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エクスプローラー2号はこの星系で何度かスイングバイを繰り返し、その過程で炭素質の小惑星を一つ捕まえていた。それを材料に、ナノロボットがカーボンナノチューブによる数万キロメートルにわたるケーブルを作成していた。b星の静止衛星軌道上にいる船から惑星表面までケーブルを垂らし、それをつたってキャビンを移動させる。簡易軌道エレベーターというか、軌道ケーブルカーとでも言うべきものだ。ぼくらはそれを使って、b星の地表に降り立った。
b星は地球の1.5倍の質量。海はない。大気の主成分は窒素とアルゴン。気温と気圧はいずれも地球と変わらないか若干高い程度。酸素がないから生命維持装置は必要だが、密閉されたヘルメットさえあれば、宇宙服もいらないくらいだった。
見渡す限り、茶色の岩石質の平原が広がっていた。空は青く、雲一つない。
「なんにもないね」
思わず陳腐な感想を漏らしてしまった。
「そうですね」
そう応えたかと思ったら、隣にいたアキが、いきなり前のめりにバタンと倒れる。
「お、おい! どうした、アキ、大丈夫か?」
「すみません……」
ヘルメットの中のアキの顔は、苦しそうだった。
「ずっとゼロGの環境だったもので……いきなりプラス1.5Gがかかったせいで、体が悲鳴を上げてしまいました……」
なるほど。ヴァーチャルワールドで1G環境にいたぼくは、少し体が重くなったかな、と思うくらいで特に支障はないが、そもそもずっと肉体がなかった彼女にとって、いきなりの高G環境はきついのだろう。
「それじゃ、ぼくにつかまって。ずっと寄りかかっていたらいいよ」
「はい……ありがとうございます」
ぼくは彼女の手を握って立ち上がるのを助け、さらに肩を貸すようにして彼女の体を支える。
……。
なんだろう。
こんな感じ、ずっと忘れてたな。すぐとなりに人がいる感覚。彼女の重み。
だけど、なんか悪くない。
その時だった。
「船長、あれは……」
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