第7話 テストとなのです
闇鍋というものをご存知だろうか。暗い場所で鍋の中に好きな食材入れあって食べるあれだ。
まあ、普通に友達とかとワイワイ遊ぶたくらいならまだいいが、もしその中にダークマター製造のスペシャリストがいるなら、即刻中止したほうがいい……なぜなら。
「お兄ちゃん、もう駄目なのです」
「起きろりろ…………りろぉぉぉ!」
このように死人がでる可能性があるからだ。
「誰だ、鍋の中に餃子の皮で包んだマシュマロ入れたやつ!」
一人一人、好きな数の食材を入れて良いというのが仇になった。水島も北条もみさも全員、本気でふざけて食べ物ではない何かを完成させてしまった。
水島がひと混ぜした瞬間、見た目が黒黒としたダークマターへと変貌し、更に北条がひと混ぜすると、見た目だけではなく味までもダークマターとなってしまった。
これはむしろ、一種の特殊能力なのではないだろうか……。
「じゃあ、次は私の番ですね!」
エルイは、更っと見えない何かを掴み口へ運ぶ。
「美味しいです」
うっそだろ、このダークマターを食べて気絶しないどころか美味しいなんて……。
「次は俺の番か……、頼む味があんまり染みてない物を……うう不味、いや以外と美味しいな」
川崎が取ったのは当たりのハムカツだったらしく、あまり染み込んでいないし、たまたま北条がかき混ぜる時にお玉に当たらなかったのだろう。
「次は私か。……おrrrrrrr」
水島が勢いよく、鍋から掬い口に運んだ瞬間、それを吐き出しダウンした。
「まさか、昨日の二の舞になるなんて、僕は嫌だぞ」
「大丈夫だって、この程度でダウンするわけオロロロロロ」
「言ってる傍から吐くんじゃねえ!」
流石に、闇鍋はキツかったのか北条もダウン。
「私も匂いだけで……すいません」
続くように、みさが酔ったように倒れてダウン。
「そして、僕の番か」
意を決して、僕は適当に掴んで口に運ぶ。
「オロロロロロ」
何だこの味は……やばい意識が。
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朝日が差し込み、意識が覚醒する。僕以外まだ起きていないらしく、皆寝っ転がっている。
「もう、朝か……このダークマターをさっさと片付けなきゃ」
ダークマターが入った鍋とお皿を片付け一息つく。
今更だけど、今日は学校か……。頭痛いし行きたくねえな……、特別採用の特権使って休もうかな。
そんな事を思いつつ、カレンダーを見ると赤文字でテストと書かれていた。
「テスト……テストじゃねえか! 今……8時10分だと? やばいぞみんな起きろ!」
体を揺さぶったり、水をかけてようやく起きた。
「朝からなんですか? まだ眠いんですけど」
「そうだよ、松山くん。もう少し寝かせて」
「違う、今日テストなんだよ! 僕も休めないじゃないか!」
特別採用は、この学校の学力をあげる為の仕組みであるため、テストの日だけは必ず出席して、受けなければならない。
「えっ、今日テストなの? 私全く勉強してないよ」
北条が絶望な顔でそんな事を言う。それに対して、川崎は……。
「むしろ、お前ら忘れてたのか? とは言ったものの、俺も闇鍋で倒れることは想定してなかったから制服とか鞄とか持ってきてないがな」
よく、そんな堂々と言えるな。しかしまあ、僕は困らないがこいつらどうするんだ?
「こういうのはどう? ひとまずこの私服で登校して、番人と担任に事情を説明するってのは」
「普通だけど、確かにそれしかないね。今から取りに帰っても間に合うはずもないし……」
「それじゃあ僕は着替えてくるから」
そう言って、その場から立ち去ろうとすると、3人が僕の肩を掴んできた。
「何するんだ、離してくれよ。このままじゃあ、着替えに行けないだろ?」
「松山、俺たちは親友だよな。親友が困ってる時に、1人着替えるとかそんな事はしないよな?」
「川崎くんの言う通りだよ、私達が困ってるのに、お泊まり会の主催者がそんことするなんて」
「松山、私は信じてるよ」
「いやだ! 僕は家を提供したんだぞ。それくらい、いいじゃないか!」
第一、闇鍋さえやらなければこんなことにはならなかったんだから、そいつを攻めろよ!
