第1話 そういう事は先に言え!

 昼休み、僕は自分の机にて親友と2人でだべっていた。


「まさか、先生がお前居るのに、気づかないなんてな。あの、キャラが濃すぎるお前がな」


「ほんと、勘弁して欲しいよ」


こいつの名前は川崎 真。僕とは幼稚園からの幼なじみだ。陸上部に所属し、僕と違ってモテる。やっぱ女は顔なのかな……。


「そういや、さっきの授業中にお前鼻血を出して倒れたけど大丈夫だったのか?」


「ああ……あれね、大丈夫だったよ。たまにあるじゃん? いきなり鼻血が出たり、ふらっとする事。それが同時に起きただけだよ」


「そうか」


何があったのかというと、僕は少し実験してみたいことがあった。それは、ポイントを使って、服の下を覗く。いわゆる透視というものが出来るのか実験したかった。あくまでも実験だ。全くもって、いやらしい気持ちなんてない。


とにかく、それで10000ポイントを使い、4時間目の授業中だけ透視ができるようにした……が、アダルトサイトとかで見慣れているとはいっても、生で本物を見てしまい、鼻血を出しながら後ろに倒れそのまま保健室に運ばれてしまったのだ。


「そいやちょっと聞いてくれよ、この間他のクラスの女の子に喋りかけたんだけど、そしたら悲鳴をあげながら走ってちゃったんだ」


「どうやって喋りかけたんだ?」


 僕はそのときの様子を思い出しながら、川崎に話す。


「えっとね、たしか『 君たちは可愛い、だけどおっぱいが半端なんだ! 小さいなら小さい、大きいなら大きいハッキリしろ! 』って感じに喋りかけたよ」


「そんなんだから、変態室長とか、室長の癖に働かない変態とか言われるんだぞ」


これでも、僕はこのクラスの室長である。何故室長なったかというと。無論、女の子と話す機会が多くなるからだ。例えば、女の子が男子に頼る時に1番最初に頼る人は誰だろうか……彼氏がいないなら基本的には室長だろう(個人の意見です)。


もちろん、室長になったからには仕事はしてるが女の子にセクハ……喋りかけながら仕事をしてる方が多く、そのせいで悪いイメージが多くなり仕事をしていない室長というイメージが強くなってしまったのだ。


「なんでそうなるかな。僕はね僕の事を変態とかいってる人に断言したい、僕は変態じゃない。ただ、生まれたままの姿が好きだったり、そういう事を女の子に言わせて少しアドレナリンが高まるだけだ!」


「それを、世間一般的に変態って言うんだよな」


川崎の口からはぁ…というため息がこぼれ落ちる。


「どうしたんだ?」


「お前を含めて、このクラスってやっぱり残念だよなと、改めて思って」


「何を今さら、このクラスが残念だって事は、新学期最初の日のクラス発表で分かってた事じゃないか」


このクラスは残念なのだ。何故残念なのかというと、そもそもこの学校にはかわいい女の子が何人か在籍している。……が、何故か全員性格がねじ曲がっているのだ。


その中でも、1年の頃からやばいといわれていた、4人の内3人がこのクラスに居るので残念といわれているのだ。


「そうだよな、お前も学年1のやばい男子でハズレ枠だもんな」


「人をくじ引きみたいにいわないでくれよ」


ちょうどその時だった、後ろから人の気配を感じたと思った次の瞬間、僕は思いっきり蹴りをいれらていた。


「痛ってえ……、何するんだよ北条!」


「ふん、松山を呼んでもちっとも返事しないから、イラついたの。なんか文句ある?」


 そう言いながら、この女の子は僕の胸倉をつかんできた。


こいつの名前は北条 えみ。残念の内の1人で美人だが、その性格は暴力的で、イラついたらすぐに人に当たろうとする、嫌われ者だ。


「いいや、むしろご褒美なくらいだよ。ドMって程じゃないけど、かわいい女の子に蹴られたりすると心が踊るね!」


「かわいい……うっ……うるさい! 死ね変態!」


北条の顔は少し赤くなり、2回目の蹴りを入れてくる。その衝撃で僕は椅子から転げ落ちた。その時、ある事を閃きポケットからスマホを取り出し、1分間の身体強化に100ポイントを使った。


