第5話 おねむの時間なのです

 暖簾を越し男湯から出ると、そこにはコーヒー牛乳を片手に持つ四人の姿があった。


「お兄ちゃん、遅いのです!」


「すまん、待たせた。川崎とサウナに入ってたからな。てか、髪の毛乾かさなくていいのか?」


 何故か北条以外髪を乾かしておらず、ボサボサな状態でそこにいた。風邪ひかないか?


「皆で早く遊べるように、すぐ出てきたのです! なのに、全然出てこないので起こりたくもなるのです!」


「そうか、悪かったな。なら逆に、北条は髪を乾かしているんだ?」


「絶対に、松山と川崎は遅れてくると思ったから、乾かしてからゆっくりと出てきたの」


 北条は誇らしげにそう語る。なんか、信用されてるのかされてないのか分かんねえな。


「じゃあ、さっさと帰るか」


そう言って、川崎が歩き始めたので僕は肩を掴んだ。


「なあ、川崎。お前サウナでの勝負で負けたよな?」


「え……あ! 忘れてた。まさか松山、そのために先に俺をサウナから出したのか」


「さあね? そんなことより早く僕の分コーヒー牛乳を買ってくれ」


嫌々、川崎は財布からお金を払い自販機でコーヒー牛乳を買い、僕に渡す。


「松山……後で覚えておけよ」


「後で覚えておけよって言われても、僕はただ暑くなってきたから、そろそろ出ようって言っただけだし、川崎が忘れてたのが悪い」


「グーの音も出ないこと言わないでくれ」


僕達はそのまま家に帰ったのであった。


****************************


「さあ、ゲームを始めよう」


川崎が決めゼリフを吐き、机に置いたのはケースに入ったトランプだった。


「恥ずかしくないの? さあ、ゲームを始めようとか、決めゼリフみたいなの吐いちゃって」


「黙れ松山、女子更衣室を除くお前だけには恥ずかしいのとか言われたくないわ! こんな奴放っておいて……。まあ簡潔に言うと、罰ゲームありでトランプをしようって話だ」


現在の時刻は午後11時。何故か元気な川崎に対し、りろと水島はうとうとし始めていた。


「眠いのです。明日でもいいですか?」


「私も明日がいい……、眠い」


「私はどちらでも構いません」


「私も普段、まだまだ起きてるし、どっちでもいいよ」


「僕は寝たい。罰ゲームやりたくないし」


りろや水島が言った通り、別にまだ明日があるんだし、明日でいいじゃないか。なんでわざわざこんな時間にやるんだ?


「罰ゲームは、人生ゲームと同じだ。勝ったやつが負けたやつになんでも1つ命令が出来る!」


川崎がそう言うと、エルイ以外の眠そうな目が、やる気に満ち溢れた目へと変貌する。


「川崎くん、さっさと配って。やるんでしょ? トランプ」


「早くしてよ川崎」


「川崎さん、遅いのです。そんなじゃ女の子に嫌われますよ」


なんという、手のひら返し。というか、人生ゲームした時から思ってたが、なんでこの人達はこの罰ゲームでこんなに盛り上がれるのだろうか。


確かに、僕的にも勝てたら裸とか見れるからいいんだが、負けた時の事を考えないのか?


それとも、僕が人生ゲームで負けたから盛り上がれないだけなのか?