「分かったよ、僕も私服で行ってやるから離してくれ」
「分かればいいんだ、分かれば」
三人が肩を離した瞬間、僕は思いっきり走り出したが、速効で川崎に服を掴まれた。
「なあ、松山。俺ら何年一緒にいると思ってるんだた? お前の考えなんてお見通しなんだよ! 諦めて行くぞ、松山!」
「分かった、分かったから! せめて筆箱を持ってかせてくれ、全員分貸してやるから!」
「逃げ出す可能性があるから俺も付いていくからな」
川崎に服を掴まれたまま、僕の部屋に来て、文房具を四人分用意しリビングへと戻る。
「なあ、今更なんだが。僕が駄目ならエルイはどうなんだ? あいつも着替えられるぞ」
なんで、僕だけここまで言われ続けてエルイは何も言われないんだか……てか、エルイは何処だ?
「エルイさんなら、さっき一人で学校向かったのです!」
りろのその言葉を聞いて、僕達は即刻家を飛び出した。
「あいつ1人だけ、まともな格好させるな!」
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「そんな格好の理由は分かった。問題児二人は、特別採用だからまだいいとしても、川崎と北条の二人は別室でテストを受ける事になるからな」
「「はい……」」
別の先生に川崎と北条は連れていかれた。
「で、お前らなんだが……松山。お前1週間に1度何かやらかす呪いでも掛かってるんじゃないか」
「先生、今回は僕のせいじゃないですよ。闇鍋をしようって言い出した、川崎の責任ですよ!」
闇鍋をしなければこんなことにはならなかったし……。
「そもそもだな。テストの期間中にお泊り会を開いた、松山が悪い。人のせいにするな」
「それだって……」
泊まりたいって言われたから、お泊り会開いたのに僕が悪いのか?
「まあ、お前ら特別採用相手にこれ以上は言わない。次から気をつけろよ」
「はい……」
僕と水島は指導室を出て、教室へと向かった。
「今回の件はさあ、僕のせいなのかな? 番人が、お泊り会を開いたお前が悪いって言ってたけど。北条とか川崎がそもそも泊まりたいって言ったから、僕は家を提供しただけだしな」
「松山くんのせいでいいいんじゃない? 松山くんなら、別にそこもまで怒られずに済むけど、あの二人だったらもっと怒られそうだし」
「そうだけど……」
川崎は普通に入学したし、北条はもともとはスポーツ推薦だ。つまり、退学の可能性があるが、僕の責任ならばあいつらはそうなる危険性がないしな。僕は問題児だし。
「そういえばだけど、テストの点数勝負する?」
「もちろん。いつも通り、なにか賭けようぜ」
この学校で、僕より頭いい人間は二人いる。その内の一人である水島と、1年の頃に勝負しかけた。結果はもちろん惨敗。
負けず嫌いってほどでは無いが、水島には負けたくなという気持ちが高まり、今まで続いている。
「私が勝ったら、りろちゃんとエッチな事をゲフンゲフン……、松山くんが1つ私の願いを聞いて」
「なんか、やばい言葉が聞こえた気がするが気のせいだな。じゃあ、僕が勝ったら、今後一切りろに変な事を吹き込むな」
「えーーーー」
「えーじゃない! これ以上りろがよからなぬ事を覚えたら色々と面倒くさそうなんだよ!」
今でさえ、少し面倒くさいのに……。まあ、可愛いからいいんだけど。
そんな事を喋っていると教室に着く。みな座って最後の詰め込みをしているようだ。
「そういや、今日テストならあの子来るかもね」
「そうだな、僕的には来なくて欲しいんだけどな……」
そんな事を喋っていると、ガラガラと扉が開き廊下から、例のあいつがきた。
その名は……
「初めましての人は初めまして! クラスメイトの
相崎 緑。人形かと思わせるほど顔だちがよく、どんな人に対しても優しく接し、中学の時の成績は僕と水島を凌駕する全国模試堂々の1位だ。
だが、体が弱いようで基本的には特別採用の特権で休んでいるので、こういうテストの日しか会えないのだ。
「あ! まーくんとみーちゃんお久しぶり。同じクラスだったんだ」
相崎は手を振りながらこちらに歩いてくる。
「ああ、久しぶりだな。最後に会ったのって確か3月の期末テストだったよな?」
「確かにそうだね。もう、あれから3ヶ月も会ってないって思うと、時間が経つのが早く感じるよ」
