第4話 お泊まり会は波乱万丈
「やっぱり泊まりに来てる身だし、松山くんだけには任せられないよ」
「私も手伝うよ。なんか、何もしないでご飯食べるの気まずいし……」
そう言いながら、水島と北条はご飯作りを手伝いに台所へとやって来た。
「ありがとう。流石に一人で六人分作るのは大変だと思ってた所だ」
「それで、今日は何を作るの?」
「今日作るのは焼きそばだ。コスパもいいし簡単に作れるしな」
まあ、焼きそばだったら嫌いな人はあまりいないだろうし、好き嫌いを気にする必要はない。
「どうせならさ、三人が別々に作らない? そっちの方が色んな人のやつを食べれていいと思うんだ!」
北条がそう言うと、水島も賛成する。
「いいよ、松山くんもいいよね?」
「別にいいけど、お前ら料理出来るのか?」
「「もちろん」」
残念二人が作る料理か……不安しか感じないが焼きそばだし、流石に大丈夫か?。
********************
結局、一人二つ時間を分けて作り、誰のが一番美味しいかというゲーム形式になった訳だが……、これ罰ゲームの必要あったのか?
それよりも、やはりあの二人がどんなものを作ってくるのかが心配だ。僕は最後につくったのだが、何故か調理場にトマトや大根、黒酢なんてものが置いてあった。焼きそばにそんなもの必要だったっけな?
作り終わった焼きそばを持ち、居間へと向かう。そこにはアルミホイルがかぶせられた焼きそばと全員が集合していた。
「お兄ちゃん、早くなのですよ」
「分かってるって」
そっと、真ん中に焼きそばを置き、座り込む。
「じゃあ、三人同時にアルミホイル取ろっか」
北条がそう言って、僕と水島もアルミホイルに手をかけた。
「せーの」
合図と共に、アルミホイルを取る。僕の焼きそばは何の変哲もない普通の焼きそばだ。……が二人のは、
「おい、ちょっと待て。なんだこのダークマターは、焼きそばを作れって言ったんだぞ?」
水島が作った、焼きそばらしき何かは、黒く禍々しいオーラを放ち見たものを吐き気へと誘う。もはやそれは食べ物と言っていいのかすら分からない。ラブコメっぽいけど、実際は最悪だな。
「何言ってるの? これはどっからどう見ても焼きそばでしょ?」
「これを焼きそばだと思えるほど、僕の心は強くないよ」
「大丈夫、料理は見た目より味が問題だから」
こんな、ダークマターが美味しいはずがないだろう……水島だし。
対して、北条の焼きそばは完璧だった。お店で出せるレベルでものすごく綺麗だ。正直北条がここまで料理出来るとは思わなかった。
「北条、僕お前の事少し見直したよ。暴力しか取り柄のないやつだと思っていたが、こんな凄い料理が作れたんだな」
「えへへ、そんなに褒めても握り拳くらいしか出ないよ!」
「やめてくれ」
食べなくても結果は日を見るより明らかだろうから、この食べ比べやらなくてもいいんじゃないか? むしろ、僕が水島のダークマターを食べたくない。
そんな事を許してくれるはずもないので心の内に留めておこう。
「じゃあ、まず何から食べるのです?」
「1番普通そうな、松山さんのでいいんじゃないですか?」
そう言いながら、エルイは全員の所に僕の作った焼きそばを盛り付ける。普通で悪かったな。
「普通の焼きそばだな」
「普通の焼きそばですね」
「お兄ちゃんの焼きそばなのです」
「普通の焼きそば」
「普通の焼きそばだね」
「誰か一人くらい、お世辞でもいいから美味しいと言ってくれよ!」
何処からともなく持ってきたボードに味3見た目3評価6と満場一致だった。毎日ちゃんと料理作ってるはずなんだけどな……。
ひとまず、その事は忘れて先にどちらを食べるかだ。ダークマターを先に食べるのかそれとも完璧な焼きそば先に食べるのか……。
「先に、水島さんのが食べたいのです」
考えている最中、りろがそんな事を言い、ダークマターを先に食べる事に決定してしまった。
エルイが先程同様、全員分に分ける。僕は意を決してって、それを口に入れる。まだ死にたく……
「あれ? 見た目と反して案外いける……むしろ上手すぎないか? この焼きそば!」
その焼きそばは見た目に反して、美味しく、皆驚いている。
「凄いのです、見た目はあれですが味はすごい美味しいのです」
「さっき言ったでしょ、料理は見た目より味だって」
僕も点数をつけた。すると、先程と同じ満場一致で、今度は味5見た目0で合計5点だった。
見た目さえ良ければな……。
「じゃあ次は北条さんのですね!」
流石にこれが不味いってことは無さそうなので、安心仕切っていたがそこに川崎が耳打ちをしてくる。
「味わったら死ぬぞ、食べたらすぐ飲み込めいいな!」
何言ってんだこいつ? 流石にこんな美味そうなのが不味い訳……ないよな?
