第1章 吠えろテラ! 条理なき闘争に
第1話 闘いの日々
クロガネショーグンは、両手を突き上げて咆哮をあげた。
「コウテツッ! 衝撃波!」
《ゴゴゴゴ!・・・》
大地がおぞまく鳴動しはじめる。
「どうしたっ」
エクスブルーが鋭く叫んだ。
「揺れているぞオっ」
びりびりと耳鳴りを感じる。
轟音と共に、大地が裂けはじめる。
エクスイエローが周囲の仲間を見まわしながら腰をかがめると、
エクスピンクが声をあげる。
「みんな気をつけてっ」
エクスチェイサーの五人に襲い掛かろうとしていた戦闘員たちも、クロガネショーグンが起こした天変地異によって、高いところから次々と、バックリ開いた巨大な裂け目に落下してゆく。
ショーグンのパワフルな猛攻に、我らがエクスレッドも片膝をついて耐えるしかない。
見守るちびっ子たちも、まるで本物の地震に直面したかのように、背もたれに身体をぎゅうっと押しつけている。
隣の父親の肘をきつく掴んでいるちびっこもいる。
みな、固唾を呑んで戦いのゆくえを見守っている。
「エクスレッドぉ、がんばってぇ!」
ちびっ子たちの応援むなしく、エクスレッドは、戦いで激しく消耗していた。
それを見越したかのごとく、低く唸り声をあげていたクロガネショーグンは、駄目押しとばかりに大きく息を吸いこむと、
「ハアアアアッ」
腹の底から沸き上がる気合と同時に、両手をガバッと拡げた。
《どーん!》
放たれた火花にあおられて、全員が吹っ飛んだ。
ちびっ子たちが、ほとんど悲鳴のような叫び声をあげる。
一瞬の暗闇のあとに残ったのは、かすかな火薬の匂いと、霞となって漂う煙だけだ。
無人となったステージに、ちびっこたちの、
「がんばれええ!」
「レッドまけるなァ!」
「エクスチェイサーがんばってェ!」
たくさんの悲痛なかけ声が投げかけられる。
それはいつしか大合唱になってゆく。
それを待っていたかのように、BGMがテンポアップした。
フラッシュがまぶしく明滅しはじめる。
間もなく、クロガネショーグンとエクスレッドがそれぞれブレードを構えて駆け込んできた。
レッドが構えるのは、TVで見るのと同じエクスブレードだ。
待ってましたとばかりに歓声と拍手で場内が割れかえった。
渾身の力を込めた両雄の刃は、ステージ中央で火花を散らし、金属音が耳をつんざく。
ブレードがぶつかったその勢いで二人がはじけ飛ぶと、ヒーローと悪の首領は、同時に勢いよくステージ上空に舞い上がった。
見上げた客席から、たまらず野太い大人の歓声が上がる。
《ガキーン!》
上空を離れては接近し、幾度も刃が交わる。激しく激突する善と悪の
やがてショーグンは、ステージ高所の回廊に着地する。一方、地上に膝を落として舞い降りたレッドは敵を見上げ、硬く拳を握りしめる。
「グハハハッ。まだまだよ、エクスチェイサーども」
岩山のように盛り上がった胸を猛り震わせ、クロガネショーグンが眼下のヒーローたちを高らかにあざ笑う。
そこでレッドは、立ち上がりざまに右手をまっすぐに突き出した。
次の技を繰り出そうとするショーグンの動きが止まった。
ちびっ子たちが大きく目を見開いた。
レッドは、伸ばした右の手のひらを力いっぱい広げ、敵を阻むかのようなポーズを見せた。
有無を言わせぬ力強さがこもったこのポーズは、窮地に陥ったレッドがぎりぎりで見せるおきまりのポーズだった。そしてこれは、これから逆転がはじまる合図でもある。TVを毎週見ているちびっこたちから、これからはじまるであろう逆転劇への期待で拍手と歓声があがった。
会場がひとつになった。
「負けるものかあっ!」
ポーズをとったまま、レッドの力強いの叫びがあがった。そして周囲の仲間に向かって、
「僕たちの力を合わせるんだ!」
レッドにかけよってゆくブルー、イエロー、グリーン、ピンク。
四人の戦士がエクスブレードに手を伸ばして、声を合わせて唱えるのだ!
「エクスパワー、オン!」
《ギュルギュルギュルルルル!》
四人のエネルギーがレッドに集結してゆく。
「フルパワー充填!」
雄たけびと共にブレードを掲げて上空に舞い上がったエクスレッドは、はるか頭上のクロガネショーグンを目指して飛翔する。
《ガキーン!》
レッドのブレードの一撃が決まった!
「どうあああ」
クロガネショーグンがよろめいて隙をつく。たて続けに斬りつけるレッド。
《ザクぅぅぅぅッ》
「うがあああ」
《ズバアアアッ》
「ぐええええっ」
《ザギぃぃぃいッ》
「うばああっ」
クロガネショーグンは力つきて武器のブレードを取り落とした。
眼下に、裂け目のように開いた奈落にブレードが吸い込まれてゆく。
最後の一撃! エクスレッドがブレードをいっそう高く掲げる。
「とーどめだあああッ」
ブレードが振り下ろされた!
「ぐあああああ」
断末魔の叫びと共に、クロガネショーグンが真っ逆さまに奈落の底に落ちてゆく。
さっきまでショーグンが立っていたステージの最上段には、スポットライトに照らされたエクスレッドがすっくと立って、歓喜のガッツポーズを決めるのだった。
「逆転勝利だぜェ!」
劇場内は、ちびっ子と、そしていつの間にか我を忘れて闘いを見守っていた大人たちの渦のような歓声と、大波のような拍手で包まれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます