条だった。


「何やってんの二人とも、喧嘩するほど仲がいいって言うけど外でやるのは周りの人に迷惑だから家でやりなよ」


家でやったら、りろに怒られるんですけどね。北条に、そう言われて少し熱が収まり、我に返った。


「エルイ、スマン言いすぎた。悪かったな」


「こちらこそ、すいません。無神経な事言ってしまって」


「うんうん、そうやって仲直りをすることも大事だよ。それで、何が原因で喧嘩してたの?」


いい事をするから付いてきてって言って喧嘩になった、なんて言ったら馬鹿にされるだろう。ここは、少し誤魔化そう。


「いや、まあ色々とね……」


「……? まあ、いいや。それより、二人で外にいるってことはどこかに行こうとしてたの?」


「ああ、というより世のため人のために良い行いをしようかなと……」


「例えばどんな?」


例えばか……土日の事はあんまり考えてなかったし、ノープランで出てきたけど、適当に言っとけばいいか。


「うーん、例えばこの間みたいに迷子の子を交番まで連れて行ってあげるとか、お年寄りの方が持っている重そうな荷物を持ってあげるとか」


「まじでそんな事するの? 大丈夫、なんか変なものでも食べた?」


「僕をなんだと思ってるんだ……。まあ、たまには良い行いをしようってことあるじゃん。それと同じ」


「ふーん、そうなんだ」


北条は、少し納得のいかない顔をする。まあ、問題児の仲間の一人がいきなりそんな事を言い出したら、何かあると思うわな。


「じゃあ、私もついて行っていい?

たまには、良い行いしないとね 」


「ああ、別にいいぞ」


一人増えたところで、いい行いをする事には変わりないしな。


「北条さんが居るなら、私はこれで」


「ちょっと待てよ、エルイ。せっかくここまで来たんだから、みんなで行こうぜ」


「嫌ですよ。松山さんが寂しいからってついてきましたけど、今は北条さんが居るから寂しくないじゃないですか」


北条に聞こえないようにエルイの耳元に小声で話す。


「北条だけだと、何されるか分からないし、エルイもいた方が安心するじゃん」


「だから、嫌ですよ。私にだってやりたい事はあるんですよ。お昼寝とかゲームとか」


「よし、暇だな。あと大体のラブコメとかだとこういうのには毎回ついてくるもんなんだよ!」


「松山さんがよく言う、大体のラブコメとかって、なんなんですか。そんな事こっちは知りませんよ」


「大体って言ったら大体なんだよ!

なんで、昨日からそんなに反論とかしてくるんだよ 」


「松山さんが変な事言いまくってるからでしょ!」


「だから、2人共喧嘩しない」


そう言って、北条に思いっきり頭を叩かれた。


「痛ってて……」


「これで、少しは冷めた?」


「ああ、スマン。なんでこんなに、僕もイライラしてるんだろう」


昨日夜遅くまで、考えてたせいで寝不足なのかな?