「スツニヤヤノニマサヒサラララ!」
訳の分からない叫び声を発し、泡を拭きながら水島が倒れた。
小さく切った麺を口に運ぶ……酸味と甘みと辛味と塩味が混ざりあい、ネバネバとした感触の中に謎の酸っぱさが……。1口食べただけで、体がここまで拒否反応を起こしているとは。
「なんだこれは、本当に食べ物なのか……」
「だから言っただろ。味わったら死ぬと」
見た目はいいのに……まさかここまで不味いとは、誰も予想してなかっただろう。
「お兄ちゃん、食べ残しは許しま……せ……」
りろは意識を失い後ろへと倒れる。まさか、こっちが本物のダークマターか……。僕と川崎が警戒している中、北条とエルイは美味しいそうに食べている。
「お前ら……大丈夫か?」
「何がですか? 普通に美味しいじゃないですか」
「そうだよ、早く食べなよ!」
こいつら、味覚死んでるのか? というか、水島とりろが倒れたのが見えないのか?
「松山……口に入れて水で流し込もう。鼻とかもつまんで何とか飲み込むぞ」
「なあ、一つ頼みがある。もし残したらりろが責任をもって食べ始める可能性がある……兄として妹を見殺しにはしたくない、僕はりろの分も食べるから、川崎は水島の分を食べてくれないか?」
「松山……確かに兄としての心がけは尊敬するよ。だが、俺にメリットが……」
「僕のコレクションから2冊」
「何してんだ、松山。早く食べるぞ!」
ここから、僕と川崎は頑張った。吐き気と戦いながら、口に頬張って水を流し込んでいった。味を紛らわすためにマヨネーズを大量投入したが、全く味は変わらなかった……。むしろどうなってんだ。
「これで最後の一口だ……」
「おぇ……松山……俺はもうダメだ……。最後の一口、お前が食べて……く、れ」
そう言って、川崎がダウンしてしまった。
「ふざけんな、川崎! ここで弱音なんて言うんじゃねえよ! 僕達が戦いわないと、りろが無理してでも食べてしまうだろ……おい、目を開けろよ川崎……川崎ぃぃぃぃ!」
まさか、最後の一口という、このタイミングで川崎が落ちるとは……。
まあ、川崎の分は後でラップに包んで冷蔵庫に入れておこう、まだまだ食べたいだろうしな……。
「何を大袈裟な……、こんな美味しいのに」
「そうですよ、松山さん! 料理を作ってくれた北条さんに失礼だと思いませか!」
「分かったよ! 食べればいいんだろ、食べれば!」
それから先の事はあまり覚えていない、目が覚めたらボードに味0見た目5と書いてあった。
まさか、1時間も気絶するとは……。僕が目覚めた時には既に全員、どんよりしながらも起き上がっていた。
「結果発表……1位は合計30点の松山さん! おめでとうございます」
なんというか、複雑な気持ちだ。普通普通と言われて1位になってもな……それに、二人のは見た目が最悪と味が最悪で、そもそも話にならなかったしな。
「一応聞きたいんだが、北条。あの焼きそば何入れたんだ?」
「えっとね、大根白菜ピーマンじゃがいも黒酢マシュマロ赤だし麺、あとトマトも入れたかな?」
「なんで、それを入れて美味しそうな焼きそばになるんだよ、奇跡か? 奇跡なのか⁉」
食器類は川崎の食べかけを残し、北条とエルイが片付けてくれたらしく、既にそこにはない。
「それで、お風呂ってどうする? 順番に入ってく?」
川崎が残ったダークマターと戦いながらそんな事を言った。確かにそれは僕も考えていた、順番に入っていくとかなりの時間がかかってしまう。幸い、近くに銭湯があるのだが……。
「松山、確か近くに銭湯あったよな……そこに」
「それは嫌なのです!」
