番外編 川崎の苦労

これは、俺達が松山の家に泊まる前の話しだ……。


月曜日


「今日作戦会議する。川崎くん、残ってね」


朝、教室に着いたと同時に水島に言い渡され、教室に残された。


現在残っているのは、俺と水島と北条だけで、他のクラスメイトは全員帰って行った。


「作戦会議を始める……もちろんお泊り会について」


 前回の作戦会議にて、もっと親睦を深めるにはどうすればいう話があがり、お泊り会をしようとなったわけだが……。


「そして、議題はこの三人の中で誰がお泊り会を言うか」


 なんで、俺はこんなくだらない事に付き合ってるんだろうと思いながらも真面目に考える。


「無難に川崎が言えばいいんじゃない? 幼馴染で親友だし」


 北条が指を指しながらそんな事を言ってくる。まあ、確かに俺が言うのは簡単なんだが……


「それだとあんまり意味なくないか? 俺が松山の家で泊まりたいって言って、北条と水島も連れてきて言いかって言う。でも、それだとお前らが泊まりたいという気持ちは伝えられなくないか?」


 お泊り会ができたとしても、あの鈍い松山に自分からアピールしないと意味がない。恥ずかしいだろうけど、それくらいはやってもらはないと。


「じゃあ、どっちが言い出すかね」


 言った方は恥ずかしさの代わりに、アピールが出来る。そのため……


「今回は私がやる。北条さんは前回やった」


「何言ってるの水島さん。前回はじゃんけんだったでしょ、今回もジャンケンでいいじゃん」

 

毎度論争が起きるのだ。こちらからしてみれば、脅されてその場にいるだけなので心底どうでもいい。むしろさっさと終わって欲しいくらいだ。


まあ、だからこそ今回は、すぐ終わらせるための策を用意した。


「別に全員一緒に泊まらなくてもいいだろ。北条、水島と別々の日に泊まればいいじゃないか。そうすれば、どっちが言うとか争わなくてすむしな」


「そっか、その手があった」


「川崎にしては上出来ね! じゃあ、今日の作戦会議は終了、解散」


 北条がそう言い残し、教室から去り、水島もあとを続くように出る。


 あいつら、どっちが何日に泊まるとか全然決めてなくね?


****************************


木曜日の朝、いきなり北条に胸ぐらを掴まれ、一言。


「今日……私、松山と一緒に帰って、その時に泊まりたいって言うから後ろからついてきて」


そんな事を言われてもな……まあ、いかなかったら殴られそうだし断れないんだがな。


「分かったよ。その代わり、絶対に言えよ。2度目は面倒くさいし流石に助けてやらないからな」


「ありがと、流石面倒見屋さんなことはある!」


そう言って、自分の席へと戻っていく北条……、喋ったり人を殴らならければモテそうなのにな……。

 

****************************


金曜日、俺達3人は作戦会議をしていた。


「まず最初に言いたいことがある」


そう言って、北条は立ち上がり机を思いっきり叩く。


「なんで、一緒に泊まることになってるの! 水島さん、理由を聞かせてもらえる?」


「私はただ、エルイさんに私達が今度泊まりたいと伝えただけで、北条さんもその日に言うなんて知らなかった」


そんな事言ってるが、実際は俺と一緒に松山と北条をストーカーしていて、水島は盗聴器も持ってたため、知っているはずだ。


まあ、そんな事を伝えたら水島に殺されそうなので言わないがな。


「でも、その場に川崎もいたんでしょ? 私は確かに昨日の朝、伝えたよね。今日言うから付いてきてって……その場にいて、なんで訂正しなかったの? 一緒に泊まることになることくらいは分かると思うんだけど」


「仕方ないだろ、拒否しようと思ったらダメだって言われたし……」


「言い訳無用」


その場で、訂正出来たとしても、これまでの行動を見ている限りあの後必ず、水島は北条と同じ日を指定しただろう。先を越されないために……。


「すまない、悪かった。その代わりにお詫びと言ってはなんだけど、お泊まり会で松山にお前らの好意を気づかせる方法をひとつ考えてきてやったから」


さっさと終わらせたいしな、このくだらない作戦会議。


「男を惚れさせたいなら、料理で相手の胃袋を掴めばいいんだ! そうすれば男はだいたい堕ちる」


「なるほど、確かに男の川崎くんがいうと説得力がある。つまり明日までに練習しろってことか」


「なら、朝先に3人で集まって川崎に食べてもらお! 美味しいかどうか」


2人はやる気をだし、そのまま教室から去る。なんで、やる気がでたらすぐ帰るのだろう……。


*****************************


2人が俺に、お弁当を差し出したが……。


「なんだこれは……」


俺は見た瞬間、思わず呟いてしまった。


北条のはものすごく美味しそうなのに対して水島のは……一言でいうとダークマターだった。


ニコニコしながら、差し出してくる2人には何も言えず。まずダークマターの方を食べる。……が、以外と美味しく、見た目だけであった。


次に、北条のお弁当を口の中に入れる。その瞬間、俺の意識はぷっつりと途切れた……。


このままじゃ、殺人事件が起こるぞ。




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