「よく、この状況で呑気にスマホがいじれるな、この変態!」


北条の3度目の蹴りを僕は当たる直前に僕はその脚を掴んだ。そう、身体強化をすることによって、僕は合法的に女の子の生脚触ることに成功したのだ。


「何やってるんだ変態! 離せ、離せよ!」


「離すかよ、女の子の生脚をもう少し堪能させてくれよ!」


これ、傍から見たらやべえやつだよなと、思いながら僕は周りを見渡した。……が、誰もこちらを見ていなかった。ちなみに川崎は、何事も無かったかのように、お弁当を食べつずけている


そんな事をしていると、1分が経過し、僕は女の子の生脚と引き離される。


「ぶっ殺してやる」


北条は涙目になりながら僕にゆっくりと接近してくる。


「ちょ……ちょっと待て、話し合おう。調子に乗った僕が悪かったから。ごめんなさい、許してくしださいなんでもしますか……痛たたたたたギブギブ、それ以上はもげるからやめてぇえ!」


腕を曲げてはいけない方向に曲げられ、激痛が走った。


「まあ、今回はこの辺で勘弁してやる。二度とするなよ!」


「わかったよ。それで何の用だったんだ? 僕を呼んだんだろ?」


「ああ、それは先生にお前の事を生徒指導室に気絶させてでも連れて来いって言われたから呼んだんだ。という訳でさっさと生徒指導室に行くぞ」


「生徒指導室……だと……」


普通にしていれば絶対に行く事が無い部屋であるが、僕はよくそこに呼ばれ、鬼頭先生通称番人に何時間も説教される。ちなみに何故番人かというと、生徒指導部長兼生徒会顧問でありこの学校の番人的存在だかららしい。