今まで大人しかったりろの叫びに皆驚いている。
「なんでなの、りろちゃん?」
そう言いながらりろに歩み寄る水島。
「私は、裸をお兄ちゃんにならむしろ見て欲しいのですが、知らない女の人が見てくるのは耐えられないのです」
ちょっと待ってくれ、りろ。僕に見られてもいいって言った? 育てかた間違えたか。
「何故、女の人限定かは聞かないけど、りろちゃん。それは間違いだよ。裸になるとね解放てきになれる。知らない人からの浴場する目……興奮する」
「お前、人の妹に何言ってんだ!」
やっぱり、りろを友達の家に預けるべきだったな……。
水島の言葉に心を打たれた、りろは顔を自分で叩き気持ちを入れ替えた。
「分かったなのです、私頑張るのです。もし、お兄ちゃんが外でヤリたくなった時に、人からの目線を気にしないで、出来るようにしたいのです」
「絶対、そんな事言わないからな! 頼むから、姉さんと同じ道は辿らないくれ! 」
僕がそう言うと、りろは苛立った声で一言。
「あんな、雑食の変態と一緒にしないでくださいなのです。私はお兄ちゃん一筋なのです」
何故、りろが姉を嫌っているのか……それはまたの機会に話そう。
***************************
結局、僕達は銭湯に来た。何故か川崎と僕以外は、4人共はしゃいでいる。なんでだ?
「銭湯ですよ、松山さん! 私、1度大きなお風呂に入ってみたかったんです」
「久しぶりの温泉……悪くない」
「よっしゃーレッツゴー!」
「「「おーーー!」」」
そう言って、女の子4人は先に銭湯の中へと入っていく。
僕と同じように、何故はしゃいでいるのか分かっていない川崎が話しかけてくる。
「なあ、あのテンションについて行けないの俺だけじゃないよな」
「安心しろ、僕もだ。なんでみんなあんなにはしゃげるのかわかんないんだが……。まあ、よぅわからんけど行くか」
僕と川崎は4人の後を追い、銭湯の中へと入って行く。
「懐かしいな、昔よくここで女湯に入ってたな」
「それは子供の時の話だろ。それとも、松山お前まさか……」
「流石に、そんな犯罪じみた事してないよ! 小さい頃の話だよ!」
小さい頃に女湯に入り、興奮して鼻血を出しながら倒れたのは良い思い出だ。
入浴のチケットを買い中に入ろうとすると、お店の人に止められた。
「お客様方、ちょっと待ってください! この誓約書をお書き下さい!」
「誓約書?」
そう言って、渡された紙にはこう記載されていた。
【⠀近くに変態が住んでいます。もし、盗撮や覗きがあっても当店は一切責任を持ちません。個人で訴えてください。】
「なんだこれ? ……って、なんでみんなこっち向いてんだ! 違うぞ僕じゃないぞ、確かに学校ではやってるけど、流石に銭湯ではやった事ないぞ!」
「松山……」
そう言って、川崎は僕の肩を掴む。
「なんだよ」
「俺たちはたまたま、お前の方を見ていただけで、ましてやお前の事を全く疑っていなかったんだが……なんか、心当たりがあるのか?」
「いや、お前らがいつも……」
僕が言い訳をしようとすると、エルイが話に割り込んでくる。
「松山さん……まさかそんな事をしていたなんて……」
「おい、だからちょっと……」
「お兄ちゃんが、私以外の裸で興奮するなんて……」
「松山くん、尊敬する」
「松山……変態は死んだ方がいいと思う」
「だから、違うって! 大体の人がこういう時に見てくるから、いつも通り疑ってるのかと思っただけだ!」
「松山の日頃の行いが悪いだけだ!」
「店内ではお静かに……」
店員さんに怒られ、僕達は温泉へと向かった。これって、僕が悪いのかな?