「すいません、松山さん。私も少しイライラしていて……」


「そうか……、まあ仲直りという事で良い行いをしに行くか」


「仲直りという事で良い行いをしに行くのは、よく分かりませんが。仕方ないので今日はついて行きますよ」


そう言って、エルイは前に歩き始めた。本当はいきたかったんだ、ツンデレめ。


「何してるんですか? さっさと行きますよ」


「分かってるって、北条も行くぞ」


「はいはい」


****************************


「松山さん、本当にノープランで来たんですね」


「なんていうか……スマン」


完全にノープランで来たせいで、全く助けてもらいたそうな人はおらずポイントが全くたまらなかった。


「今更だけど良い行いをするんでしょ? じゃあゴミ拾いでもすればいんじゃなかいかな。別に人を助ける事だけが良い行いじゃないし」


「まあ、そうなんだけどな……」


ゴミ拾いは、貰えるポイントがかなり低い、だからあまりやりたくはなかったが……何もしないよりはましか。


「じゃあ私、ゴミ袋家に帰って持ってくるね」


「分かった、じゃあ僕達はその間……何してようかな。まあ、グダグダして待ってるわ」


「はいはい、走ってすぐ取ってくるからあんまり時間かかんないと思うから」


北条の後ろ姿はみるみるうちに遠くなり、見えなくなった。


「あいつ、本当に運動部入ればいいのにな」


「松山さんは部活入らないんですか?」


部活……めんどくさい。ポイントを集めなきゃいけない今現在、入れるわけがない。


「入る気は無い、忙しくなってポイントが集められなくなりそうだし」


「結構前に思ったんですが、水島さんが所属してるボランティア同好会に参加しないんですか? あそこに入れば自然と良い行いとか、出来ると思うんですが」


そうか、その発想はなかった。確かに、ボランティア同好会なら自然と良い行いをする事になるだろう。月曜日に、なったら水島に聞いてみよう。


そうこうしているうちに、北条がゴミ袋と火バサミを持ってやってきた。


「お待たせ、少し遅くなっちゃった」


「遅いどころか、速すぎる気がするんだが……」


北条から、ゴミ袋と火バサミを渡された。地味に火バサミをもつのこれが初めてな気がする。こういう掃除はやった事なかったし。


「それで、どうするんですか? 適当に歩きながらゴミを拾う感じでいいんですか?」


「別にそれでいいと思う。北条いいよな?」


「私はなんでもいいよ」


そうして、僕達のゴミ拾いは始まった。4時間ほど拾いつずけたが、手に入ったポイントは3060ポイントだ。


何も考えずに突き進んだせいで、そんなにゴミはなかった。


「ふぅ……ひと仕事終えた後のオレンジジュースは格別だね」


「疲れた後って大体美味しく感じますからね」


「じゃあ、今日はこの辺にして帰りますか」


ポイントの効率も悪いし……、これ以上やってもあまりポイントは得られないだろうし。


「よし、じゃあ解散しようか」


「そうだね、疲れたし。じゃあ、待た月曜日ね」


北条はそう言って、走り去って行った。


「じゃあ、僕らも帰りますか」


「はい、じゃあ行きますか」


****************************


「はぁ……、なんか頭痛いし。眠いな」


「松山、それはお前が寝すぎなだけだ」


2日前に、寝不足でイライラしていたので昨日1日ずっと寝ていた。更にそのまま学校でも寝てしまい、現在に至る。


「仕方ないじゃん。眠かったんだから」


「昨日はどうだったんだ? そんなに寝てないのか?」


「むしろ、1日中寝てたくらいだ」


「ふーん」


先程も言った通り、昨日はほとんど寝ていてポイントが手に入らなかったが、今日は朝早く起きして教室や廊下掃除ができたので7000ポイントを手に入れた。


「そういや、テスト結果どうだったんだ?」


「相沢と水島、両方に負けて3位だ」


「普通に高いからいいじゃないか」


「良くない! 負けたやつは勝った人の言うことを1つ聞かなきゃいけないんだ」


「その程度じゃないか、俺なんて補習だぞ」


「その程度ってなんだよ、その程度って! あの相沢と水島だぞ!? 絶対やばい事をお願いしてくるだろ。というか、別に僕も補習あるからな」


問題児は定期テスト時、全員がやるテスト以外にもうひとつ、道徳のテストがある。今回のテストは、ちなみに21点だ。


「はぁ……せっかく今日から部活なのに、なんで補習があるんだよ……。松山、前に部活作るみたいなこと言ってたけど、あれはどうなったんだ?」


「あー、そんな事も言ってた気がするな。あれはやめた。僕はボランティア同好会に入ることにしたわ」


「へーそうなんだ……は? 今なんつった?」


川崎は驚いて顔を近づける。僕なんか、変な事言ったか?


「ボランティア同好会に入るって」


「水島の参加してる、あのボランティア同好会?」


「そのつもりだけど、なんでそんなに驚いてるんだ?」


「いや……ちょっとな。以外っていうか」


 以外か……、ボランティアとかするように見えないのかな。


「そうか? それでなんだけど、僕が入るから川崎も入らないか」


「ボランティア同好会に? 入らないからな。僕はこれでも陸上部のエースだぞ。今抜けたら大会とかに影響を受ける」


「そうか……」


 お弁当を食べ終わり、席を立つ。


「ちょっと行くところあるから」


「また、なんかやらかしたのか? 番人によろしくな」


「お前の中で僕が用事があるイコール問題を起こしたなのか……」


 そんな、やり取りを終え教室を出る。どんな用事があるかというと、部活の入部用紙の受け取りだ。


 どうせなら、いきなり入って驚かせたいので朝のホームルームで言わず、お昼の時間に貰うことにした。


「失礼します」


 一言そういって、職員室に入り担任のいる場所まで行く。


「どうしたんですか? 松山くん」


「先生、部活の入部用紙を下さい。4枚……いや、5枚ください」


「そんなにたくさんいるんですか? まあ別にいいですが。ちなみになんの部活に入る予定なんですか?」


 先生は、入部用紙を引き出しから取り出し僕に渡す。


「ボランティア同好会です」


「ほお、ボランティア同好会ですか……。水島さんもさぞ喜ぶことでしょう」


水島が喜ぶ……? 何故だ?


「松山、部活に入るのはいいが。問題は起こすなよ」


先生と話していると、その前に座っている番人が割り込んできた。


「分かってますって、僕がそんないきなり問題起こすと思いますか?」


「ああ、思うぞ。お前を信じてるからな。まあ、そんな事よりもし苦情が入ったら即刻部活を退部させるから覚悟しとけよ」


「分かってますって」


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