第2話 妹なのです!
勢いよく、エルイと共に家を飛び出したはいいが全くポイントを稼げずに帰ってきてしまった。
「はあ……なんで、ポイントが集まるどころかどんどん減っていくんだろう」
「それは、松山さんが幼稚園児を舐め回すように30分もじっと見てるからですよ」
エルイは僕に当たり前みたいに言ってくるが、僕的には何が駄目だったのか全く分からないでいた。
「でも、ただ幼稚園児を見てただけだぞ? 別に悪い事じゃなくないか?」
「幼稚園児からしてみたら、知らない大きな人が舐め回すような目でじっと見てくるんですよ。恐怖でしか感じないですか」
僕はため息を吐きながら、玄関の扉を開けた。
「ただいまぁ」
そう言った瞬間に、リビングの方からこちらに走って向かって来るような足音がした。
「おかえりなのです、お兄ちゃん!」
そういって、妹は僕に抱きついた。
「今日の夕飯は何にするのですかって……ええええええ!? お兄ちゃんが女の人を連れてくるなんて……どうしちゃったのですか!」
妹が僕の後ろに隠れるのを見ると、エルイは妹と同じ目線までしゃがんだ。
「名前なんて言うんですか?」
「……りろっていうのです。よろしくお願いしますなのです」
りろがお辞儀をしたのと同時にエルイは頭を撫でた。
「りろちゃんっていうんだ、いい名前ですね。ところで小学何年生なんですか?」
「これでも、立派な中学3年生です! 間違えないでくださいです」
僕の妹、松山 りろは体の成長が小学4年生で止まり中学3年らしからぬ体型となっている。だがクラスのヤツらには以外とモテており、更には僕とは違い友達が多い。りろの友達にはロリコンが多いのかな?
とはいったものの、りろ的には自分の身長や胸の大きさにコンプレックスを感じており、そこを弄ると怒ってしまう。
「ご……ごめんなさい。わざとじゃないんです」
エルイは頭を下げるが、りろはそっぽを向く。
「もう、いいです」
そう言い残し、りろはリビングの方に走って行った。
ちょうど、エルイと2人っきりになったので少々疑問に思った事を聞いてみた。
「なあ、エルイ。やっぱりお前って他の人に見えるんだよな?」
少しの沈黙の後、エルイは口を開く。
「何言ってるんですか? 当たり前じゃないですか」
「特殊な力とかくれる奴って、渡された本人以外そいつの事は見えないもんじゃない?」
「それは、アニメや漫画の見すぎですよ、そんなご都合主義設定ある訳ないじゃないですか。とはいえ、ポイントを使えば見えなくする事も出来ますが、マイナスの松山さんじゃあ無理そうですね」
地味に煽ってくるのムカつくな。そこでもう1つ、僕はある事を思い出した。
「まさかとは思うが、これから一緒に住むつもりなのか?」
「まあ、私には帰る場所もありませんし、この家なら既に合鍵を作ってありますしね」
あからさまに住む気満々じゃねえかこいつ。
「はぁ……、エルイにはまだまだ聞きたいことと、やって欲しい事があるからな。本当は嫌だが、住まわせてやるよ、ただしりろはエルイが説得しろよ。そのうち姉たちはポイントでどうにかしてやるから」
僕がそういうと、エルイは「分かりました!」と言って、走って行ったりろの後を追いリビングへと向かった。
僕は一人、自分の部屋がある2階へと駆け上がった。扉を開けると、何故かそこにはリビングに向かったはずのエルイとりろが楽しそうに僕の部屋を漁っていた。
「ちょっと待て、なんで二人共ここにいるんだ!?」
「なんでって、松山さんがエロ本を隠していないか2人でチェックしてるんですが、何か問題でもありますか?」
そんな事を平然と言ってくる。
「何か問題でもありますか? じゃねぇよ、大問題だわ! りろになんて事をやらせてんだ」
「お兄ちゃんの可愛い妹としては、お兄ちゃんの好みとか知る必要ありますです」
「知る必要ないから! これからりろに顔向けできなくなっちゃうからやめて。違う、そうじゃなくてなんで二人がここにいるかを聞いてるんだよ! リビングに向かったはずだろ!?」
僕の家で、2階へと上がれる階段はたった一つだけだ。なので、リビングから2階に行くなら一旦玄関近くまで戻って来ないといけないが、そもそも僕が居たので来れるはずもない。
「そんなの決まってるますよ、私がりろちゃんにお兄ちゃんのエロ本を探しに行こうって言って、りろちゃんを背負って空を飛びそのまま松山さん部屋の窓が空いてたのでそこから入りました」
「りろに、エロ本探しに行こうって言った理由も分からんし、空飛べた事にも驚きなんだが」
「だって、私天使ですから」
……は? 何言ってんだこいつ、頭湧いてんのか?