****************************
【男湯】
「それで、本当の所はどうなんだ?」
着替えている最中、川崎が聞いてくる。
「流石に、僕の訳ないじゃないか。僕がやってたのは昔だぞ? この歳でやるわけないだろ、そんな犯罪」
「昔やってたのかよ……てか、学校での盗撮とか覗きは普通に犯罪だからな。番人のありがたーい指導で、許してもらってるけど」
「いいんだよ、僕は特別採用なんだから」
特別採用……。僕達の学校は1年に3人、全国からトップレベルの頭の良い人を特別に採用する制度がある。こう見えても、僕は中学の時、全国模試を安定して3位を取り続け、1度だけ1位を取ったことがある。もちろんワーストじゃないぞ? ちなみに、水島も特別採用で全国模試2位だったりする。
もちろん、特別採用なだけあって色々な免除がある。例えば、家族が嬉しい金銭関係オール免除。授業でなくていい、授業単位免除。そして、極めつけはやばい事しても大丈夫な、退学・停学の免除。特に、最後の免除があるので僕はこの高校に来ることを決意した。家から近かかったし。
「本当にいいよなー、その特別採用。もし、松山にそれがなかったら、即刻退学だったよな」
「この制度が無かったら僕はこの学校に入ってないって、何度も言ってるだろ?」
僕は、別に学校なんて何処でも良かった。ただ、自由さえあれば。だから、この学校に入った訳で、もし他にもっといい高待遇があればそっちに行った。……が、流石にここより総合的にいい学校は存在しなかった。ただそれだけだ。
「そうだっけ? まあ、いいや。じゃあ、さっさと温泉入ってコーヒー牛乳でも飲みますか」
「はいはい、わかったよ」
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
【女湯】
「怖いのです……裸を見られるのが怖いのです」
そう言いながら、一向に脱がないりろ。少し泣きそうな表情で、ポツポツと喋る。
「やっぱり、私には無理だったのです。知らない女の人の前で裸になるなんて」
「りろちゃん、逆に考えて欲しい。裸を見られて嫌な気持ちになる、逆にそれを背徳感として捉えて、興奮すればいい」
それが出来るのは水島さんだけだよと、北条は思いながら遠い目で見ていた。
「分かりました……頑張ります……大丈夫、今私はお兄ちゃんに裸を見られている……大丈夫、問題ないのです」
そう呟きながら、りろは着ているものを1枚1枚脱いでいく。
「あと少しだよ、頑張って!」
なんか馬鹿らしくなった、北条とエルイは着替え終わり、水島に話しかける。
「私達先に行ってるね」
「分かった。りろちゃんは私に任せて」
珍しく、やる気を見せている水島を見ながら、エルイと北条は温泉へと向かった。
「さてと、りろちゃん。あとパンツ1枚だよ頑張って」
そう言われながら、ゆっくりと最後のパンツを脱ぐ。
「出来ました、水島さん!」
「りろちゃん、私はずっと信じてた。君なら出来るって」
そう言いながら、水島はりろの頭を撫でる。りろは少し照れて、下を向く。
「水島さんのような人がお姉ちゃんだったら良かったのに……」
「私もりろちゃんみたいな妹が欲しかったし、私の事お姉ちゃんだと思ってくれていい」
「水島お姉ちゃん!」
そう言いながら、りろは水島に抱きつく。
「よし、じゃあエルイさん達を追いかけて温泉に行こう」
「はい!」
△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
【男湯】
「なあ、川崎。サウナで勝負しないか? 買った方にコーヒー牛乳1本奢るってことで」
「いいぞ、どうせ俺が勝つしな」
そんな事を話しながら僕と川崎はサウナの中へと入って行く。
中は、誰も入っておらず貸し切り状態だ。
「誰もいないし、喋らずにいるのもつまらないから、ここでしが出来ない世間話しながらやりますか」
「分かった。でも、ここでしか出来ない世間話って言っても何話すんだ?」
ふつうの世間話だったらいつもしている。ここでしか出来ないってどういうことだ?