「相崎さん。それで体の具合はどうなの? テスト終了までもちそう?」
「うん、多分もつと思う。でも、明日明後日は分かんない」
「そっか、じゃあ僕はこれでな。頑張れよ」
その場から立ち去ろうとしたが、相崎に服を掴まれる。
「待ってください。久しぶりに好きな人に会えたんですから、もう少し喋りたいです」
「一応聞こう、その好きな人は誰だ?」
「もちろん、まーくんだよ」
そう言って、僕に抱きつく。
こんな美少女に、抱きつかれたら……普通ならば興奮するが、こいつの場合、全くしない。何故なら……、
「やめろ、抱きつくな! 相崎、お前は男だろ!」
相崎は、美少女ではなく、俗に言う男の娘というやつだ。初見だと全く分からず、男に告白されたことも何回かあるそうだ。
そういう訳で、こいつは女だと思ってたら男だったという理由で、北条と水島と同じく残念の中に入っているのだ。
「性別なんて関係ないよ! 性転換すれば女の人にもなれるし」
「それをしても、体は男だろ!? いいから離れろ。僕はホモ属性は持ってないんだ!」
「そこまで、嫌がっているなら離れるよ……」
男の娘は確かに可愛い……それは認める。だけど、興奮は出来ない。だって男だもん。
「じゃあ、僕は今度こそこれで」
「ねえ、相崎さん。今回のテストで松山くんと負けた方が勝った方のお願いを聞くっていう勝負してるんだけど、やる?」
後ろからそんな言葉が聞こえ、水島を掴んだ。
「ちょっと待て、相崎を入れるのか」
「駄目だよ。松山くん、みんな見てるのに、脱がせろなんて」
「まったくもって、そんな事言ってねえよ! そうじゃなくて、なんで相崎をこの勝負に入れるのかってこと」
相崎の1位は、ただ普通の1位ではなく、全教科オール満点と、化け物じみている。
無論、1年の頃のテストもオール満点だ。そんな奴に勝てるはずがないのは、水島も分かっているはずだ。
「負けた方が、勝った方の言う事を何でも聞くのか……ボクもやるよ! そして、まーくんをえへへっ」
「相崎、常識の範囲内でだからな!
結婚とかはなしだぞ 」
「分かってるって、何にしようかな〜」
駄目だこいつ、絶対話聞いてねぇ。そうこうしていると、うちのクラスの試験官である番人が教室へ入って来た。
「お前ら、テストを始める。さっさと自分の席に座れ!」
唯一立っていた僕と水島と相崎はその声で自分の席へと戻る。
番人がうちのクラスに毎回来る理由はもちろん、問題児が3人も揃ってるからだ。
「早速、テスト用紙を配る。カンニングしたものは、後で俺からキツい指導が待ってるからな、覚悟しておけよ」
****************************
「ふぅ……やっと終わったか」
3時間分のテストが終え、自分の席で背中を伸ばしていた。
「お疲れ……、どう? 私に勝てそう?」
「多分勝てる……と思いたい」
一通りは出来たものの、勝てるかどうかと言われたら微妙なところだ。既に何問か間違えたことは判明しているし……。
相崎も僕と水島の会話に参加し始める。
「そういえばなんだけど、なんでまーくんとみーちゃんは制服じゃなくて私服なの?」
「それには色々事情があってな……」
相崎にお泊まり会の事を話したら、包丁かなんかで刺してきそうだな……、よし黙っておこう。
「実はな……」
「1泊2日のお泊まり会したんですが、昨日の夕飯の闇鍋を食べたせいで意識が飛んでしまい、朝起きた時には帰って制服を取りに行っても間に合わなかったからそのままきたんです」
いきなり来た、エルイが長々と全てを暴露してしまった。こいつ、マジで戦犯じゃねえか。
「へーそうなんだ。ちなみに誰がいたのかな?」
「えっとですね、私と松山さんと水島さん、あと何故かここに居ない北条さんと川崎さんですね!」
エルイのその返答に相崎は殺意の籠った笑顔になった。
「ねぇねぇ、まーくん。なんでボクを誘ってくれなかったのかな? 」
「……いや、それは学校に来てないし、相崎の体調を心配してだな」
「お泊まり会の為なら、余命宣告されててもいくよ! あと、川崎くんもいたんだよね、まさか一緒にお風呂とかはないよね?」
「それはですね……」
「言わせるか!」
エルイが再び余計な事を言い出す前に口を手で押さえ込んだ。もう、お前は喋るな!