「天使? そっか、精神が病んでるんだね。こんど良い病院紹介するよ」
「なんで、そうなるんですか! この翼といい、頭の上の輪っかといい、どう見ても天使でしょうが! というか、ポイタメの説明の時の地獄に落ちるとかで大体分かるでしょうが!」
そう言って、エルイは僕に詰め寄る。
「なんで、僕キレられてるの!?」
ずっと、背中に翼みたいな何かが生えてる不審者だと思ってし、地獄に落ちるって言われてた時はやっぱ上手い話には裏があるんだなと勝手に納得してたから仕方ないな
「それはそうと、僕の部屋を漁るだけなら二人共早く僕の部屋から出ていけ!」
僕はエルイとりろの服を掴み、廊下まで引きずる。何故、りろは不満そうにするんだ。
「いいか、二人共! 僕に許可なくこの部屋に今後一切入るなよ!」
「私は悲しいです。お兄ちゃんにそんな事を言われるなんて……。私はただお兄ちゃんが妹派なのか姉派なのか知りたかっただけなのです」
そう言いながらりろは服の中から僕の秘蔵コレクション妹編の3冊を取り出した。
「りろ! 勝手に持ち出すな、あとそれはまだお前には早すぎる!」
りろが握りしめている3冊を奪い取った。
「やっぱり、お兄ちゃんは姉より妹派ですよね。嬉しいのです」
そう言って、りろは嬉しそうに自分の部屋に戻って行った。僕はただ巨乳より少し、貧乳が好きなだけだし、姉物も一応ある事は黙っておこう。
僕はチラッとエルイの方を見ると、僕の秘蔵コレクションロリ巨乳編を読んでいた。
「松山さん、こんな人が現実にいると思います?」
「天使のお前にだけは言われたくない!」
エルイの持ってる本を奪い取り自分の部屋へと駆け込んだ。
全く、今度は絶対に見つからないところに置いておかなければ。
その後も、僕が入浴中に二人に部屋を漁られたのは、また別のお話……。
***********************
「お兄ちゃん、おやすみなさい。私は明日、テストあけで学校休みなので起こさなくても大丈夫なのです」
「分かった。そろそろ一人で夜中にトイレくらい行けるようにしろよ」
「分かっているのです! あ、エルイさんもおやすみなのです。夜はまだまだ長いので二人でごゆっくり」
「ちょっと待てりろ! お前は盛大に勘違いしているぞ、こいつとは少し二人っきりで話があるだけで別にいやらしい事をしようとしているわけじゃ……」
僕の言葉を聞かず、ゆっくりと扉を閉めた。
「まあいいか、それで話ってのはな」
僕はエルイに、これからの計画を話す為に部屋へ呼んだ。
「僕のポイントとラブコメの為、明日から学校に転校生として来て欲しいんだ」
僕の言葉に対し、エルイは首を傾げる。
「どういうことですか?」
「ポイントを貯める時とかに、一人でやっててもなんか、寂しいじゃん。それに二人だったら効率も上がるし」
エルイは手をぽんと叩き、納得の表情を見せる。
「なるほど。それで、ラブコメの為っていうのはなんですか?」
ポイントが無くても、先に少しでも僕の理想のラブコメに近づけたい、ただそれだけだ。
「謎の天使とか、いきなり家に住みつく奴って、大体のアニメだと次の日から学校に転校生としてくるんだよ(個人の意見です)。だから、それに少しでも近づけたいんだ!」
「なるほど、分かりました。そのくらいならおやすい御用です。学校の方は私が色々と手配しておきますね」
「ありがとう。あと、もう1つあるんだ」
机の上に先程置いた紙をエルイに渡した。
「これは、ポイントの計算ですか?」
「そう。さっき計算してみたんだ、どれくらい何をやればプラスになるのか。それが、その紙にまとめられてるんだけど現実的かな?」
「まだ、あまり松山さんの事を知りませんが……これくらいなら出来ると思いますよ」
そう言って、エルイは無造作に床に紙を置いた。
「明日は早いし、そろそろ眠くなってきたので私は寝ますね。明日起こしに行くのでちゃんと起きて下さいよ」
僕の部屋にエルイを寝かせたら、何されるか分からないので、エルイには両親の部屋を使わせることにした。
「分かってるって、おやすみ。夜中に僕の部屋に忍び込むなよ」
エルイは僕の言葉を聞いた後、部屋を出た。
明日は朝早いので僕はすぐ眠りへとついた。
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僕の朝は早い。午前6時に起床し、制服に着替え3人分の朝ご飯を作る。出来上がると僕は急いでご飯を食べ、寝ているエルイを起こした後、学校へと向かう。勿論1番乗りだ。教室に着くと、まず雑巾で皆の机を綺麗に掃除する。ひとつの机に対し100ポイント、40個机があるので4000ポイントが貰える。その次に掃き掃除だ、教室だけでなく廊下も隅々まで掃除する。これをすることによって得られるポイントは教室が1000、廊下が1000合計2000である。最後に、教室の床を乾拭き(1000)して終了だ。
学校なら、良い行いをする事なんて造作もない。それに教室を綺麗にすると自分の心も洗われた気がするしな。これを毎日続ければ、計算通りマイナスポイントなんて、すぐプラスになる。よし、明日も頑張るぞ!