「俺らの学校の可愛い子についてだ」
そういう事か、普段二人っきりになれることはあまりないからか。考えたな、川崎。
「よし、詳しくじっくり話し合おう」
僕達は座り込み、話し始める。
「前提だけど、川崎はこの学校に可愛い子がいると思うか?」
「いるだろ、顔だけだったら北条や水島、あとエルイとか・・・・・・。あいつらも顔だけだったら美人だろ? 顔だけなら」
「確かにそうだよな、水島は喋らなければ小さくて可愛いし、北条も殴らなければ美人だし、エルイはりろに変なことさえ言わなければ・・・・・・まだ人として見れるのにな」
「お前は、エルイさんをなんだと思ってるんだ」
え? 天使だよ。なんて言ったらついに頭までいかれたかと、言われそうなのでだまっておこう。
「まあいいや。じゃあそれさえなくなれば、松山はあいつらを異性として見るのか?」
「まあ、多分な。でも、何でそんなことを聞くんだ?」
この間も、川崎に好きな人出来たか、聞かれたがそんな事聞くようなつだったっけな?
「まさかとは思うが……お前、あいつらの中の誰かが好きで、僕に取られるかもしれないと思って、聞いてきてるのか?」
「んなわけねえだろ、普通に松山が1年の時から言ってただろ!? 僕の理想のラブコメを作りたいんだって!」
「言ったけど……、お前もしかしてあいつらを僕のラブコメのヒロインにしようと思ってるのか?」
あいつらの性格的に、確かにラブコメのヒロインな感じはするんだが、度が過ぎている。だから僕はポイタメを使って性格を少し変えようと思っていたが、実行する前にポイントがゼロになってしまったという訳だ。
「まあ、あの性格さえ何とかなればまだ異性として見れるかもだけど……、そもそもあいつらら僕の事を話せる異性の友達くらいにしか思ってないだろ?」
僕の発言に対し目を丸くして食いつく。
「ごめんなんて言った?」
「だから、水島とか北条が僕の事を話せる異性の友達くらいにしか思ってないだろ? いや、待てよ。あいつらに僕って友達と思われてるのか……?」
友達と思っているやつに向かって、普通蹴るか? 友達どころか僕って……
「なあ、川崎。僕ってあいつらに嫌われてるのか?」
「どうしてそうなった」
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
【女湯】
「ぷはーーー。極楽、極楽なのです」
りろが、飛び込むように温泉に入り水島に怒られる。
「りろちゃん、温泉に飛び込んじゃダメ。ゆっくりつからなきゃ、周りの人に迷惑でしょ」
「水島お姉ちゃん、ごめんなさいなのです」
「仲いいですね」
「それより、いつの間にか水島さんがお姉ちゃんって呼ばれているところに驚いたんだけど」
しっかりと肩までつかり、温まる四人。
「ところで水島お姉ちゃんって、お兄ちゃんの事好きなのですか?」
りろの言葉に、水島は顔を赤く染め少し下を向く。
「……、いきなり何を言ってるの? 私はただ……」
「そんな顔真っ赤にしちゃって、水島お姉ちゃん可愛いですね。北条さんとエルイさんはどうなんですか?」
テンションが上がったりろに質問され、困る北条といつも通り笑顔を保ち続けるエルイ……。
「私は別に松山さん事好きじゃありませんよ。ただ命の恩人ってだけで」
「私は……好き……だよ。でも、松山には私の好意は全く伝わってないと思う。私、恥ずかしくなると暴力振るっちゃうし」
北条はそう言いながら、お湯に顔を埋める。
「やっぱり、お兄ちゃんってモテるのです!」
「りろちゃんってやっぱりブラコン?」
「そうなのです。お兄ちゃんが世界で一番好きなのです。そう簡単に皆さんにはお兄ちゃんを渡しませんよ!」
笑いながらそう言うりろに対し、水島と北条はりろちゃんが1番の障害かもしれない、そう思ったのであった。
△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
【男湯】
「確かに、蹴ってくるから友達と思われていないと思うか。それだとツンデレというのがあるだろあれってどうなるんだ」
「確かに、好きだけどつんつんしちゃうみたいな。でもそれがどうしたんだ? まさか、北条がツンデレっていいたいのか?」
「そういう事じゃなくて。俺が言いたいのは、別に嫌いじゃなくても暴力を振るっちゃう場合もあるって事」
「なるほどな……。自信を持ってればいいか。じゃあ、そろそろサウナ出ないか? 」
「そうだな、暑くなってきたし」
そう言って、川崎はサウナから出た。先にサウナから出たら負けという勝負を忘れて……。
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