5

 アキが空の上を指さす。その指の先には、何か黒い点のようなものが浮かんでいた。


 な、なんだ?


 ヘルメットのスコープを最大望遠に。

 それは、葉巻型の物体だった。ぼくは慄然とする。


 まさか、地球外生命の宇宙船エイリアンクラフト


 だが。


 目を凝らしてみると、その船体には、明らかに1701というアラビア数字が書かれていた……


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 結局、それは地球の無人船だった。


 ぼくらが出発してから地球でブレイクスルーが起こり、FTL (超光速Faster Than Light)トラベルが可能になった。今や人類は銀河のどこにでも一瞬で飛んでいけるのだ。プロキシマ・ケンタウリ星域管轄のパトロール船 1701 号からもたらされたその情報は、ぼくを失意のどん底に突き落とした。


 なんてことだろう。ぼくらがやったことは、何の意味もなかったのだ。

 今さら恒星間を百年もかけてマグネティック・セイルで飛ぶ必要なんか、どこにもない。


 ぼくはがっくりと膝をついた。今になって、1.5倍の重力が効いてきたようだ。

 自然に笑いが込み上げてきた。笑うしかないだろう。こんな状況では。


「船長、船長の仕事は決して意味がなかったわけではないですよ」


 アキがぼくの肩に手を置きながら言う。リアルボディになったせいか、ずいぶん人間臭いことを言うようになった。そう言えば、さっき倒れた時も苦しそうな顔をしていた。彼女にも感情が戻って来つつあるのかもしれない。だが、それは今のぼくの癇に障った。ぼくは彼女の手を振り払う。


「見え透いた慰めはやめてくれ! FTL が実現したら、どう考えたって何の意味もないよ!」


 しかし、ぼくが怒鳴りつけても、彼女は声色を全く変えなかった。


「慰めではありません。客観的事実です」


「どういうことだよ!」


「船長、私と一緒に一旦ブリッジに戻りませんか? 1701号が超空間通信を中継してくれるそうです」


「……え?」


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