「やだ、行ってたまるか! 今週に入って2日だぞ。まだ僕は何もやらかしてない!」


昼食を食べていた、川崎が一旦手を止め話に割り込んでくる。


「昨日の帰り際に、『今日はプールで女の子の水着を観察するんだ!』とかガッツポーズしながら言ってたじゃないか」


「そうか、あれかぁぁぁ!」


「お前、やっぱどうしようもな変態だな」


北条は僕に蔑みの目を向けながら、地面に尻もちをついた僕を引きずっていく。


「やめろ、やめてくれ、お願いします。やめでぐだざい、何でもしますから」


僕が懇願しても、北条は一切聞き入れない様子だ。


「んじゃまあ、お勤め頑張れよ」


そう言い残し、川崎は自分の席に戻って行く。何故か僕のパンを持って。


「おい、川崎何で僕のパンを持っていくんだ!」


「だって、その感じだとたっぷり2時間コースだろ? 今食べないとこのパンは腐っちゃうしもったいないじゃないか。だから、俺が食べてあげようってことよ」


「それはぼくのポイント(200)で貰ったものだぞ!」


僕の静止を聞かず、川崎はパンを食べ始めた。それはそれは美味しそうに……。


「僕の昼食がぁぁぁ!」


「うるさい!」


僕は北条に思いっきり頭を殴ぐられ、床に倒れた。そこで僕の意識は、プツンと途切れ、気づいた時には既に生徒指導室の前であった。


「先生連れてきました」


「気絶させてでも連れて来いって言ったものの、本当に気絶させて来るとは……まあいい。ありがとう、もうきみは教室に戻っていいぞ」


先生にそう言われ、北条は1回お辞儀をした後、小走りでその場を去る。


「さぁ、松山。今月3度目の指導だ、覚悟は出来てるんだよな!?」


 流石に心の準備なしで指導はきつ過ぎる。僕は少しの間時間を稼ごうと頼みを話す。


「鬼頭先生、ちょっとだけ待ってください少しトイレに行かせてください!」


鬼頭先生は少し悩むように首を傾げた後一言。


「いいだろう、今からたっぷり2時間コースだ。その合間に漏らされても困るしな。トイレの時間は大なら10分小なら3分。さあ、いってこい!」 


「分かりましたァァァ!」


僕は急いで、トイレの個室に駆け込んだ。この時に走って逃げればいいと思った人もいるだろう。


前に1度僕は逃げたことがある、その時はすぐさま見つかり、恐怖の2時間コースが地獄の5時間コースとなったのだ。それ以来、僕の中には逃げるという選択肢はないのである。


覚悟を決め、トイレから出ようとしたその時、僕はポイタメがあることに気づく。


すぐさま、ポケットからスマホを取り出し、指導取り消しを探した……が、なんと必要ポイントは驚きの50000ポイントだった。足元見てやがるな……。


「背に腹はかえられないか」


僕は仕方なく、50000ポイントを消費した。その時、僕は気づかなかった。何故か現在の所持ポイントが2万台になっていたことに……。


***********************


内心びくびくしながらも教室に戻ると、窓を見つめながら異彩を放つ女子生徒1人を残し誰も居なくなっていた。


「なあ、ちょっと聞いていいか?」


 僕がそう言うと、こちらに振り向きジーっと僕の顔を見始めた。


「えっと、聞こえてる?」


「うん、ただわたしに喋りかける人がいるなんて珍しいなと思っただけ」


 この女の子の名前は、水島 真帆。その名前の通り、水を思い出させる綺麗な水色の髪、少し細身の体つきに綺麗な顔つき。・・・・・・が、全く顔の表情を変えず淡々喋るせいで、気味悪がられ友達がほとんど居なく、残念の1人である。


「それで、みんなは何処に行ったか知ってるか?」


僕がそう聞くと、水島は小さく首を縦に振る。


「知ってる……、次の時間体育だから、みんな体育館に向かったの」


「そうだった、こうしちゃおれん……って、水島は体育館に行かなくていいのか?」


水島は持っていた手提げカバンを上にかかげる。


「まさか、今日体育があるとは思わなくて……。水着なら持ってきたんだけど」


カバンの中々から出てきたのは、競泳用の水着ではなく、露出度が高いビキニだった。


「まだ、春だし。なんでビキニなんだよ」


「もし、変態体育教師に『グヘヘ、今から俺が2人っきりで個人レッスンをしてやる』って、言われた時の為に常備してるの」


こいつが、残念入りしているのにはもう1つ理由がある。それがこの、恥じらいもなく淡々喋るのに加え、下ネタを撒き散らすせいである。


どこのどいつが調べたのかはわからんが、僕と水島が学校に来て1日で喋る下ネタの量が、なんと水島の方多い事が判明しているほどだ。


「まあ、確かにそんな状況になったら必要だしな。それはさておき、体育館に行かないと先生に怒こられるんじゃないのか?」


「体育館でイかないと? まさか松山くんにそんな趣味があったなんて……」


「何処に反応してるんだ!」


やっぱダメだこいつ。やはり僕が引くくらいの変態であることは間違いないようだ。


「この話は置いといて、単刀直入に聞きますが女の子の一番好きな部位は何処ですか?」


「水島はいきなりなんの話しをしてるんだ?」


水島は少し、少し嬉しそうに早口で喋り始める。


「1度、松山さんとは話して見たかったんですよ。わたしの同志という事で有名ですから」


僕的にはこいつと同類にされたくないんだが……。


「さあ、どこが好きなんですか!」


「うーん、しいて言うならおっぱいかな」


「そうですよね。ちなみに、大きいのと小さいのどっちが好きなんですか?」


「うーん、中途半端な大きさが嫌いなんだよ。例えば僕のことを毎日のように蹴ってくるような北条みたいな。大きいか小さいかなら、しいて言うなら小さい方が好きかな。舐めやすそうだし!」


「おお! 中途半端が嫌いってのはいただけませんが、小さい方が好きなのですか。やはりわたしの見立ては間違っていなかった。あなたをこれからわたしの同志と認めてあげましょう」


「それは喜んでいいのか?」


そうこうしている間にも時間は過ぎ去っていく訳で。


「やばい、そろそろ行かないと怒られる」


そう言いながら、体操服を持って教室を出た。


「んじゃあ、水島もちゃんと体育館に来いよ。先生に怒られるぞ」


「大丈夫。個人レッスンされる覚悟は出来てるから」


水島はそういって、僕に向かってGoodポーズをとる。それはそれで、大丈夫じゃない気がするのは気のせいなのだろうか。


***********************


キーンコーンカーンコーン


……と、学校じゅうにチャイムの音が鳴り響き今日の学校は終わった。


帰る準備をしていると、既に準備を終えた川崎がこちらにやってきた。


「おい、松山。今日から部活ないから一緒に帰ろうぜ」


「ごめん、ちょっと今日予定があるから先に帰ってくれ」


 そう、今日僕には予定がある。ポイタメを使って何処までのことが出来るのかを実験したいのだ。もちろんそこには自分の欲望などあるはずもないがな。


「そうか、どうせろくでもない予定だと思うが、程々にしとけよ。んじゃぁ、また明日」


そう言い残し、川崎は教室を去っていった。


「じゃあ、僕も始めますか」


1人そうつぶやき、女子更衣室の方に歩いていった。


女子更衣室、部活の着替えばとしてよく使われ、男子としては1度は覗いてみたいと思ったことがあるだろう。僕は4月の1ヶ月間で12回ほど、覗こうと奮闘してみたが、中に入った瞬間に叫ばれ、鬼頭先生にそのまま指導室に連れてかれていった。


1回目は、何も工夫是ずに堂々と覗こうとした僕が馬鹿だったと思う。だから、2度目以降色々な工夫をした。例えば女装やカメラ、誰か来る前に先に入ってたりしたが、ことごとく失敗し、鬼頭先生に連行されていった。