「そんな訳ないじゃん! いくら、親友だからって一緒にお風呂に入るなんてことしないよ」
「そうだよ、相崎さん。松山くんは私と一緒にお風呂に入ってたんだから」
「バカ、余計な嘘を言うな!」
「へーそうなんだ。まーくん、女の子と一緒にお風呂に入ってたんだ。へー」
目が笑ってない、こいつ僕を殺す気か!?
「ボクが勝ったら裸のお付き合いしてもらおうか……くっ、ゲホゲホ」
喋っている途中、突如咳き込みその場に倒れ込んだ。
「相崎、大丈夫か? おい相崎しっかりしろ」
「うっうう……」
意識は朦朧としており、僕の事も見えてないようだ。
「いきなりどうしたんですか!? この、相崎さんって人」
「体が弱くて、あんまり外に出られないのに無理してテスト受けに来たうえ、僕たちと盛り上がって話してたから、体に負荷が掛かったんだと思う」
「大変じゃないですか! 早く病院に連れてかないと」
こういう時は、どうすればいいんだっけな……。
「分かってる、取り敢えず保健室に連れて行こう。僕が担ぐからエルイは番人に水島は保健室の先生に事情を説明して親を呼んで、それまでの看護を頼んできて」
「分かりました」
「うん、分かった」
僕の言葉を聞いて、一目散に水島とエルイは走り去って行った。
「意外と軽いな……」
相崎を担ぎ独り言を呟く。こんな時に言うのもなんだが、これで女の子だったら完璧なのにな……。
僕はあまり揺らさないようにしながら、保健室まで連れて行くと、そこには保健室の先生と番人、呼びに行った水島とエルイ。そして、別室でテストを受けていた北条と川崎までもそこにいた。
「松山、お前は本当になにか問題を持ってくるのが好きだな」
「今回の件については僕にあまり責任ないと思いますが」
番人とそんなやりとをして、担いできた相崎を渡す。
「まあ、問題児のお前が珍しく人を救ったことは褒めてやる。お前も成長したな」
「なんか、素直に喜べないですけど……、それで相崎の体は大丈夫なんですか?」
「そこまで酷くはないと思う。本当に酷かった時は吐血もしてたし……、今日の場合、そのまますぐ帰宅すれば良かったのに、色々と興奮することが多かったんじゃない?」
保健室の先生に言われた通り、相崎は久しぶりにあって興奮したり、変な事を考えて興奮したり、怒って興奮したりしてたからな。
「そろそろ、お迎えが来ると思うから。みんな帰りなよ、明日もテストでしょ」
保険室の先生にそう言われ、帰らざるおえなくなった。別に一緒にいたいとかじゃないけど。
「分かりました。それでは僕達はこれで……」
そう言い残し、保健室から出た。
「みーちゃん、久しぶりにあったのに倒れてるなんてなー」
「北条さんとも相崎さん面識あったんですね。親しいようですし」
「みーちゃんは元々私の幼なじみだったんだけど、引越しちゃって高校で再会したの」
「そんな繋がりがあったんだ」
水島と北条がそんな会話をしている中、他の人には聞こえないような声でエルイに耳打ちする。
「なあ、エルイ。ポイタメで人の病気を治すことも出来るのか?」
「もちろん出来ます。ただ、病気によってかかる量のポイントも変わりますが」
相崎の病気ってどれくらい重いのだろうか。今まであまり考えたことは無かったが、日常生活が送れないってかなりやばくないか?