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「お兄ちゃん、起きてくださいです。もう8時ですよ。学校に行かなくていいのですか?」
「ふぇ? 僕のポイントは?」
「何を寝ぼけてるのですか? しっかりしてくださいなのです」
りろは、小さい手で僕の頬を軽く叩いてきた。
「そっか夢か……って今何時って言った!」
「8時です! 因みにエルイさんは、朝ご飯を作って私を起こしてくれた後、お兄ちゃんの事を起こそうとしてたんですが10分以上も格闘した後諦めて、先に学校に向かいましたです」
僕は急いで制服に着替え、朝食を食べようとするが、よりにもよってご飯味噌汁、魚、納豆、昨日の残り物と完璧な朝食であった。
「エルイの奴……せめてパン1枚とかなら」
「お兄ちゃん、分かってると思いますが。1粒でも残したら怒りますからね!」
そう言いながら、りろは僕の前の席へと座った。
「ああ、分かってるよ。いただきます」
とは言ったものの、こんな量の朝食を食べていたら絶対に遅刻してしまう。さて、どうしたものか。ひとまず、悩んでいてもしょうがないと思い、僕はご飯を口の中に頬張り、水で飲み込む。……無理だ、食べ切れる気がしない。
「なあ、りろ残していい……」
「お兄ちゃん、知っていますか?」
僕の言葉を遮り、りろが話し始める。
「この世の中には食べたくても食べれずに亡くなってしまう人が大勢いるのですよ。私たちはもっと食事が出来ることに感謝しなきゃダメなのです。それでも、お兄ちゃんはそれを残して捨てるのですか? 私は悲しくて涙がでるです」
りろの目からは数滴の涙がポロポロと流れ始める。
「ちっ……違うんだりろ。残してえっとえっと、そう! 帰ってきた後食べるんだ。お兄ちゃんはもうおなかいっぱいだからさ、これなら無駄にならないだろ?」
「ちゃんと食べますか?」
「うん」
「ならいいです! お兄ちゃんを信じます!」
りろの顔からは涙が消え、いつもの笑顔へと戻った。
「りろ、1つ頼みがあるんだけど。お兄ちゃん時間がやばいからご飯ラップに包んで冷蔵庫にしまってもらってもいいか?」
「もちろんなのです。その代わりにご褒美として、帰りにプリンを買ってきて欲しいのです!」
プリンか……欲しいゲームが買えなくなるが、背に腹はかえられないな。
「おう、分かった。行ってくる!」
僕はそう言い残し、学校へと駆け出した。
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全力ダッシュで学校へと向かったが間に合わず、既にホームルームの時間となっていた。
教室からはいつも以上にざわめきの声が聞こえてくる。 多分、エルイが転校生として紹介されているのだろう。
僕は目立たないように、後ろの扉をそっと開け、しゃがみながら自分の席へと向かっている、ちょうどその時、エルイが自己紹介を始めた。
「転校生のエルイです。色々あって松山さんの家で暮らしています。この1年よろしくお願いします!」
何言っちゃってんだこいつ! そんな事言ったら、このクラスの男子が全員敵に回るだろ!
そんな事を思っていると、案の定川崎以外の全男子が僕の事を鬼のような形相で睨んでくる。てか、僕が教室に入ってきた事、みんな気づいてたのか。
「なにか質問とかあるなら答えますよ!」
エルイがそう言うと、男子達は一斉に前を向き「ハイ!ハイ!ハイ!」と、手を挙げて始める。
「じゃあそこの眼鏡かけてる人」
「はい! あの変態クズ室長……ゴホン言い間違えました。あの松山とはどんな関係なんですか?」
なんで、罵倒された!?