そんな事もあり、女子更衣室はさらに警備を固め、生徒会直々に女子更衣室の周りを誰か1人は見張っている状況になってしまった。


そのため、今月に入ってから僕は女子更衣室に覗きに行くのをやめていた。……が、今日は違う! ポイタメを使って堂々と女子更衣室に入ることができる。


早速僕は女体化30分(3000)というものを使った。


すると、みるみるうちに僕の体は男にあるべきものが無くなり、無いものが出てきた。


「なるほど、僕が女になったら中途半端な胸の大きさになるのか……」


僕は自分の体を確かめた後、女子更衣室へと足を運んだ。もちろん、そのに居た、生徒会の人には何も声をかけられなかった。


中に入ると、男の子の夢のパラダイスが広がっていた。


「やっぱ、いいよな。生まれたままの姿って!」


誰にも聞こえないようにそう呟いた……つもりだった。後ろからいきなり誰かが僕の肩を触った。


「あなた、もしかして松山くん?」


その声の主には覚えがあり、後ろを向くと案の定、その声の持ち主である水島がいた。


まさか、こいつにバレるとは予想もしていなかった。何とか誤魔化さなければ。


「なっ……何を言ってるんですか? 私は1年下の後輩ですよ」


「わたしはこの学校の全ての女子の年組出席番号所属している部活趣味、全てを覚えています。なのに、何故あなたの情報がないんでしょう」


「それは、水島さんが覚えないだけなんじゃ」


まさか、僕と同じようにこの学校の全ての女の子を覚えて、なおかつ全ての趣味まで覚えているなんて……流石すぎる……。


「その可能性は、ゼロに近いです。転校生が来たらわたしが知らないはずもありませんしね」


水島は淡々とじわじわと追い詰めてくる。これが僕と水島の実力の差というやつなのか……。


「それはさておき、もし男子でこんな馬鹿な真似をする人が誰か考えてみると、すぐに1人浮かびました。わたしと同士といえる存在、それは松山くんあなたですね」


これが……残念の1人の力だというのか。……が、僕はここで諦める訳にはいかない。頭をフル回転させ、1つの言い訳にだ取り着いた。


「松山はわたしの兄だ! わたしは松山 雅子だ!」


あれれ、自分でも何言ってるか分からないぞ? これじゃあ完全にバカの子じゃん。


そう思ったが、水島は驚きの表情をあらわにしている。


「なるほど、確かに松山くんの妹なら、この学校に忍び込んで女子更衣室に入る可能性は十分にある」


水島には僕の家族関係がどう見られているのか少し心配になってきたぞ。


「まあいいわ、でも1つだけ忠告しておくわ。この学校には鬼頭先生といって、わたし以上に生徒の事をよく知っている先生がいるの。その人に見つかったら何されるか分からないから、すぐここから逃げた方がいい」


そういって、水島は僕を連れて校門まで走り始めた。


「ちょっと待って、水島さん。まだ、わたし裸を1つも見てないんだけど」


「あなたの、お兄さんを介して、わたしの裸の写真を渡すので安心してください」


それは、それで欲しいな。……ってこんな事を考えてる場合じゃない。確かに番人に見つかったら何されるか分かったもんじゃない。


以前、誰かが友達に自慢しようと妹を連れてきたことがあったらしい。その時、鬼頭先生に見つかり3時間コースの指導+プールの掃除1週間させられたらしい。


もし、僕が見つかったら容姿が似てる事から、妹と断定されるだろう。そして、普通には入れないこの学校にどうやって入ったか、それを考えたら僕が僕(妹)を入れたと思うのが妥当だろう。そしたらたっぷり3時間コース……絶対に嫌だ!


僕は、持てる力を全て使い全力で走った。廊下で走ったため、色んな人にぶつかったが、今はそれどころじゃない。走ることだけに集中するんだ!


懸命に走りなんとか無事、学校から出ることに成功した。


「ふう、何とかなったな……ってあれ?

女体化が解けてるってことは、既に30分もう経過したって事か。急いで学校から出るよりも、隠れて時間が経つのを待った方が良かったんじゃないか? まあいいか、さっさと帰ろっと」


***********************


自宅の玄関に到着しドアを開けた。


「ただいまぁ」


とは言ったものの、父と母は単身赴任でアメリカに行っており、姉は何故か北海道の札幌ラーメンが食べたいと言い残し1年以上前から姿を消しており、妹はまだ帰ってない時間だ。つまり家には誰もいないはずなのに……。


「おかえりなさい、松山さん。お疲れ様でした」


何故かそこには、朝と何ら変わらないエルイの姿があった。すかさず僕はスマホを取り出し、電話をした。


「もしもし、警察ですか。不法侵入者がいます」


そう言うと、エルイの拳が僕の腹を直撃した。


「グハッ!」


その反動で、スマホは空中に投げ出されエルイがキャッチし、「すみません、勘違いでした」と言って電話を切ってしまった。


「ダメですよ。いきなり人を不法侵入者扱いして」


「だったら、この状況どう説明するんだよ! 」


エルイはポケットから何やら鍵らしきものを取り出した。


「松山さんの家に行ったら、誰もいなかったので鍵業者を呼んで鍵を作って貰い、開けました」


「それ、普通に犯罪だし不法侵入だから」

 