そんな事を考えていると、川崎が全員にトランプを配り終えた。


「それで、なにで勝負するのです?」


「大富豪とかだと、人それぞれでルールとか違うと思うから無難にババ抜きで」


僕の手前にあったカードをとり、手札を確認する。1と6が揃っており、手札は5枚からだ。


対する、他の人の手札は……。


水島9枚、北条5枚、りろ7枚、エルイ5枚、川崎が6枚だ。


「じゃあ、私から引くのです」


りろはエルイから1枚引き、揃ったようでそのまま2枚捨てた。


「じゃあ、川崎さん。引かせてください」


こちらも揃ったようでそのまま2枚捨てる。


「松山、さっさとトランプをよこせ」


僕からとった数字で揃ったらしく2枚捨てる。


「よっしゃ、絶対に勝ってやる!」


意気込んで、引いたカードは5。僕の手札には、5がないので捨てれない。


「じゃあ、私ね」


水島が引くと、またまた揃ったようで2枚捨てる。


「じゃあ、次は私かな? りろちゃん引かせてね」


これも揃い、2枚捨てる。あれ? カード捨てれなかったの僕だけ? やべえよ、また負ける気しかしないんだけど……。


ゲームが終盤に差し掛かり、ついに僕と北条の一騎打ちになった。


僕の手札は1枚、ここで引けば僕の勝ちだ……。もし負けたとしても、今回の1位はエルイなのでそこまでエグい罰はこないだろう……多分。


「よし、じゃあ引かせて貰おうか」


僕がそう言って引こうとすると、北条はトランプを前に差し出す。


「早く、どうぞ。松山くん」


「分かってるさ、じゃあこっちで」


僕がそのトランプを引こうとすると、頑なに離そうとしない。


あ、これ取ったら絶対勝ちやん。


「ねえ、松山。考え直さない? こっちがジョーカーだよ?」


「大丈夫だ、そっちで。さあ早く力を抜いてくれないか?」


力を抜いてくれるどころか、更に力を入れ始める。往生際が悪いな……。


「離せ、北条! それでいいから!」


「嫌だ! 考え直して!」


そんなやり取りを見た川崎が僕の肩を掴む。


「なあ、松山。時には折れることも大事だぞ。ここはお前が負けて女の子に花を持たせるんだ」


「それは、僕に対しての腹いせか!」


「勿論だ! さっさとそのトランプ諦めてジョーカー引きやがれ!」


そんな論争をしていると、北条はトランプ2枚をシャッフルし始めた。


「これでいいよ。さあ、引くんだ!」


こいつ、やりやがったよ。まさかとは思うが、僕がジョーカー引くまでこれを繰り返す気なのか……?


「わかったよ、引けばいいんだろジョーカー!」


僕は右のトランプを取り、確認すると案の定ジョーカーだった。


「じゃあ、引くね」


北条は僕の数字を取り、あがった。やっぱ、腑に落ちないな。


トランプを片付けていると、1位のエルイが一言。


「それじゃあ、私からの命令ですね。

明日1日で3つほど良い行いをしてください」


「おう、分かった……。今なんて言った?」


まさか、こいつ……。


「明日1日で3つほど良い行いをしてくださいって、言いました!」


やった、流石エルイ! これで、良い行いをするという大義名分が出来たぞ。


僕はエルイの事を誤解していたようだ。ただの、使えない居候天使だと思っていたが、エルイはちゃんと使える天使だ。今度、エルイのご飯にだけ大量に塩を入れていた事を謝ろう。


あからさまに喜ぶと、他の奴らに不信がられるかもしれない。ここはあえて、嫌そうに言おう。


「えーマジかよ。僕が良い行いをする奴に見えるのか?」


「もっとエグい罰ゲームにしてくれたら良かったのに」


「まあ、私は別になんでも良かったので、良い行いでもしてもらおうかなと」


その時、ふと僕はスマホで現在のポイントを確認すると、所持ポイント-8500と表示されていた。


いつポイントが、増えたんだ? 確認すると、人命救助+5000と表示されていた。いつ、僕がそんな事したかと思ったが、すぐに思い出した。


北条のダークマターをりろの分も処理したから、それが人命救助になったのだろう。まさか、あれで死ぬ可能性あったって事か。


「流石にそろそろ眠いのです。寝ていいのですか?」


「そうだな、そろそろ寝ますか……。みんな何処で寝てもらおうかな」


川崎と北条はまだしも、水島を何処で寝かせるかだな。りろの部屋で寝かせると、りろに悪影響を及ぼす気がするし、僕の部屋で寝かせると何されるか分からないしな……かと言ってエルイと同じ部屋だと結託してなにかしそうだし。一人で寝かせると、何処かの部屋に忍び込む可能性があるしな……どうするか。