その場でポイタメを開き、ポイントを確認すると、所持ポイント101000と表示されていた。
先程の行いが人命救助として認識論され、100000ポイント貰えたのだろう。てか、これを使えば普通に病気を無くすことができるのではないか?
すぐにポイント使用で調べた結果、相崎の体を治す為には500000と今持ってるポイントの約5倍であった。
いくら、友達のためとはいえ流石に500000も集められるわけが無いか……。
「はぁ……」
「どうしたんだ? ため息なんかついて」
「別に川崎には関係ない」
「そうか……」
****************************
1週間に渡りテスト期間が終了した。
結局、1日目以外相崎は来なかった。体調が優れなかったのであろう。
「ねぇ、テストも終わったしみんなでみーちゃんのお見舞いに行かない?」
そう言い出したのは、北条であった。
「俺は別に暇だからいいぞ」
「私も……暇」
「私もご一緒します!」
みんなが了承する中僕は……、
「相崎に会いたくないからパスでいいか?」
断った。だって、見舞いに行ったら抱きつかれて一生離れないとか言われそうだもの。
「言いたいことは分かる。でも、用事をないんでしょ? なら、少しくらいあってあげてもいいじゃん」
「僕にだって、用事くらいあるぞ。今日は女湯を覗こうと思ってたんだから……痛い痛い! 分かった分かったから、行くから曲がらない方に腕を曲げようとするな!」
本当に北条は何かあると暴力だな……。
「じゃあ、早速行こう!」
「「「おお!」」」
お前らあいつとそんなに仲良かったのか……、てかエルイは昨日始めて会っただろ、どんなけコミ力高いんだ。
まあ、お見舞いに行ってすぐに帰ればいいか……。
そんなこんなで、僕達は相崎のお見舞いに行くことになった。
****************************
「ここが、相崎の入院してる病院か」
テスト初日に体調を壊して、もしもしの時のために入院している場所だ。
「じゃあ、私面会できるか聞いてくるから」
そう言って、北条看護師さんの受付へと向かった。今逃げたら、後でボコボコにされるかな……?
「なあ、松山。ちょっとあっちで話さないか?」
川崎にそう言われ、皆に話し声が聞こえない場所に移動した。
「昨日聞きそびれたんだが、お前と相崎ってどんな関係なんだ?」
「そんな事で移動したのか? 別にあいつらの前でも良かったのに」
「いや、水島の前だとちょっと面倒くさそうだし……」
よく分からんが、とりあえず教えればいいんだよな?
「僕と相崎はただの、特別採用仲間なだけだぞ?」
「それだけで、相崎さんはお前に好きとか言ってるのか? 本当はなんかあるんじゃないのか?」
「あいつは一目惚れとか言ってたし、第一あいつは男で僕は友達くらいにしか思ってないよ」
「ふーん」
川崎は不満そうな顔で、こちらを見る。だって、いくら可愛くたって男だぞ、好きになる訳ないじゃないか。
「まあ、変なことして北条に殺されないようにな」
「しないって、僕がそんなに見境なく見えるのか?」
「もち!」
「もちじゃねえ! 確かにロリっ子だろうが熟女だろうがいける、でも男は好きになれないそれだけは覚えておけ」
「自分でとんでもないこと言ってるのに気づいてないのか」
水島達の方を見ると、既に北条が戻ってきていたので、僕も戻ることにした。
「ごめん、お待たせ」
「どこ行ってたの? 逃げたかと思ったよ」
「川崎と自動販売機に飲み物買いに行っただけだよ。じゃあ、早速行こう!」
僕はそう意気込み、病室まで向かった。
「ここだよな? 入るぞ」
病室の扉を開く、そのには外を見つめる相崎の姿があった。
「おう、大丈夫か? 5日ぶりだな」
「あ、まーくん。このあいだはごめんね心配かけて。みんなも来てくれたんだね」
「もちろん。友達のお見舞いに来るのは当然でしょ」
北条がそう言うと、相崎は少し微笑む。
「うんみんなありがとう。申し訳ないんだけど言うけどね、ボクもう山場が近いんだ……」
その一言で、この場が凍りついた。
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