「うーん、結ばれた関係ですかね」
いったいなんの話しをしているんだ、結ばれた? いつ? どこで? まさかとは思うが、ポイタメの話か?
ポイタメの話なのか!? 。
なにも知らない男子達からは、ものすごい殺気が僕に対して発せられている。やばい、今日死ぬかも。
「次はえっと、そこの少し太ってる人」
「はい! あの生きている価値がないゴミ……ゴホン間違えました。松山の事はどう思ってるんですか!」
あれ? さっきより罵倒がひどくなってない!?
「運命の相手です」
そうだけど……そうだけど! 確かに運命的に倒れてるところを救ったけど……そもそも聞かれてる事に対しての答えが違うだろ! こいつわざとやってんのか?
ほかの男子達は、僕に向かって消しゴムやゴミを投げつけた後、僕の方に寄ってくる。
「なあ、松山。俺はお前のことを、勇者だと思っていたが、違ったようだな。お前はただの変態クソ野郎で、俺らの敵だな」
そう言って、全員思いっきり殴りかかってきた。
「ぶっ殺す」「リア充は排除だ」「削除削除削除」「変態の癖に生意気なんだよ!」
散々殴りまくった後、男子達は各々の席へと帰っていった。エルイを学校に入学させたのは失敗だったか……。
そんな事を思いつつ、僕は机に伏せた。
***********************
昼休み、僕は昨日と同じように自分の机にて川崎とだべっていた。
「それで、あのエルイって奴とお前の関係どうなんだ?」
「僕がただ命の恩人ってだけ」
「それもそれで十分すごい思うけどな」
朝、あんな事があったせいで僕の周りの男子がついに川崎だけとなってしまった。
他の男子には話かけても、「殺す」や「死ね」としか返って来なくなってしまった。
「そういや、昨日の覗き成功したのか?」
「よく分かったな。僕が覗きをしたって。まあ、失敗したから覗きは出来てないけどな」
「そりゃ、1年の時あれだけやればな。今更だけど、お前のすぐ後ろに水島がいるぞ?」
そえ言われ、後ろを向くと水島がモジモジしながら立っていた。
「なんか、ようか?」
「松山くん、ちょっと時間ある? 用事があるから来て欲しいんだけど」
そう言って、水島は僕の袖を引っ張る。
「ああ、悪いな川崎ちょっと行ってくるよ」
「おう……まあ、頑張れよ」
普段は見せない、焦った表情を僕に見せる。何に対して焦っているのだろうか。
僕は席を立ち、水島の後をたどり教室を出た。
「それで、用事ってなんなんだ?」
「ここで話すと、下手したら生徒指導室いきになるかもだから、私の取っておきの場所に移動しよう」
そう言われたので、従って水島の後について行ったのはいいが……。
「なあ、確かにここなら先生からは聞かれないだろうけど……」
そこは、昨日僕が女体化して水島と出会った場所、つまり…………
「女子更衣室なら、松山くん喜ぶかなと思って」
「喜ぶよ、確かに喜ぶけど、それは女の子の全裸とかが見える時であって、誰も着替えていない女子更衣室は別に喜ばないよ」
「なるほど、ならこうすればいいんだね」
そういっていきなり、着ているものを脱ぎ始めた。これは、止めた方がいいのか……でも、女の子の体をまじかで見れるチャンスだ。
僕の頭の中では、天使と悪魔が戦いを始めていた。
天使「僕が変な事を言ったから、水島さんは脱ぎ始めたのです。責任をもって止めるべきだ!」
悪魔「見ちゃえ見ちゃえ! 水島だって、見せたくてやってるかもだぜ?」
そんな頭の中の戦いはさておき、僕は既にどうする決めている。
「水島、確かにお前の全裸は見たい。すっごく見たい。だが、それ以上にお前の恥じらいの顔が見たいんだ。だから、そんな堂々と脱がずせめて僕に脱がさせてくれないだろうか」
頭の中の天使と悪魔も、僕の斜め上の回答に「うわぁ……」という声を漏らしている。
「なるほど、松山くんはそういうのが好きなんだね。でも、私は恥じらいの表情ってのが上手く作れないんだ。小さい頃から下ネタ言い続けてきたから」
水島は幼少期にどんな生活を送ってきたんだよ。僕ですら、中一からでこれなのに。
「それはさておき、話っていうのはね」
そう言いながら、さっき脱ぎ捨てた制服の内ポケットから1枚の写真を渡された。それは水島の全裸の写真であった。
「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 嬉しいよ、確かに嬉しいよ。でも、いきなりなんで!?」
「昨日、松山くんの妹さんとこの女子更衣室で会ったんだけど、色々あって全裸が見えなかったから、私の写真をあげるって約束したんだよ。だからその写真、妹さんに渡しといてね」