「じゃあ……」


「私、りろちゃんの部屋でも寝ていい?」


「絶対ダメ! もう、運任せでジャンケンだ!」


****************************


僕が一番に水島が2番に勝ったので、僕の部屋に寝かせる事にした訳だが……。


「松山くん。これ外してくれない?」


何されるか分からないので、紐で縛る事にした。


「お前、それ外したら何してくるかわからないだろ……、てか変態と一緒に寝る僕の身にもなってくれ」


「じゃあ、りろちゃんと一緒に寝かせてくれればいいのに」


「絶対だめだ。お前は悪影響しか与えないからな」


 なぜか既に、りろは水島の事を水島お姉ちゃんと呼んでるし二人っきりになったら更に悪影響を受けるのは火を見るより明らかだろう。


「人の事言える? 松山君と私は同士だと思うけど」


「確かに僕は、小さい女の子にも興奮するけど……それは知らない子であって、血がつながってる妹や姉、母親には興奮しないんだ。お前の場合は血がつながってないし、襲うもしくはよからぬことを教えるだろ」

 

 しかも水島は、小さい女の子の為にボランティア同好会に所属したらしいし、襲いかねない……。


 僕が言った後、水島は静かになっていた。僕の言葉が身に刺さったのか?


「松山君に縛られて興奮してきた」


 変態はいつだってぶれない……。


****************************


同時刻、リロの部屋にて……。


「川崎さん。みんなの話を聞かせてくださいなのです」


りろと川崎が一緒に寝ることになり、寝る前の団欒を楽しんでいる。


「なんとね、水島と北条って松山の事好きなんだよ……」


「それは知ってるのです。なので、誰が何処まで進んでるのかを知りたいのです」


川崎は、北条と水島に口止めされている……が、眠気と深夜テンションで喋り始める。


「えっとなー。水島が二人っきりで喋る事が出来て、北条は二人っきり帰ったくらいかな……」


「なんなのですか。その小学生の告白前みたいなじれったさは……。というか、結構詳しそうですね川崎さん」


「まあ、あの二人の恋愛を手伝ってるからな……」


「詳しく教えてくださいなのです」


りろの目付きが変わり、脳が覚醒する。対する、川崎は更に眠気が強くなり、うとうとしながら話す。


「えっとね……、確か2年生に上がった時にね。俺……水島に軟禁されて脅されたんだよ……松山の事が好きだから私が付き合える様に手伝って。拒否したらそのまま閉じ込めるって言われたから仕方なく了承したんだよ。その後、自宅に帰ろうとするといきなり後ろから、北条が首を閉めようとして水島と同じ脅しをしてきたんだよ。松山の事が好きだから付き合えるように協力しろって」


「なるほどです」


 りろは川崎の話を懸命に聞き、一語一句残さずメモをしていく。


「それから俺と水島と北条で作戦会議したりして、どうにか片方と付き合わせようしてるけど、松山のやつが鈍くて全然好意に気づかないんだよ。自分では理想の学園ラブコメ生活をおくるんだとか言ってるくせに」


「その話も詳しく聞かせてくださいなのです」


「これは1年の時の話なんだけど、松山が俺に言ってきたんだよ。『親友のお前に頼みがある。僕の夢の理想のラブコメの為に手伝ってくれ!』ってな」


りろにとって、そんな事をいう兄は新鮮であった。普段の家での生活ではそんな言葉は一切見られず、優しいお兄ちゃんのようだ。


……が、学校では違う。下ネタ放ち、大多数の人から変態室長や男版残念と言われる、学校屈指の変態だ。


だが、その様子をあまり家では見せなかったりするので、松山のこういう話がすきだったりする。


「それでな、これも断りきれなかったんだよ。それから、松山から毎日のように愚痴を聞かされたり、どうすればラブコメになるのか相談されたり」


その時、りろは頭の中を整理すると、少し矛盾なようなものが頭を過った。


「ちょっと待ってくださいのです。川崎さんはお兄ちゃんの理想とするラブコメを手伝いながら、水島お姉ちゃん達の告白を、手伝ってるって事なのですよね? 」


「そうだけど」

 

「てことは川崎さんは、既に完成されたラブコメが出来てる事を知らないお兄ちゃんを手伝いながら、焦れったい水島お姉ちゃん達の告白を手伝ってるということだから、理想のラブコメ対完成されたラブコメ という、よく分からない事になってるのですね!」