「…………。」


「何言ってるか分からないみたいな顔するな!」


こいつを相手するのは疲れるな、僕は一息つくためソファに座った。


「はぁ……で、なんで僕の家にいるんだ?」


「それはですね、ポイタメの事で伝え忘れてたことが2つほどありまして。ちょっとアプリを開いてくれますか?」


僕は指示通りスマホでアプリを起動する。ホーム画面を見ると、なんと保有ポイント-10000と赤文字で表示されているのだ。


「どういうことだエルイ? バグかなんかか?」


「ひとつずつ説明します。まず、このアプリが良い行いをするとポイントが溜まるというのは覚えていますか?」


「勿論だ」


さすがに、朝起きたことを忘れるほど馬鹿じゃない。……本当だぞ。


「何故このアプリが良い行いをすると、ポイントが溜まっていくのか……。そもそもこのポイタメは天国行きなのか、地獄行きなのかを判断するために作られたアプリなんです」


「それで?」




「つまりですよ、良い行いを沢山するとポイントが貰え、天国に近ずきます。逆に悪い行いや人の嫌がる事をするとポイントが減っていきます。これが1つ目の言っていなかったことです」


朝とは違い、エルイは真剣な表情で僕の方をじっと見てくる。


「まあ、ポイントが減った理由は分かったが、それでなんか起きるのか?」


「このポイントがマイナスになっいる状態が1週間継続すると松山さんは強制的に地獄に叩き落とされるんですよ」


「へーそうなんだ」


「はいそうです」


「「あはははは」」


「…………。そういう事は先に言ってくれよ! どうすればいいのさ、-10000ポイントなんて!」


「お手伝いとか、ボランティアとか良い行いをして、ポイント稼ぐしか方法はありません」


とはいえ、どうして僕はポイントがここまで減ってしまったのか……悪い事なんて何もして無かっはずだ。


「なあ、エルイ。ポイント変動って分かる?」


「あっはい、ちょっと貸してください」


言われた通り、僕はスマホをエルイに渡した。するとエルイはスマホを謎の光で包み始めた。


「これで、更新出来ました。ホーム画面の選択肢で新しく、ポイント変動が追加されたと思うので見てください」


スマホを確認すると、しっかりとポイント変動という文字が刻まれていた。そのボタンを押すと、今までのマイナスとプラスの一覧が表示されている。


「ど……どういうことだ!」


そこには、下着の観察ー1000と大量に書いてあった。


「どういうことだよ、下着の観察って僕はただ覗きをしただけだぞ!」


「それが、悪いことだとは考えないんですね」


「下着を見ることは悪い事なのか……全裸ならまだしも」


まさか、下着を見ることが悪いことだなんて知らなかった。


「でも、この調子だとプラスになることなんて無理そうですね。どうするんですか?」


「んなも決まってるだろ。この1週間、エロから距離を置いて、いい事をしまくる。そして、ポイントを貯めて俺の夢を叶えてもらうんだ!」


エルイが「はぁ……」とため息をつく。


「あなたに、夢なんてあるんですか?」


「僕の夢は学園ラブコメ生活を送ることだ!」


エルイは僕の言葉に対して驚いたのかボケッとしているようだ。まあ、こんな推考な夢を聞いて驚かないやつはいないだろう。


「学園……ラブコメ生活ってなんですか?」


「学園ラブコメ生活、それは男子が1度でも憧れる夢の生活だ。ツンデレ系幼なじみや巨乳先輩とか可愛い後輩とか、そういうのとラブコメをする生活だ! ましてや、よく分からない不審者や暴力的な残念や変態少女との生活じゃない!」


「よく分かりませんが、早く良い事をしに行った方がいいんじゃないですか?

今陰口を言ったので、さらにポイント下がりましたよ 」


スマホを確認してみると-13000に増えていた。


「ただの事実なのに! ここで、悔いても意味が無いな。よし、さっさと良い行いをしに行くぞ!」


そう言って、僕はエルイを連れて家を飛び出した。


所持ポイント -13000

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