あの時か! 冗談だと思っていたが、まさか本当に写真をくれるとは……。
……って、ちょっと待てよ。もしこの写真を僕が持っている事を先生に知られたら、生徒指導室行きどころか停学。下手をすれば退学の可能性まであるぞ。僕はなんて、爆弾を貰ってしまったんだ。
「おう、大事に保管す……じゃなかった、しっかりと渡しとくね」
僕はそう言い残し、女子更衣室を出ようとすると、肩を捕まれ止められた。
「待って、あともう1つ。用事があるから」
今度は何も手に持たず、そのまま話始める。
「昨日、幼稚園の外から園児たちを舐め回すような目で見てたでしょ? あの幼稚園はやめといた方がいいよ。北条さんの妹が通ってるから、なんかあったら殺されちゃうよ」
「ちょっと待て、なんで僕が園児たちを舐め回すような目で見てたの知ってるんだ?」
確かに幼稚園児を舐めますよように見てたけど、僕の周りにはエルイ以外、一人もいなかったはずだ。
「なんでって、私があの幼稚園のお手伝いをしてるからに決まってるでしょ」
「お手伝い……どういう事?」
「私はボランティア同好会に所属してるの、もちろん幼稚園に行くためにね。いつも通り、ロリっ子達と遊んでいたら一人のロリっ子が私に教えてくれたの。変な目をした人がじっとこっちを見てるってね」
まさか、僕としたことが園児たちにバレていたなんてな、だからポイントが下がったのか。
「そういうことね、分かった。あの幼稚園には今後一切近づかないようにするわ。北条になにされるか分かったもんじゃないし」
何もせずとも、蹴ってくるような奴だ。弟をいじめたとか勘違いされたら……確実にあの世に行くな、僕。
「じゃあ、もう行っていいよな」
そう言って、僕が女子更衣室を出ようとすると、外から女の子達の声が徐々にこちらに近いてくるように聞こえてくる。
「おい、どうする。もしこのまま見つかったら悲惨の4時間コースは免れないぞ!」
更に、悪い事をしたということでポイントが減るんだろうな……。
「このロッカーに入って一時的に隠れれば?」
そう言って、近くのロッカーを水島が開けた。
「確かに、そうだな。恩にきる」
僕は急いでそのロッカーの中に駆け込んだ。すると、何故か後から水島がそのロッカーの中に入ってきた。
「ちょっと待て、なんで入ってくるんだ。水島は、女の子だから別にいいでしょ。僕の場合は男だから隠れなきゃいけないけど!」
僕の言葉に対し、水島は首を少し横に振る。
「私も松山くん同様、問題児認定されています。なので、自分のクラスの体育の時や部活の着替え以外の時に使うなと言われています。もしバレたら、4時間は流石にないですが、2時間は怒られるでしょうね」
「水島、お前は何をやらかしたんだ」
そんな会話をしていると、扉がガチャと開く音が聞こえ、外から女の子達が入ってきた。
「この時間は、1年のA組とB組の体育きがえですね。普段なら、カメラで撮影するところですが、残念ながら今日は持ってないんですよね」
「お前がなんで、僕と同じ問題児認定されたか、察したわ」
ふと、思ったけど体育の着替えって事はこのロッカー使われる可能性、十分あるよな……。水島はその事考えているのか?
「なあ、水島このロッカーって開けられちゃうんじゃないのか?」
「…………」
僕の問に対し水島は無言であった。怖いんですけど、こんな状況見られ水島の裸の写真も見られたら……。
「すいません、松山くん」
「なんだ、どうした?」
こんな非常事態にいきなり謝られても……。
「ちょっと……」
そう言いながら、水島はもじもじし始める。
これって、もしかしなくてももしかするよな……。
「水島……お前まさか」
「トイレに行きたくなっちゃった」
あるあるな展開だけど、本当にやるのはマジで勘弁してくれ!
「本当は松山くんを呼んだ時からトイレに行きたかったけど、我慢すると気持ちいから我慢してたけど流石に限界がきちゃった。てへっ」
「てへっ、じゃねえ!」
普段、表情を見せない水島が顔を真っ赤にしている。これ、マジでやばいんじゃないか?
「もう限界かも、ハアハア」
「こんな状況で興奮するな! もう少し我慢しろ」
水島は限界がマジかでじたばたし始める。
「水島、ここであばれたら……」
ロッカーの扉が開き、そのまま僕と水島は倒れ込む。
「「「キャーーーー!!」」」
あ……終わった……。
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