「まあ、そういう事だが……」


「苦労が耐えないですね……なんていうかお察しするのです。川崎さん」


りろがそう言うと、反応が返ってこなかった。川崎の方を見ると、寝落ちしてしまったらしい。


「私も……その作戦会議参加しよっかな……」


****************************


同時刻、親の部屋にて。ベットに横たわりながら、二人で会話をしている。


「それで、エルイさんは別に松山くんのこと好きじゃないんだよね? 私が松山に告白するの協力してくれない?」


「別にいいですよ、水島さんにも同じような事を言わましたし、普段から松山さんの近くにいる私なら色々やすいですしね」


エルイは本当に、松山に好きという感情は抱いていない。さらに、松山と水島と北条のかんけいについては、なんでさっさとくっつかないんだろうと、もどかしい気持ちでいた。


なので、エルイは川崎と同じように、松山の理想のラブコメを手伝いつつ水島と北条の告白を手伝うという事にした。


「私から一つ聞きたいことがあるんですけど。松山さんのどこが好きなんですか? 私、あの人に全く持って魅力を感じないんですけど」


「どこが好きか……ね、自分のやりたいことなら手段を選ばずに何度も何度も諦めずに挑戦する所かな」


「へーそうなんですか。そんな人には1ミリも見えないですけどね」


そんな人を好きになるなんてのもどうかしてるなと思ったエルイであった……。


****************************


「そういや、松山くんは覚えてる?

私と初めて会った時の事を 」


水島と初めて会った時か……、印象的過ぎて忘れられないな。


「当たり前だ、あれだろ? いつも通り、僕が女子更衣室に入り隠れようとして開けたロッカーにお前がスマホで撮影しながら入ってたやつだろ?」


「最初、どう思った? 私の事を」


「こいつとなら、仲良くなれそうだと思った」


「今はどう思ってるの?」


「最上級の変態」


「照れる……」


水島の顔が少し赤くなり、下を俯く。


「あと、二つくらい聞きたいんだけどいいかな?」


僕的には早く寝たいんだが……、まあ二つくらいなら付き合ってやろう。


「いいけど、それが終わったら寝るんだぞ」


「分かってる。……松山くんって好きな人いるの?」


「別に居ないけど、それがどうかしたのか? 川崎や北条にも聞かれたんだが」


「普通に気になっただけ」


なんで、こいつらはそんなに気になるんだ? 恋バナで盛り上がりたいお年頃なのか?


「まあ、いいや。それで2つ目は」


「りろちゃんの、右足の傷について」


「…………」


水島は今までにない真剣な表情をし、僕に問いかけてくる。


「そんなの、知らないな……さあ、早く寝よ」


「誤魔化さないで……。昨日、銭湯で私は二人っきりで着替えた時に見たの。りろちゃんの脚にある深い傷跡をね。りろちゃんが銭湯に行きたくない理由は、この傷を知らない人に見られると、なにかを思い出すからって言ってたの。松山くんならなにか知ってるんでしょ? 傷がついた経緯も、何故見られたくないのかを」


「確かに、僕はその傷については知ってる。だけど、それを知ってどうするんだ? あの傷は家族の問題だ。水島には関係ない……」


僕の回答に不満があるのか、じっとこちらを見ている。そんなの、問答無用で明かりを消す。


「松山くん。私はあなたの事が好き、だけどりろちゃんの事も同じくらい気に入ったの。もし、りろちゃんに何かあったらその時は許さないから……」


許さないか……それはあいつに言って欲しいものだな。それよりも、水島って僕の事を友達として好きだったんだな。てっきり嫌われてるかと思ってた。


そんな事を考えながら、僕は眠りにつく……。


****************************


目覚ましの音で目が覚め、ベッドから起き上がり、体を伸ばす。


「はーあ、もう朝か。ちゃっちゃと朝ごはんを作ってきますか……ん?」


布団から変な違和感があり、捲り上げる。するとそこには、りろと北条が眠っていた。


「なんでお前らは僕のベッドの中に忍び込んでんだ!」


僕が叫ぶと、りろが起き上がり目を擦る。


「あれぇ? なんでお兄ちゃんが私のベッドにいるのですか? ……まさか、私の純潔を奪うためなのですか!」


「ちげぇよ、りろが僕のベッドの中に入ってきたんだよ!」


りろは周りを見渡し、現在置かれている状況を確認する。


「なるほどなのです。昨日、夜中に起きてお兄ちゃんと水島お姉ちゃんがどうなったのか確認しに来たのです。でも2人は寝ていたので、ベッドの中に忍び込んだのです」


「なるほど、全く意味はわからん」


りろはベッドから飛び降り、自分の部屋へと戻っていく。北条はまだ寝ており、起こすのも面倒くさい。


そのままベッドから降りようとすると、寝ぼけた北条が腕を掴んでくる。


「松山……すき……だから……ガーゴー」


お前も意外と、僕の事を友達と思ってくれたんだな。


……てか、いびきうるさ。


「分かった、好きなんだろ。だったらこの手を離してくれよ。朝ごはん作れなくな……いてててててて!」


途中、北条が思いっきり曲げてはいけない方向に回し、骨を折ろうとしてくる。寝ぼけてるって怖いね。


「いかない……グー……お願い……スピー」


「分かった、分かったから。その力入れてる腕を離してくれ! 」


やっと、心の叫びが届き北条の目が少し空く。


「あれぇ……なんで私は松山の腕を折ろうとしてるだっけ?」


「おお、北条。一応起きたか。じゃあさっさとこの腕を離してくれないか……痛い痛い、なんで逆に力入れてんだ !」


「なんかの罰ゲームの途中で寝ちゃったのかな……まあいいや、じゃあもう少し強く……」


「痛い痛い痛い! ちげぇよ寝ぼけるな。お前が僕のベッドに入ってきただけだ!」


なんで、朝からこんな目に合わなきゃいけないんだよ……。


「うるさい……朝?」


縛られている水島が起き、こちらを見る。


「松山くん。骨折プレイはハードル高すぎない?」


「朝っぱらから何言ってんだ! こいつが寝ぼけてるだけだ。助けてくれって言いたいけど……お前しばられてるし」


「松山くんが縛ったんでしょ」


手を使わずに立ち上がり、部屋から出ようとするが止まり、こちらに赤く染まった顔を見せる。


「ねえ、松山くん……私……」


「待て待て、お前まさか」


「紐を解いてトイレに行かせてくれないかな。限界が既に近いんだけど」


「辞めてくれ! お前ここでは絶対に漏らすなよ、今解いてやるか……痛てててて」


北条は更に力を入れ、折ろうとしてくる。なんでこいつは、こんな状況で目が覚めないんだ!


「なあ、水島。北条を頭で殴ってくれないか、そうすれば多分目覚めるし」


「今それをしたら、衝撃で漏らすかもしれない……」


「それはダメだ……痛い痛い。そうだ川崎を呼ぶんだ」


水島の顔は更に赤くなり、その場に座り込む。


「そんな時間……なさそう。限界」


「やめろ水島! 恥ずかしくないのか、僕に見られても」


「大丈夫、それでも興奮出来るから」


「なんなんだよその性癖は!」


僕が叫ぶと同時に扉の外からエルイが入ってきた。


「なんですか、この状況は」


「「救世主!!」」


****************************


「それで、一体何をどうしてあなったんですか?」


エルイが来たおかげで、水島はギリギリセーフでトイレに駆け込み、北条も目覚め僕の腕が折られることはなかった。


「朝起きたら、りろと北条がいて寝ぼけて北条が腕を折ろうとしてくるし、何かされそうだからと思って縛っておいた水島はトイレに行きたくなったりして、ああなってた」


「いいじゃないですか、松山さんってお漏らしプレイとか好きじゃないんですか?」


「好きだけど、それは普通の女の子であって、水島じゃない」


確かに好きなのは認める。そういうコレクションも保管してあるし、だけど水島と北条、エルイは論外だ。


「あともうひとつ気になったんですが、女の子に腕を折られても興奮できるんですか?」


「流石に僕でもそんなマニアックなやつでは興奮出来ない」


僕はもちろんドM属性も、持っているが、かじった程度で腕を折られて興奮出来るほどではないし、そもそも折ろうとしている人間が北条だし。


「そうなんですか。松山さんって何でもかんでも興奮するド変態じゃないんですね」


「お前、そんなふうに思ってたの!?」


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